オフィス・ヤハのトホホな日々

エホバの証人の一プログラマが聖書研究と自転車の趣味等を徒然なるままに

第69期将棋名人戦七番勝負第三局

2011年05月12日 | 将棋
対局日 : 2011年5月6日(金)-7日(土)

場所 : 宮崎市フェニックス・シーガイア・リゾート

先手 : 森内俊之十八世名人

後手 : 羽生善治十九世名人

持ち時間 : 各9時間



1.▲7六歩 2.△3四歩 3.▲2六歩 4.△5四歩 5. ▲2五歩 6. △5二飛 7.▲4八銀 8.△5五歩 9.▲6八玉 10. △3三角 11.▲3六歩 12.△6二玉 13.▲3七銀 14. △7二玉 15. ▲4六銀 16. △8二玉 17. ▲7八玉 18.△7二銀 19.▲6八銀 20.△3二金 21. ▲5八金右 22.△4二銀 23.▲6六歩 24. △4四歩 25.▲3五歩 26.△4三銀 27. ▲3八飛 28.△3五歩 29.▲同 銀 30. △5六歩 31.▲同 歩 32.△同 飛 33.▲6七金 34.△5二飛 35.▲5六歩



4手目△5四歩で、後手ゴキゲン中飛車。対して、先手は奨励会員の星野良生三段考案「超速▲3七銀」戦法。▲6八玉のまま右銀を繰り出す。これが現時点での、対中飛車最強戦術か。第三局の副立会人が振り飛車党の戸辺誠六段なので、羽生名人はゴキ中を選んだか。(羽生氏はよくこのようなことを行なう。多分、羽生の深読みの解説者がいないと、観戦者に正しく受け止めてもらえないということか、或いは自分のオールマイティーのアピールか。森内氏はこのような羽生の行動を笑う。)

36.△4五歩 37.▲3六飛 38.△3四歩 39.▲同 銀 40. △同 銀 41.▲同 飛 42.△4二飛



羽生氏の封じ手は、本人が「思い切って突いた」という、△4五歩。初志貫徹の直線的な攻めと解説されていた。それにしても、38.△3四歩は、端歩も突かずに歩損の呼び込み。森内氏も仕方なく応じる一手。木村一基八段によると、端歩を突き合うことが、後に振り飛車側に致命的な一手となる可能性があるとの説明。結果論的には、後手玉が狭くなり終盤に響くことに。

43.▲5七金 44.△4六歩 45.▲同 歩 46.△4五歩



まさに中盤の勝負所。次に▲4五同歩だと、△同飛で十字飛車の後手良し。ここで、森内氏が考え込む。名人クラスだとこの辺で一手間違えると、終局。渡辺明竜王は、森内氏が丁寧に応接しているとの感想。やはり棋風が違うということか。

47.▲9六歩 48.△4六歩 49.▲9七角 50.△4四飛 51.▲同 飛 52.△同 角 53.▲4一飛 54.△3三金



後手の4筋の歩には応対せずに、先手は角の覗きで飛車に当てる。大駒交換の可能性大。羽生氏は4四での飛車交換を決断。が、先手4一飛で先行。△3三金の局面で、森内氏、二時間を超える大長考。控室での検討陣は、立会人の加藤一二三九段は、これで羽生氏の負けと嘆く。いくら△3三金が用意の一手とはいえ、正気の沙汰ではないと。が、ここで振り飛車のスペシャリスト戸辺六段が、様々な変化を検討すると、まだまだ後手指せるとの結論。加藤氏もすぐに自説撤回。(元名人といえどもこの歳では、さすがに新進気鋭の若手のほうが実力は上かとの囁き。)

55.▲3七桂 56.△4八飛 57. ▲5八銀 58.△5二歩



53手目▲4一飛の時点で、羽生氏は「自信がなくなった」。対して、54手目の▲3三金で、森内氏は「全く分からなくなった」。控室は、「勝利を確実にするために時間を掛けて読んでいるのだろう」。羽生ファンの声、「後手振り飛車で、飛車先着を許しといて自信がなくなったなんて、しっかりしてよ!」。森内氏いわく「分からないまま指した」3七桂が検討陣に高い評価。▲5八銀「出た! 鉄板流」。羽生氏もお返しに△5二歩。マジックの伏線になるか。

59. ▲4三歩 60. △2八飛成 61.▲4二歩成 62.△4八銀 63.▲4六金 64.△3七銀不成 65.▲5五金 66.△4八銀成  67.▲6七銀右 68.△2六角 69.▲5一と 70.△7一金 71.▲5二と 72.△6一桂  



後手の3三金には目もくれずに、▲4三歩の垂らしでスピード勝負。この時点で、先手持ち駒は歩のみで金気(かなけ)が全くなく、後手の攻めを受ける過程で得られる銀に期待。

73.▲4六飛成 74.△3七角成 75.▲4二龍 76.△2六馬 77. ▲4九歩 78.△5九成銀  79.▲同 金 80.△同 馬 81.▲4八歩 82.△6八馬 83.▲同 玉 84. △3二金 85.▲同 龍 86.△4八龍 87.▲7七玉 88.△5七金 89.▲6二銀 90.△6七金  91.▲同 玉  92.△「負けました」。

73.▲4六飛成が、周りを驚嘆させた決定打。深浦康市(こういち)元王位、「森内九段は今回は冴えまくってますね」。プロ棋士たちによれば、この一手で後手の希望を打ち砕いた。55.▲3七桂の大長考の時に、膨大な変化の分岐の一つにこの局面も出現していたはずだ。



投了図では、先手玉は裸だが詰まない。先手の9七角は最後まで動かなかったが、5三の攻めにも8八の守りにも利いていて後手を煩わせたに違いない。

    後手のゴキゲン中飛車は、「殿、御乱心を」との声もあったようです。現代将棋は、各戦型の研究が極めて細分化していてオールラウンダーはあり得なくなっていているらしいのです。そういう意味では、ゴキゲン中飛車を指せるのは久保二冠だけらしいです。

    それにしても、先手森内名人と後手谷川十七世名人との間で戦われた、第64期名人戦七番勝負第二局が、後手の超急戦ゴキゲン中飛車でしたが、後手が先手に翻弄されて大長考連発の末、完敗してしまったのが思い出されます。あの時、中飛車は森内名人の研究範囲だから手を出さないのが賢明だと痛感したのでしたが、今回もその予感が当たりました。  

    獲得タイトル数では羽生氏が圧倒しているものの、マニアの間では森内氏こそ順位戦史上最強だそうです。