オーソレ、何それ?

私、o_sole_mioが好きな歴史、旬の話題、
賞味期限の切れた話題等を
適当に書きつづります。

今読んでいる本

2008-11-15 14:33:17 | 太平洋戦争
8月から読んでいる本があります。分量も多いので中々読み進んでおりません。

その本とはHarry A. Gailey著「The War in the Pacific」という本で本文が約500ページあり、今300ページをやっと過ぎたところ、時期的にはマリアナ海戦が終わったところです。赴任期間中に読み終えるかどうか不安なため現段階でのレビューをしておきます。

サブタイトルが「From Pearl Harbor To Tokyo Bay」とありますが、日清・日露戦争のあたりも触れられていて、日米が戦争に到る経緯はこの時期から始まるとしています。Tokyo Bayは戦艦ミズーリ上での降伏文書の調印を意味しており、アメリカにとって終戦は降伏文書を調印した9月2日という認識です。

ここまでの印象ですが、太平洋戦争について淡々とかつ詳細に記述されており、米軍について結構手厳しく、緒戦については戦争の準備ができていなかった。海軍のキンメル太平洋艦隊司令長官は真珠湾によって解任されたが、陸軍のマッカーサーも同罪である、解任されなかったのは国民からの認知度の違いである。またガダルカナルの攻防においては連合軍側は海軍、陸軍、海兵隊、オーストラリア軍の寄せ集めだったため、コミュニケーションが取れていない、日本軍を過小評価して戦力を逐次投入した、などの記述がありました。

日本ではこの手の戦記は海戦物が主体(私が読んだ本がたまたまそうだった?)ですが、この本は陸戦についてかなりページ数が割かれており、この部分で米軍(連合軍)の苦闘ぶりが伝わってきます。

印象に残ったのは、そういった苦戦が教訓になったからなのか、アメリカ海軍では中央の責任者と現場の指揮官、現場の指揮官同士のコミュニケーションを気を使うようになって膠着した戦線をブレークスルーしていったことです。象徴的なのはガダルカナル島の攻防戦で南太平洋司令長官を消極的だったゴームリー中将から猛将で知られる「ブル」ハルゼー中将に交代した時、ハルゼーが最初にしたことは主な指揮官をハルゼーの旗艦に招集し、全員の話を聞いた後、陸上部隊への全面的支援を約束したことです。司令官時代は「キル・ジャップ」を繰り返し唱えていてハルゼーには複雑な感情を抱いていたのですが、これには「流石」と言わざるを得ませんでした。また、上官のニミッツ太平洋艦隊司令長官と馬が合わなかった陸軍のマッカーサーとも上手くやっており、なかなかの将器だと思います。もっとも台風に突っ込んで大きな被害を出したり、比島沖海戦では小沢中将率いる囮部隊に引っかかってレイテ湾をがら空きにするなど、猪武者ぶりを発揮した失敗もあり、評価が分かれる人物でもあります。

後半になると、米海軍は太平洋に大艦隊を編成します。前述のハルゼー率いる第3艦隊、スプルアンス率いる第5艦隊ですが、ハルゼーとスプルアンスは交代で前線に出て、どちらかが前線にいるときはもう一方はニミッツの参謀長として作戦を共に考えるという任務を務めています。こうする事により現場と中央の認識のずれを少なくしているのだと思います。

マリアナ沖海戦ではスプルアンスが指揮を執り、質量共に上回る米艦隊が空母部隊同士の決戦を制したのですが、この時「スプルアンスの航空機の使い方が消極的だったため、全滅させることができた日本機動部隊にとどめがさせなかった」という強い批判が米海軍内で出てきます。しかし、スプルアンスは第5艦隊をサイパン島攻略という目的のために出撃させたことを認識してサイパン島周辺の制海権、制空権を確保するという戦略を最優先に置きました。このことはニミッツやその上官のキング作戦部長の意図とも合っていました。つまりスプルアンスに対する批判は、戦略に沿った用兵を敵艦隊全滅という戦術をもって批判したことになりますが、一貫して戦略を重視した采配を振るったスプルアンスが一枚上手だったと思います。この手の話は戦略とは何か?、とか戦略と戦術の違いは何かということを説明するときに使えそうなので、少しくどく書いてしまいました。

これに引き換え日本海軍は二大巨頭である、永野軍令部総長と山本連合艦隊司令長官が海戦前後に入念な打ち合わせをしたという形跡はなく、真珠湾攻撃、ミッドウエイ攻略作戦も連合艦隊主導で行われました。リーダー達のコミュニケーションこそ、質はともかく量で圧倒的に劣勢であった日本海軍が本来取るべきものでなかったかと思います。

最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
英語で500ページ (ミュジニー)
2008-11-15 21:00:17
読み応えがありますね。
俺も原書で読んでみたいと思う(というか日本盤が無い)本もあるのですがなにしろ時間が...
戦略の失敗は戦術では取り返せないと言うことが
なんとなくわかるような気もします。
最近、山本五十六は駄目だったいう話をチラホラ見るようになりました..
この本の作者は戦争関係で沢山作品があるみたいですね。
返信する
今年中には (o_sole_mio)
2008-11-16 00:34:57
確かに読み応えがあります。今年中には何とか読破したいと思っています。
当時日本には戦略という概念が余りなく、東南アジアを制圧後、次はハワイだ、オーストラリアだ、サモア・フィジーだともめたそうです。
山本五十六さんは海軍大臣といった軍政面での手腕が期待されていたのですが、陸軍のテロを恐れて海上に避難させた人事がそのまま太平洋戦争まで続いたということで、適材適所の人事ではなかったようです。
Harry A. Gaileyはアメリカの半藤一利さん、といったところでしょうか。
返信する