「今日も行くぞー」と視線を上げた先に、ジャージ姿の高校生がたむろしていた。
ジャージの胸に縫い込まれた刺繍の文字で、ボクの母校のサッカー部だと分かった。
先輩は視線を落としながら後輩たちの横を通り過ぎ、ゆっくりゆっくり走りだす。
毎年、初夏の香りを運んだニセアカシヤも、ここに見つけたばかりのねぶの木も、伐採された。
すっかり殺風景になって、一切生気が感じられなくなってしまった風景。つまらんつまらん。
さっきの連中が折り返すのを見て、少しばかりピッチを上げた。
追いつけないまでも・・・なんて思った瞬間に、彼らの姿は遠くに消えてしまっていた。
悲しいかな、現実は直視しなければいけません。
その走りは明らかに走り慣れていないだろうと分かる女子二名と行き違った。
連中のマネージャーだな。
まさか、ボクがこの二人に追いつかれるようなことはないよ。あってはならない。
程なくして、今度は、仲良く歌いながら歩いている女子高生三人組と出会った。
仲良いなあ、この娘たちは。ほほえましいねえ。野郎どもとは違うよ。
さっきの三人組の自転車だな。
貼られたステッカーの高校名は全部違う。ホントに仲良しなんだね。
同じ向きにきちんと並べられた自転車を見ているだけで、ホッコリした気持ちになる。
これも、歳のせいかなあ。
クールダウン中に、さっきの女子マネ二人の戻ってくる姿が見えた。
なあーんだ、二人とも歩いっちゃってるよ。
気力でも体力でも、一般の高校女子よりは、ボクのほうがまだまだ勝る。