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夜噺骨董談義

収集品、自分で作ったもの、見せていただいた品々などを題材に感想談など

料理や之夜 吉田博画 その2

2025-07-22 00:01:00 | 浮世絵
吉田博の作品には山岳を描いた作品や中東を描いた作品が有名ですが、当方では今回紹介する作品が好みです。



料理や之夜 吉田博画
紙本着色版画額装 自筆サイン 誂:布タトウ+黄袋
昭和8年(1931年)作自摺版画 額サイズ:縦*横 画サイズ:横270*縦400



さてどこの風景でしょうか? なんとも雰囲気のある作品です。当方はショーウインドウの飾られた食器にまで興味がそそられます。



昭和初期の雰囲気たっぷりの作品ですね。吉田博は早くから風景画を題材とし、特に山岳と建物を好んでモチーフに選んだいますが、一方で夜の光のもつ情趣を扱った作品も多く、照明の雰囲気は吉田博独特のものかもしれません。



吉田博の作品については復刻版?や印刷作品も多々ありますが、肝心なのは作品の左マージンにある「自摺」という文字です。これがない作品はオリジナル版ではないと考えて良さそうです。

*オリジナルの作品の条件は幾つかあるようです。

1.「自摺」という印判があること
2.名前のサインは鉛筆によること(これが一番の肝要のようです。)
  印判によるもものとの区別は難しく、絵のかかるくらいにサインなら自筆のよるもののようですが・・・。
3.画中のサイン「よし田ひろし」が毛筆であること

以上の3点が肝要で後摺りには.「自摺」という印判があるものもあります。.画中のサイン「よし田ひろし」は家族が後で書いたものもあるそうです。




本作品は昭和8年(1933年)作のものと左のマージンから解ります。



また肝心なのは下のマージンにある自筆の題名とサインです。本作品は「a Little Restaurant」と題されている作品で日本名では「料理や之夜」と題さています。

*題名は印判によるもののようです。



浮世絵作品ではマージンが切り取られたものや破れているもの、裏打ちされている作品は評価はかなり低くなります。これは近代版画でも同様のようです。



さてこの作品の見どころは昭和初期の夜の暗さと雨上がりなのでしょうか、濡れた道に映る人影ですね。



提灯だけの明かり・・・。



小林清親とは違った光の表現です。



光と影がじれったいほどぼやけた表現になっていますが、これが吉田博の特徴です。



作品の状態が悪いのではないか?と思えるほどですが、実は作品の状態はすこぶるいいものです。



本作品と同じような情緒を漂わせる作品は他に昭和4年作の「神樂坂通 雨後の夜(「東京拾二題 大正15年~昭和4年」より)」(下記写真参照)という作品があります。

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この作品の解説には下記のように記されています。

「店から漏れる灯りや街灯が、雨上がりの湿気を含んだ空気のなかで淡く暖かい光を放っている。濡れた夜の神楽坂通りの路が、室内の光や軒灯、街灯を美しく反映する様は、幻想的ですらある。 東京都新宿区にある神楽坂は、江戸時代に牛込見附から小浜藩酒井家を結ぶ通りとして整備され、武家屋敷が建ち並んでいたが、寛政4年(1792)に「毘沙門天善國寺」が移転してくると、参拝客で賑わいを見せるようになった。明治時代以降は町人の街へと移り変わるなかで花街も誕生し、赤坂や浅草、向島などと並ぶ「東京六花街」のひとつとして、東京でも指折りの繁華街に数えられるようになった。 この「夜」「雨」「光」という魅力的な画題の組み合わせは、吉田博の心に強い印象として残っていたのだろう。本作の4年後に制作した『関西』シリーズ《京都之夜》においても、本作品とほぼ同じ構図で雨の夜の景色を描いている。」



「京都之夜」という作品は下記の作品です。



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本作品は「京都の夜」という作品と同じく昭和8年の作でよく似た構図となっています。「京都の夜」と本日紹介した作品は「関西」(全12点)というシリーズの作品です。



当方では吉田博の全作品の画集があるのみで、これらの作品の関連性は不明ですが、吉田博が晩年に辿り着いた版画の表現の極致にひとつなのでしょう。



海外からも高い評価を受けている吉田博の作品ですが、それは海外の山岳風景や東南アジアの建物の作品、日本の景色では海の風景を題材にした作品が対象ですが、当方には本作品のような「夜」、「雨」、「光」を題材にした作品もまた魅力的です。



額を入れ替えてみました。



展示室では恩地孝四郎の作品と並べて展示しています。



額もまた飾るひとつの装飾として楽しみのひとつです。






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