世情の流れでもある「働き方改革」の号令をいくら声高にかけても、日本の組織社会では「働く意識」は変わっていません。
特に、組織の中で現場責任者となる手前のポジションにいる人たちで 謂わば、組織社会経験が10-15年くらいで、そろそろ課長(マネジャー)に昇格するかどうかの年頃の方々の意識変革はなかなか大変です。
この世代の人たちは、管理職階段に上れるかどうかの、組織人としての出世人生の分かれ道にあり、上への「顔」を良くすべく 若手後輩社員への当たりが「体育会」となるケースは、どの組織でも多かれ少なかれあるものです。
問題は、その状態が行き過ぎのケースです。
雲上の経営陣は、ことが表出してから気づく場合が多いかと!
インシデントを経験した、大手広告マーケティング会社などは、変革に取り組まれていますが、その進捗はどんな感じなのか興味あるところです。
一般論として仄聞するかぎり、なかなか意識変革は難しい!との話し。
私は、ある意味当然の事の様に思います。
組織社会側の制度やスタイルの変革が伴わず、前線でバリバリ仕事をしている「人」の意識だけを変えろ!というのは、残業時間問題と同じ話しです。
業績は維持向上させて、定時で帰れ!
会社制度や昇格基準も変わらず、意識を変えろ! .....と言われても、納得感はありませんよね。
ましてや、「健康意識」のような、直接業績評価に結びつかない問題など、「大人の自己責任」の範疇で考えておけ!
と思っている管理職階層の人々は多いのではないかと感じます。
では、どうすれば良いのでしょうか。
私が考えるキーワードは
『感動・喜び・楽しみ』
『ワクワク「場」つくり』
『ハピネス・クリエイティブ』
『場の力演出』
『無意識の習慣化』
そして
働く人たちの「ウエル・ビーング」です。
とはいえ、如何に組織意識を変えてゆくのか!がなかなかの難題。
一つの切り口が、『人心・心理誘導』の「場」つくりへの投資!です。
具体的にお話してゆきましょう。
1. 心と環境の接点を知る
「意識改革」とは、どのような「意識」をどういう「意識」に変えようとしているかをはっきりさせておく事が大切です。
ここでは、仮につぎのように定義しておきましょう。
《改革前の一般意識》
『仕事は絶体!何よりも組織の繁栄を優先して、働く人は滅私奉公が美徳でありゴールは出世』
《改革後に目指す一般意識》
『仕事は幸福人生を創造してゆく手段!ライフ&ハーモナイザーションを優先し、働く人の感性と美意識を育む幸福社会創造と組織繁栄の実現』
私が考える「意識改革」、というより『意識変革』とは、働く人々の「幸福プロデュース」の社会価値、つまり、「働く人が幸せを感じて働く事が出来れば組織は繁栄するもの」という事を、経営層や管理職層の方々に腹落ちしてもらう活動であり、謂わば、人間の幸福にスポットを当てた『人に寄り添う人本経営』の戦略です。
この「心と環境の接点」を考察するには、まずは人間の「感覚」についての知識を整理しておく必要があります。
「感覚」とは、所謂 "五感"と言われる、視・聴・味・嗅・皮膚感覚や平衡感覚、運動感覚、そして空腹感などの内臓感覚の事です。
それぞれの感覚システムは「刺激」を通じ、複合的に連携して多様に変化する環境に無意識のうちに対処しています。
「刺激」となる事象の具体例としては、
視覚:物の形や色合い、人の顔や表情
聴覚:雑音や音楽、会話や自然音
味覚: 美味さ(不味さ)、熱い(冷たい)
嗅覚:良い香り、臭
触覚:硬い、柔らかい
といったものです。
スペースの広さや狭さなども視覚の刺激になります。
これらの「感覚」は人間の生理的な機能により感じるわけですが、様々な「感覚」は「知覚」を伴い、結果、心の動きに影響を及ぼす事になります。
更に、第六感のマインドフルネス!このファクターも重要です。
「知覚」は「感性」の源になります。
「感性」は創造力のを創発させる原動力になります。
創造的な「場」を構築してゆくには、クリエイティブワークを携わる全てのナレッジワーカーに対し、「感覚」への「刺激」となる様々な仕掛けを施してゆく事が大切です。
そして、次に「感性」についても理解を深めておくことが大切です。
「感性」とは、「心の働きのひとつ、あるいはその能力」とも言えます。
そして、瞬間的、包括的な判断能力は、知覚にも当てはまるものです。
感性とは「印象評価を伴う知覚」と位置づけることもできます。
感性は「想像力」や「イメージ」といった心の内的な表現にも関わりますが、外部からの刺激による「知覚」により感性の評価を意識することになります。
つまり、ここち良さ、快さ、面白さ、美しさ、などの感覚です。これらの感覚は個人差がありますが、一般法則があると言われています。
「場」の設計と構築にあたり、働く人たちの「働き心地」を良くする心理的な要素の一つである「快感」に関する「覚醒ポテンシャル理論」を知っておくと有用です。
2. 心的イメージを覚醒させる刺激特性
「覚醒ポテンシャル理論」とは、「人間は単純過ぎるものには快感を感じないが、複雑すぎるものには不快感を感じ、その中間に快感を最大にする覚醒ポテンシャルが存在する」というものです。そして、快感を高める変数として、「複雑性」「新奇性」「不明瞭性」「曖昧性」「驚愕性」「不協和性」そして「変化性」といった"刺激特性"を挙げています。
「場」創りの要素と読み替えてみると、様々なアイディアが浮かんできます。
刺激特性をバランスよく「場」の中に散りばめながら、クリエイティブ仕事をしているひとの「感性のエッジ」を研ぎ澄ます試みも面白いと思います。
そして「心的イメージ」とは、内的表現の一つの形態で、「心像」あるいは単に「イメージ」と呼ばれるものです。認知心理学では、「心的イメージ」は一般的に『現実に刺激対象がない時に生じる擬似知覚的経験』と定義されています。
アスリートがイメージトレーニングで運動能力を上げるといった話もイメージの力を示すものです。
私たちも日常の生活の場で、実際に体験していないのに体験したかの感覚を感じることは誰もが経験しています。
具体的には、思考イメージ、空想、白昼夢、残像、回帰像、直感像、幻覚、夢....といったものです。
最近話題のVRによるシュミレーターは、擬似体験とはいえ、現実的な世界を体感することもできます。
クリエイティブ仕事に携わる人たちは、現実世界及びバーチャルでの体験や経験を元に、「イメージ」を膨らませて創造的活動を行っています。
経営者は、クリエイティブワーカーたちが、自分自身の健康管理を含めた「Happy LivingWork のイメージ」持てる「場」を整えることです。
物理場の環境も大切ですが、ICTの技術を導入したバーチャル場の設計思想をしっかりと構築することが重要です。
視覚イメージサポートには、デジタルサイネージやVRやARなどが有効です。
聴覚サポートにはヒーリング音楽なども有効です。
この他にも「イメージ」世界を拡張させる「場」の仕掛けやICT技術を活用したコミュニケーション誘発手段への投資が、働く人たちの「Happy Working 」に繋がる事を認識することが大切です。
ウェルビーング経営を推進してゆくには、社員の自覚、覚悟、そして自立心が不可欠です。
自分の意思で行動する意識を持ってもらえる「場」つくりこそが、実装・定着化の肝となります。
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