大きなかぶ農園だより

北海道マオイの丘にある大きなかぶ農園からのお便り・・
※写真はsatosi  

始動

2016-05-17 | 日記
稲の種が発芽し、育苗ハウスの中が緑色になった。毎朝の水やりが仕事となる。
全く発芽の兆しのない部分がある。(どうした?・・)と思いながら待っていたら出た!
3棟のハウスに並べた苗に1時間半くらいかけて水をやり、つぎには野菜の苗に水をやる。
とまと、なす、きゅうり、おくら、ぴーまん、れたす、、、、、、、、
毎日のりちゃんがせっせせっせとポットやトレイに播いてくれた種も発芽し始めた。
それを毎日順番に、せっせせっせと地植えしていく。
ジャガイモもやっと植えた。 大根の種をごんべさんで播いた。
そうこうしているうちに草が伸び放題。山羊と羊を草刈隊としてあぜ道に配置。
親だろうが山羊だろうが使えるものは何でも使ってその場を凌ぐ。
毎日やることが目いっぱいで、ギャグの一つも出なくなっている夫が珍しく 「きょうは面白いことがあった」と言った。
ユンボでビオトープを造ってるところにカラスが来て、何やら一生懸命夫に話しかけるのだという。
カアカアと言うのでなく、何とも言いようのないカラス語でずっと話しかけるのだそうだ。
土手に小さな穴が開いていて、キツネが暮らしている。りすが木と木の間を駆け抜けていく。
土の中で冬眠していたカエルがトラクターで掘り起こされ、まだ寝ぼけたままの状態でボーっとしている。
 時々夫が仏心を出し手のひらにのせて救出したりしているが、トラクターの犠牲になったカエルも多数だ。
それをカラスもキツネも狙っている。 
人間は人間以外の無数の存在と同時に生きているのだとつくづく思う。
自分ちの田畑の中の人間の数はたったの3こだ。それ以外の生き物が足の踏み場もないほどそこに居る。

幕が開く

2016-05-02 | 日記
稲の種蒔が始まった。
籾を選別し、田圃の土で泥消毒し、洗って乾かし、ほんの少し発芽させる。
それを機械で苗ポットに、今年は3000枚播く。
籾の先端から出た小さな白い芽が赤ん坊のように無垢な表情で自分に身を委ねている。
今までは、作業を速やかに進めることに夢中で気付かなかったが、「いのち」だ。
この国に生まれた自分の身体がこの一粒一粒に支えらて今日を迎えた。
実感として米のいのちを感じて、米は自分で、自分は米なのだという一体感を味わう。
機械がへそを曲げた時イライラする夫を余裕で見ていられる。成長したな、自分。
その夫も、だんだん種まき機の扱い方に余裕が出てきた。成長したな、夫。

今年は、この敷地の中に山崎さんの存在が無い。とうとう任されたのだ。
山崎さんが住んでいた家を私たちが使わせてもらうことになり、ここ1ケ月かけて少しづつ家の中を整えた。
「使えるものは使っていいよ」と言ってもらい、食器や棚やテーブルに「どうぞよろしく」と挨拶する。
山崎さんの寝室だった部屋は締め切りにし使わないものをとりあえず入れておこう、とドアを閉めようとしたとたん、
留てある蝶番のねじ6本がポロリと落ち、ドアが外れた。そんな馬鹿な。。居合わせた4人で思わず顔見合わせた。
そうか、、、、締め切られて物置部屋になるのは嫌なんだね・・・・・・?
そうと分かればドアを片付け、山崎さんが集めて飾ってあった掛け軸や額入りの絵を並べ、小さな美術館とした。
真ん中に、山崎さんが居間で使っていた くるくる回転する座椅子を置いてみる。
いつも山崎さんがそこに居るかのような部屋になった。
食器庫を片付けていたらスチールの棚の中から立派な木彫りの大黒様と恵比寿様が出てきた。
あらまあ!!いいことありそうだ!早速正面玄関の飾り棚に座ってもらう。
大黒様の左目の下が傷になっていた。彫刻刀で傷を取り除こうかと思ったが、ふとビワの葉エキスを塗って手当した。
ほんの数カ月人が住まないだけで精気を失っていた家が、使い出したらまた息をするようになった。
 幕が開いた。
毎日が緊張の連続で身体はへとへとだ。頭が冴えて、食欲も湧かず、あるものを手間を掛けずに身体に補給する。
          これほどの充実した時間は生まれて初めてのような気がする。