薬師寺東塔の修理工事を取り上げた「新プロジェクトX」を諦観の思いを抱きながら観た。
学生時代、初めて歩いた「奈良路」を再び訪れることはないだろうなあ・・・
奈良教育大の学生寮(古かったなあ!)に臨泊しながら、文字通り、歩き通した一週間。
アンドレ・マルローの「征服者」が、激しい飛鳥時代の舞台にボクを導いたって感じですかね。
三代目んちに眠る当時のアルバムを開いて薬師寺の写真を探したら、たった二枚だけ。
当時はフィルムカメラだったし、貧乏学生のボクにとってフィルム代は決して安くなかった。
カメラも級友のムラセ君から借りたハーフサイズカメラ(今の若い人は分るかなあ)でした。
これがデジカメだったら、あとで整理が嫌になるほど撮りまくっていたと思うよ。
奈良の旅を思い返す時、いの一番に浮かんでくるのが薬師寺の「釈迦三尊像」
金堂に足を踏み入れ、最初に現れた「月光菩薩像」を観た瞬間、例えようのない心持ちに陥った。
すべての感情がその一瞬で消失してしまい、相当の時間、像の前から動くことが出来なかった。
菩薩像を仰ぎ見ていると、どんどん不思議な境地に落ちていく・・・恍惚感って言うのかなあ。
深くて柔らかい光沢、しなやかな曲線を描く立ち姿・・・、語彙も審美眼も未熟で表現できない。
写真の数が少ないのは、寺社仏閣内部や安置された仏像等の撮影が禁じられていたからだね。
東塔を写した当時の色褪せた写真を、年代物のアプリで修復してみた。
東西両塔のうち、当時存在したのは東塔だけで、焼失した西塔が再建されるのは十年後のこと。
山門、本堂、仏塔、講堂等で構成される「伽藍」を知ったのも、「奈良の旅」のおかげです。
中途半端な知識のままにアプリを駆使してみたら、結構なまでに画像がリアルに近づいた。
ボクの今の心模様を写し取るのか、どうやってみても「セピア色」っていうのが残るんだよね。
あれから50年かあ・・・、随分、変わっているだろうなあ。
再び奈良を訪れることがあるとしても、あの時の感情は思い出の中に止まったままでしょうね。
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