宇宙のゴミの話が出ていたが、実に物足りないものだった。だから補足します。
宇宙のごみと言うものを提示していた。「ボルト一本でも相当なもの」と言っていたのだが、実は、ボルト一本だと相当なものなのである。
NASAは、この関連の問題は40年ぐらい前から深刻であると知っていた。NASAは今のフリーダムの様な宇宙実験施設「スカイラブ」を運用していた。このスカイラブは長期間動いており、その結果、短期で運用されるのが当たり前な有人・無人の人工衛星が長期間運用されるようになった。
そこで「宇宙のゴミ」=「デブリ」が問題となった。
タカトシノ時間ですよでは、ボルト一本とか人工衛星同士の衝突と言っていたが、この時問題となっていたのは「塗装片」であった。それは、本当に「塵」のように儚いものだが、これが衝突して問題となった。実は、それ以前にも衝突はあったのだろう。しかし誰も気づかなかったのだ。何故か?痕跡が良く分からないからだ。だが実に細かい「塗装片」であっても、高速で当たると宇宙服を簡単に貫通する程の威力となっている。
今の所宇宙遊泳中にデブリに当たって怪我をしたり死亡した例は無いが、デブリはスカイラブの観測窓に当たり、数センチある窓を白く染めた。その時までデブリが当たったと言う事も分かっていなかったのである。
この問題は相当に大きな問題となり、NASAは長期化する人工衛星の寿命を短くするものだとして研究に着手したのである。
さて、宇宙のゴミが問題であると言われているが、そのゴミはあまり問題を起こしていない。何故か?実は軌道の回り方にある。衛星軌道と言うものは、順方向と逆方向がある。順方向と言うのは、地球の自転と同じ方向に回るものを言う。人工衛星の性質上、地球の情報を得る為のモノで、その結果、地球となるべく相対速度を小さくする必要性がある。その為地軸に対して回転してる地球の方向と同じ向きに飛ばすのが衛星の一般となっている。
所が、この逆方向に回るものがある。これは人工衛星ではない。だが、逆方向に回る事がある。タカトシノ時間ですよでは、中国の衛星迎撃ミサイルの話をしたが、これはアメリカ、ソビエト(今のロシア)も使った。地上発射のミサイルは、今のPACKⅢの様なものや(これの詳細は知りませんがある事は言われています)あとF15イーグルに搭載して打ち落とすASATなどがあった。他にも衛星が衛星を破壊するキラー衛星があった。
他にもロケット打ち上げ時に爆発させて分離する事などをやっていたり、衛星同士の衝突の結果、弾き飛ばされた破片のごく一部が、逆の衛星軌道、つまり順方向と逆の方向に回転して衛星として(これを微惑星、微天体と言うのだが)存在している。これが宇宙のゴミの中で一番怖いものだ。秒速7kmとか8kmと言ったのは、このゴミである。順方向の宇宙のゴミは、大きいものが多いが、逆方向のそれとは大いに違う。相対速度が大した事も無い。
その為、予測が可能となっており、過去の打ち上げ結果と観測情報を基にして、破片がどの程度になっているか?と言うシミュレーションが出来てる。
番組の中でステーションを移動させたというのは、それらの情報からであって、どちらかと言うと「でかいもの」に対してである。だが衛星軌道に上がっているもののみを指しているので、途中に打ち上げるまでのロケットとかの分離後の部品の状況までは分かっていない。だからシミュレーション結果は確度が90%も無いだろうと思っている。
これがモノにも依るのだが、宇宙のゴミとして問題となっているものは、低軌道のゴミである。
番組の中では、宇宙を100kmと言っていたが、これは大体そんなものであるだろう。宇宙は、明確に線が引かれていないが、気圏、対流圏、熱圏、電離圏などの層がある。この気圏が衛星軌道を維持できる限界を決める。気圏に当たると、空気摩擦が発生して、あっと言う間に速度が落ちて落下するのである。番組の中でミサイルがバウンドするというのは、その大気圏突入速度と角度の問題である。
大気圏に入って行く時には、ある角度のある速度で無いと弾き飛ばされる。角度は特に微妙で、最大と最小の間は1度もない。
宇宙のゴミが問題なのは、重力に引かれてただ落ちていくのではなく、大気圏突入要件を外すと、再び宇宙に出て行くのである。ただ、先にあげた塗装片のような摩擦抵抗の山の様なものは、往々にして取り込まれる。
これで宇宙のゴミについて、一応の終わりとするのだが、実は、これらの情報の多くは、月刊アウトが刊行した「ガンダムセンチュリー」からの情報が多い。これは今から30年ほど前に刊行された、極めて濃い「ガンダムネタ本」である。このガンダムネタ本の中では、この他に宇宙線の問題なども取り上げている。この宇宙線の情報は、よくよく見ると、福島第一原発の放射線防護にも使えそうなネタが結構あるのだが、誰も取り上げないね。
私は、この「ガンダムセンチュリー」を見ているので、その後のって言うか、最初のガンダムからそうなのだが…、って言うか、Zガンダムは、ガンダムセンチュリーを散々読んだ後で見たので、違和感が凄まじかった。
このガンダムセンチュリーでも会ったのだが、今回の「宇宙のゴミ」の様に、巨大な爆発があると、相当に高速なデブリが飛散する事は分かっている。だからガンダムで言うノーマルスーツ如きでは、破片から身を守れる筈も無いと言う事が分かる。だが色々なガンダムのストーリーでは一切この破片に対する描写が無いのである。
かなり設定がしっかりしている筈のガンダムOOでも全く書かれていない。それにもっと言うと宇宙服どころか、モビルスーツに乗っていても破片の問題は無視できない。
ガンダムSEEDの関連では「アークエンジェル」がCMC(中央戦闘制御室)が取り上げれているが、このCMCで有名なのがフォークランド紛争に出撃して沈没した当時の最新鋭イージス艦シェフィールドである。この時は、今でも忘れないが、スターウォーズのスターデストロイヤーの様に、顔に何か被っていた兵士が暗い部屋でモニターを眺めて何かしていた。
このCMCが艦橋ではなく、その下の艦体の一番深い所にあるのは、攻撃のダメージを一番受けなくする為であった。(だが、シェフィールドを撃沈させたミサイルは、艦の舷側に命中し、CMCに大分近かった)
事ほど左様に、ダメージを考えないで宇宙の戦闘を考えるのは間違いである。ガンダムの話の中では、逆襲のシャァの時のロンドベル隊のラーカイラムにもCMCがありガンダムSEEDの以前の話では、これ位しか見た事が無い。このラーカイラムが戦闘中に乗組員が負傷するのだが、それが唯一ぐらいの外部からの破片での負傷だと思う。
しかし、本当は、もっと酷いものだと思われる。何よりも重要なのは、爆風が出ているように見えるが、その爆風よりも破片の方が遥かに速く、地上の戦闘でもそうなのだが、破片で人は死ぬのである。普通爆風ではナカナカ死なない。この破片も1km内外だろうか?銃弾の到達から考えると3km以上も弾丸並の速度を維持する事は無いだろう、だが宇宙では大気が無いので、減速されない。だから通常マシンガンでは毎秒800m程度の速度だが、これが減速されないで当たるのである。
戦車の砲弾は、今のものは毎秒1000m程度である。ガンダムで景気良く爆発しているのを見ていると、あの時の破片はどうなっているのだろう?と思うのである。私は、モビルスーツが戦闘で必要なのは姿勢制御(AMBACシステム)の為と言うより、破片をよける為ではないのか?と思うほどである。
またガンダムの全身は、ビームやミサイルの命中で焼けるより、ボディーは飛んできた破片でグチャグチャになっていると思っている。またホワイトベースのブリッジはでかいガラスで覆われているが、これは事実上使用できない。何故なら戦場に出れば一発で白濁するからだ。
となれば、どうなるかと言うとブリッジは宇宙の放射線や爆発の閃光から目を守る為に、必ず監視カメラの画像を半導体のフィルタリングをして大型ディスプレイに写すと思っている。また、その画像を撮影するCCDは戦闘中に発生する爆発などの放射線や衝撃により何度も破壊すると思っている。つまりドーンと破裂すると宇宙線やモビルスーツの画面はある一定以上の光を受けるとブラックアウトし、再び起動すると言うシステムとなっている筈である。
ガンダムを見ていると何か凄いテーマで、凄いドラマとなっているが科学的な考証が最初は言っていたからガンダムだったが「角と楯があればガンダム」と原作者が言っているぐらいでガンダムの「馴れ合い」が進行している。SFの一分野なのだから、たまには「それまでの常識」を疑ってみると良いのではないだろうか?