環境法令ウオッチング

2006年7月から2007年12月までの環境法令情報・行政情報・判例情報を掲載。

京都議定書第2回締約国会議閉幕 ①新たな枠組みの可能性と二酸化炭素海底貯留技術(CCS)の是非

2006-11-20 08:05:56 | 地球温暖化
2006年11月20日 
 11月6日から17日まで、約70か国の閣僚を含む180を超える国の代表が出席し、ナイロビ(ケニア共和国)で開催された気候変動枠組条約第12回締約国会合(COP12)、京都議定書第2回締約国会議(COP/MOP2)が閉幕しました。結果として、最大の懸念であった2013年以降の枠組みについては、2008年冬の京都議定書第4回締約国会議(COP/MOP4)で協議することを明記した会議報告書が採択され、決裂は避けることができました。以下、各紙報道を引用しつつ、2回にわけて今回の会議を検証してみます。

1.新たな枠組み議論
 今回の会議の最大のテーマであった2013年以降の新たな枠組みについては、途上国にも一定の負荷を求める先進国側とそれを認めない途上国側、という対立の構図が早くからクローズアップされていました。閣僚級会合2日目に若林正俊環境相が「すべての国が能力に応じて温室効果ガスの排出削減に取り組み、主要排出国による最大限の削減努力を促すための枠組みを構築しなければならない」と演説するなど、日本はこの問題の推進に向けて積極的な議論を展開。一方、中国など途上国は今回の会議で議論を打ち切るよう主張し、議論は空転を続けましたが、議長国のケニアが途上国の主張に配慮した『話し合いの時期のみを2008年と示して具体的な削減義務に踏み込まない』とする妥協案を提案し、中国を含む途上国の同意を取り付け、会議報告書の採択に至っています。この模様を毎日新聞は、以下のように報じています。

『最大の課題だった途上国の取り組みを合意に導くことができたが、経済への悪影響を嫌う途上国に配慮し、具体的な内容の協議は来年以降に先送りした。今後、世界第2位の温室効果ガス排出大国・中国などを実効性のある取り組みに巻き込めるかが課題となる。
 作業手順は、途上国を含めた温室効果ガス削減のための取り組みをどのような内容で進めるかなどを、各国が意見書にまとめて07年8月までに提出。08年の会議で具体的な取り組みについて話し合う(毎日新聞)』

 京都議定書をめぐっては、科学的根拠がない、として世界最大の排出国の米国が2001年に離脱。排出量第2位と第5位の中国、インドを含め、開発途上国には削減義務が課せられていないため、現在、排出削減量は義務を負う日本、EUなどの世界全体の30%に過ぎない状況となっています。これでは、義務国が目標を達成しても、それだけでは地球全体の温暖化防止には至らず、実効性の面からも問題があるといえます。結論は先送りとなりましたが、2013年以降の新たな枠組みの議論の余地が残されたことは、最低限の成果であったと思います。

2.二酸化炭素海底貯留技術(CCS)の是非
 日本国内でも話題となった二酸化炭素海底貯留技術(CCS)を、削減量として認めるかどうかにつての議論も、2008年冬の京都議定書第4回締約国会議(COP/MOP4)での決定に持ち越しとなりました。この課題は読売新聞が積極的に報じています。

『開催中の京都議定書第2回締約国会議は16日、油田やガス田などから排出される二酸化炭素(CO2)を分離・回収し、地中や海底の地層に封じ込める貯留技術(CCS)を温暖化対策として認めるかどうかを、2008年の第4回締約国会議で決定することに合意した。
 来年、民間団体や国際機関で議論し、各国がこれを踏まえた意見を提出。第3回締約国会議で議論したうえで、第4回会議で決定する。
 先進国が途上国でCO2削減事業を行い、削減分に応じて国連が発行するクレジットを先進国の削減分として算入する「クリーン開発メカニズム」の一つとして注目され、先進国や産油国は賛成したが、一部の途上国から安全性などを疑問視する声が強く、決定を先送りした形になった(読売新聞)』

 世界のCO2排出量の約100年分の削減が可能との推測もある二酸化炭素海底貯留技術(CCS)については、11月3日、ロンドン条約議定書が改正され、投棄可能な廃棄物に海底下地層に貯留される二酸化炭素(CO2)を追加することが国際的に認められることとなりました。これを受け、政府は次期通常国会に、海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律(海洋汚染防止法)改正案を提出し、国内でも対応可能となるよう法整備を進めています。法整備が整っても、技術的な問題などの検証も含め、実現されるのは先のことであるとは思いますが、二酸化炭素海底貯留がCO2削減の対象とならないのでは、技術開発のインセンティブも乏しく、今後の進展に少なからず影響を及ぼすのではないでしょうか。この点、11月19日の読売新聞の社説では次のように危惧しています。

『対立は、個別のテーマでも目立った。CO2を地下約1キロの深さに封じ込める「地中貯留(CCS)」技術をめぐるものだ。各国が実施すれば、世界のCO2排出量の約100年分の削減が可能との推測もある。カナダやノルウェーではすでに事業化されている。
 紛糾したのは、貯留したCO2を削減分として認めるかどうかだった。
 EUのほか、貯留に適した油田跡地を抱える産油国は、CCSに積極的だったのに対し、非産油途上国の多くは反対に回った。温暖化防止のための有望な技術なのに、結論が先送りされてしまった。事業化のスピードが落ちそうだ(読売新聞)』

 二酸化炭素海底貯留技術(CCS)は、CO2排出量の削減にとっては、確かに夢のような話ですが、それとて『有限』であることには違いはありません。毎年の貯留量を明確に規定するなどの措置をとらない限り、廃棄物の最終処分場の逼迫と同様の問題を将来世代に残すことになります。この点、各国の利害の不一致が原因とはいえ、慎重な議論がなされることとなったことは評価したいと思います。

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『「水俣病問題に係る懇談会」提言書』が求めるもの ④新たな概念 2.5人称の視点

2006-11-19 08:13:09 | 健康被害
2006年11月19日
 これまで、行政の不作為の内容、複雑な救済制度、今なお問題を引きずる2重の基準についてみてきました。水俣病は、公式確認から今年で50年が経過していますが、まだ、解決の途上であることは否めません。一方、水俣病を基点として、排出者責任や拡大生産者責任、予防原則など、この50年の間、環境法制が大きく進化を遂げてきていることも事実です。
 しかし、水俣病のような人の健康・命を守るといった重大な問題を解決していくためには、環境法制の進化だけでは十分ではありません。法政策とともに、変えていかなければならないものが存在します。『「水俣病問題に係る懇談会」提言書』では、それを『2.5人称の視点』として議論を展開しています。この『2.5人称の視点』に言及して、本連載を終わりたいと思います。

4.新たな概念 2.5人称の視点
(1)『2.5人称の視点』とは
 『「水俣病問題に係る懇談会」提言書』では、『2.5人称の視点』という新しい概念を次のように語っています。少し長いですが、抜粋して引用します。
 『客観性や公平性という意味では、規則や基準やマニュアルは不可欠のものである。しかし、規則や慣行を杓子定規的にあてはめるだけだと、「冷たい乾いた3人称の視点」になってしまう。公害や薬害の被害者が役所に訴えても、まともに聞いてもらえず、門前払いに等しい扱いをされたとか、犯罪被害者が警察署や検察庁に事件の結末や加害者の処罰について問い合わせてもケンもほろろの対応で何の説明を受けられなかったといった事例は、枚挙にいとまがないほどある。それらは役所側が「冷たい乾いた3人称の視点」でしか事案を見ていないことの表れと言える。・・・・・・専門的職業人が「冷たい乾いた3人称の視点」で仕事をこなすと、こういうことになる。専門化社会の深刻な落とし穴と言える。
 どうすれば、この現代社会のゆがみを人間味ある社会に再生できるのか。その方法として、「2.5 人称の視点」がある。公的な立場の専門的職業人が、事件の当事者である被害者(1人称の視点)や家族(2人称の視点)になり切ってしまったのでは、感情移入が過度になり、冷静で客観的な判断ができなくなる。外科医でもわが子の手術はできないと言われるように。そこで、あくまでも冷静な「3人称の視点」を失わないようにしつつ、1人称の被害者・社会的弱者と2人称の家族に寄り添い、《これが自分の親や連れ合いや子どもだったら、どんな気持でいるだろうか、今一番求められているのは何だろうか》という視点を合わせもつようにするなら、冷たく突き放すような態度はとらないだろう。《現行の規則や慣行の中でも、何とか対応することはできないか》《どうしても無理なら、規則を変えることはできないか》といった柔軟な発想と態度が生まれてくるはずである。これを、3人称の視点と1人称・2人称の視点を合わせもつ視点として「2.5 人称の視点」と呼ぶのである。あえて言うなら、「冷たい乾いた3人称の視点」から「温もりと潤いのある2.5 人称の視点」への転換である(20ページから21ページ)』

(2)終わらせることと解決すること
 『2.5人称の視点』で大切なことは、客観性と感情のバランスをとることであると思います。法律は利害関係の調整弁として、対立軸のバランスをとりつつ立法されます(そもそも対立軸がなければ規制等の必要はありません)。そのようにして、制定された法律による規定であっても、なおその執行に際しては客観性と感情のバランスをとりつつ柔軟に思考することによって、新たな解決策を見出すことができる、というのが『「水俣病問題に係る懇談会」提言書』にかかれている『2.5人称の視点』趣旨であるといえるでしょう。仮にその結果として、新たな解決策を見出すことができなかったとしても、執行者がその過程を踏んだことは、被害者・社会的弱者にとって大きな支えとなるのではないでしょうか。水俣病をめぐる一連の訴訟でも、原告が問題としているのは、賠償の額などではなく、こうした支えがないことへの怒りのように思えてなりません。
 『2.5人称の視点』は、公害問題だけではなく、たとえば上司と部下や教師と生徒の関係でも大切なものであると思います。『規定はこうだから』では、対話を終わらせることはできても、問題を根本から解決することはできないのです。

 循環型社会・地球温暖化など、これからの環境問題は、自分の身近な部分でだけではない、それこそ地球全体で考えなければならないフェーズに入っていきます。私たちが水俣病問題を直視し、何かを学び取ることができているなら、それは新たなフェーズの問題を解決していくための大きな糧となるはずです。そして、その役割を果たしていくことこそ、水俣病をはじめとする公害問題に苛まされたかたがたへの『2.5人称の視点』となり得るのではないでしょうか。

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『「水俣病問題に係る懇談会」提言書』を読む ③現在の混乱の根源 2重基準

2006-11-18 08:09:20 | 健康被害
2006年11月18日
 平成16年10月15日の最高裁判決以後、熊本・鹿児島両県では認定審査会が開かれておらず、認定を待つ申請者の数は増えています。『「水俣病問題に係る懇談会」提言書』を読む、第3回は、なぜ、現在もなお混乱が続いているのか、その原因を検証します。

3.現在の混乱の根源 平成16年10月15日の最高裁判決と2重基準
(1)なぜ、認定審査会が開かれないか
 これまでみたように救済の枠組みが複数存在することに加えて、『認定基準』そのものの存在もまた、現在の混乱の根源となっています。認定は、熊本・鹿児島両県の認定審査会において実施されこととなっていますが、平成16年10月15日の最高裁判決以後、現在に至るまで、開催されていません。その間、申請者は4,000人以上にのぼっています。再開されない理由は、委員のなり手がないことです。では、なぜ、なり手がないのでしょうか?
 この点、10月26日の参議院環境委員会において、市田忠義議員(共産党)が『委員のなり手になる人が少ないというかないというのは、どういう理由でしょうか。簡潔に』と質問をしていますが、政府側からは『ただいま大臣から申し上げましたけれども、私ども、熊本県、鹿児島県、両県の全審査委員の方々に繰り返し事情を説明をしておりまして、まああらかたの理解はいただいてきているというふうに思っておりますけれども、それぞれの先生の中に個々の御意見やっぱりいろいろおありのようでございまして、中には委員就任についてためらわれている方がいるということでございます。(環境省総合環境政策局環境保健部長)』というように明確な回答はなされていません。
 国の水俣病認定基準は、感覚障害・運動失調・平衡機能障害・求心性視野狭(きょう)窄(さく)など水俣病に多発する症状の複数の組み合わせを条件としています。一方、平成16年10月15日の最高裁判決では、原告側の『「四肢末端優位の感覚障害があれば水俣病」である。その根拠として、「感覚異常の原因は中枢神経(大脳皮質)の損傷」』とする中枢説を認めた形となっています。つまり、司法判断では、国の認定基準よりも緩やかな基準で水俣病による被害を認めている、と読むこともでき、実質的に水俣病認定に際して、2重の基準が存在する状態になっているのです。これが委員のなり手がない理由であると推測することは難しいことではないでしょう(国の基準にしたがって判定したら、後に裁判で敗訴する可能性がある、ということを引受ますか?)。

(2)国の見解
 しかし、政府は、平成16年10月15日の最高裁判決は、認定基準の緩和自体を認めたものではないとしています。この点については、現在開かれている国会においても、議論の応酬がなされていますが、政府は、『まず、高裁の判断、そして最高裁がこれを認めたわけですけれども、この判断、最高裁判決におきましても、認定基準が間違っている、認定基準とは別のものが必要だという意味で、公健法による認定基準の見直しを要求する判決ではないというふうに我々はまず理解をしているという点でございます(10月27日衆議院環境委員会・若林環境大臣)』としています。
 また、炭谷環境事務次官も平成18年4月30日の毎日新聞のへのインタビュー記事において、『最高裁判決で行政上の認定基準が事実上、否定されながら、変更しないのはなぜか』との質問に対して、『最高裁の判決は、国の認定基準について判断を加えていない。行政責任と損害賠償を認めたのは別の判断基準によるものだ。従って現在の国の認定基準を否定したものではなく、見直しは考えていない』と回答しています。
 政府が、最高裁判決を国の認定基準について判断を加えたものではない、とする根拠は、『・・・・・・大阪高裁の判決及びそれを受けての最高裁の判決は、訴えた人たち一人一人について因果関係を審査しているわけですね。そういう因果関係があることによって初めて、国の責任というものが、あるいは県の責任というものが明らかになるわけで、そういう因果関係が明確でないものについてまで拾うというのは、本来言えばいろいろ問題がある・・・・・・』とする10月26日衆議院環境委員会での若林環境大臣の発言にみることができます。すなわち、最高裁判決は、一人一人について因果関係を審査したものであり、認定基準そのものに言及したものでない、というものです。

(3)混乱の原因
 認定基準をめぐるこの認識のズレこそが、今日なお混乱が続いている最大の原因であるといえるでしょう。この点、10月27日の衆議院環境委員会で次のような議論がなされています。
 『今大臣が言われた、裁判は当事者の全部、チェックをしていって一人一人やっているんだ、そう言われましたけれども、小池大臣の「水俣病問題に係る懇談会」提言書の中で、これは44ページ、「「認定基準」をそのまま維持するにせよ、この「認定基準」では救済しきれず、しかもなお救済を必要とする水俣病の被害者をもれなく適切に救済・補償することのできる恒久的な枠組みを早急に構築することであろう。」というふうに書いていて、そして45ページで、これは「新たな救済・補償に伴い、国は財政負担を強いられることになるが、国全体が経済成長の恩恵を受けその陰で犠牲となった人々への償いととらえるなら、「汚染者負担の原則」に基づく原因企業の負担は当然にしても、国民の税金を財源とする一般会計から応分の支出をするのも当然のことと考えるべきであろう。」そういうことはきちんと言っているわけですよ。・・・・・・それと同時に、今認定審査会というのが全く再開できない、それはなぜか。認定基準にずっとこだわってくるから、当然、今1年半ぐらい立たないわけですよ、その認定審査会なるものが。これからずっと立ちませんよ、そういったことで。だって、最高裁の判定が出ていて、それでまた覆されるかもしれない認定について一々言う人なんていませんよ。ぜひそこはある程度政治的な判断を加える必要があるんじゃないですかと私は申し上げているんですよ。・・・・・・何も、大臣がおっしゃるように、いや全く関係のない人がそれがここで焼け太りをしよう、そういうふうに言っている犠牲者の方なんていませんよ、ほとんど。そこを基準として考えるとこの問題を誤るということですよ。ぜひそこは、むしろ環境省の方が、それは財務省が反対するのはわかる、でも環境省の方がしっかりとそこは財務省に対して言うべき話、立場だと思います。』(末松代議士・民主党)
 『・・・・・・心情的には、そういう心情がないわけじゃありませんけれども、やはり国の機関として言いますと、払わなければならないものは払うけれども、どうしても払わなければならないということでないものまで払うということについては、やはり払えないものは払えないという判断を我々はしっかりしておかなきゃいけないという、私は常日ごろそのように考えて対処しているところでございます。』(若林環境大臣)

 法律は社会の利害関係の調整弁であり、上記の場合、認定基準が全ての尺度えある、ということになります。それを認めたうえで、一方はその遵守を求め、もう一方は基準自体の見直しを求めている、というのが本件の対立の構図ということができるでしょう。あえて乾いた言い方をするならば、適正な立法機関によって、適正に立法された法律を、文言通りに行政官が執行することが、不正義であるとは言えません。
 しかし、それだけでよいのでしょうか。『「水俣病問題に係る懇談会」提言書』は、この点について、新たな概念を提示しています。

※明日は、最終回、『新たな概念 2.5人称の視点』を掲載予定です。

【官報ウオッチング】 
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【行政情報ウオッチング】
環境省
平成16年度土壌汚染対策法の施行状況及び土壌汚染調査・対策事例等に関する調査結果について

国土交通省
高速自動車国道法施行令の一部改正に係るパブリックコメントの募集に寄せられたご意見について
道路法施行令の一部を改正する政令等に関するパブリックコメントの募集の結果について
トラック輸送情報(平成18年8月分)

厚生労働省
「石綿業務に従事した離職者に対する特別健康診断」の受付期間の延長について

【判例情報ウオッチング】
 鹿児島地裁は、16日、17日、大和村戸円の住民らとアカウミガメやアオウミガメを加えた原告が、大島郡内の海砂採取業者を相手に採取差し止めを求めている訴訟で、裁判官による同村内の海岸などの視察を実施しました。同訴訟は、戸円の住民らが沖の海砂採取で砂浜がほぼ消失し、漁獲量が激減したと主張。浜で産卵するウミガメも原告に加え、「自然の権利」侵害も主張しているものです。

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『「水俣病問題に係る懇談会」提言書』を読む ②混乱する被害者救済

2006-11-17 10:07:27 | 健康被害
2006年11月17日
 水俣病の被害者救済には、現在、『法制度救済』『政治解決』『行政救済』『司法救済』といった4つのパターンが存在します。どのパターンによって救済を受けているかによって、賠償額や支援の内容に差異があること、それぞれの認定基準が異なること、などの問題があります。平成16年10月15日の最高裁判決以後も、昨日の報道のような混乱が生じている原因の根底には、このような複雑な背景の存在があります。

2.混乱する被害者救済
(1)法制度救済
 水俣病の被害者に対する本格的な補償は、昭和48年の熊本第一次訴訟判決に基づいて、同年チッソと被害者および被害者団体との間に結ばれた補償協定が最初のものです。この協定は訴訟の原告となった被害者を対象にするだけでなく、訴訟に加わらなくても国が決めた『認定基準』によって『水俣病患者』と認定された被害者すべてにチッソが補償の責を負うことが明記されました。その結果、補償協定と『認定基準』が連動することになりました。補償の内容は、症状の重軽度によって、チッソによる一時金支給を、A1800万円、B1700万円、C1600万円と3段階に分け、それぞれに医療費、年金等の給付を付加しています。
 なお、認定基準の内容は、『後天性水俣病の判断条件について(昭和52年環境庁企画調整局環境保健部長通知)』により、水俣病に多発する症状、①感覚障害、②運動失調、③平衡機能障害、④求心性視野狭窄、⑤中枢性眼科障害、⑥中枢性聴力障害、⑦その他、のうちの複数の組み合わせが要求されています。

(2)政治解決
 しかし、被害者の中には上記の『認定基準』の条件を満たさないため、認定申請を棄却される人々が続出するという事態が生じました。そのような被害者たちは、補償を裁判に訴えて勝ち取ろうと各地でチッソや国・県を相手に損害賠償請求の訴訟を提起しています。その混乱の収拾を図り関係者間の和解を進めるため、平成7年当時の与党三党(自由民主党、日本社会党、新党さきがけ)により、国や関係自治体の意見も踏まえ、最終的かつ全面的な解決を目指した解決策が取りまとめられました。そして、被害者団体と原因企業がこの解決策を受け入れ、当事者間で解決のための合意が成立したのが、平成7年の『政治解決』といわれるものです。
 『政治解決』による救済対象者は、水俣病に見られる四肢末梢優位の感覚障害を有するなど一定の要件を満たす者であり、関係当事者間の合意付属文書において、水俣病の診断はあくまで蓋然性の程度により判断するものであり、公害健康被害の補償等に関する法律(公健法)の認定申請の棄却がメチル水銀の影響が全くないと判断したことを意味するものではないことなどにかんがみれば、認定申請を棄却された人々が救済を求めるに至ることには無理からぬ理由があるとされました。
 給付内容は、チッソによる一人当たり一時金260万円+団体加算金(訴訟で労苦を注ぎこんできた各被害者団体へのかなりの金額の給付)に、行政による医療費、療養手当ての給付金を加えられています。

(3)行政救済
 さらに、上記の『政治解決』のややゆるめた条件にも合わないで除外されたけれど、被害者の可能性を否定しきれないとされた人々や最高裁判決後に新たに救済を求める人々に対しては、医療費、はり・きゅう施術費及び温泉療養費を支給する「保健手帳」が発給されています。これが『行政救済』と呼ばれるものです。

(4)司法救済
 『政治解決』は訴訟の労苦と年月を省くための妥協であるため、それでは責任が曖昧になるとして、水俣病関西訴訟の原告団は、解決の調印には加わらずに、国、熊本県及びチッソの責任に焦点を絞った訴訟を続行しました。この関西訴訟の最終決着が平成16年10月15日の最高裁判決です。判決による賠償の金額は800万円から400万円。これより先にも、すでに昭和60年に地裁判決で確定していたチッソを相手にした熊本第二次訴訟があります。こちらの補償額は1,000万円から600万円。これらが『司法救済』と呼ばれるものです。

※明日は、現在の混乱の根源 平成16年10月15日の最高裁判決と2重基準、を掲載予定です。

【官報ウオッチング】
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【行政情報ウオッチング】
環境省
「第9回自然系調査研究機関連絡会議(NORNAC)」の開催について
生物多様性影響評価検討会総合検討会の開催及び傍聴について
英国気候変動・開発における経済担当 政府特別顧問 ニコラス・スターン博士の若林大臣訪問について
東アジア・オーストラリア地域フライウェイ・パートナーシップ(渡り性水鳥保全連携協力事業)の発足について

経済産業省
CDMプロジェクト政府承認審査結果について(申請者:三井物産株式会社、電源開発株式会社)
「「HCFC」、「臭化メチル」の輸入割当てについて(案)」に対する意見募集
特定サービス産業動態統計確報(平成18年9月分)
石油等消費動態統計(平成18年9月分)

資源エネルギー庁
LPガス備蓄の現況(11月分)
平成18年度「水力開発の促進対策」

【判例情報ウオッチング】
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『「水俣病問題に係る懇談会」提言書』を読む ①水俣病の発見と行政の不作為

2006-11-16 07:40:52 | 健康被害
2006年11月16日 
 熊本、鹿児島両県の水俣病認定申請者でつくる水俣病不知火患者会の国賠訴訟原告・弁護団のメンバーら約20人が14日、環境省を訪れ、水俣病関西訴訟最高裁判決から2年が過ぎた中、若林正俊環境相あてに、未認定患者の早期救済を求める要求書を提出した、というニュースがありました。要求書の内容は、最高裁判決から2年が経過した一方で、両県の認定審査会の機能停止で審査を待つ申請者約4,500人以上が放置されている点を踏まえ、①原告らを水俣病患者と認め損害賠償などの救済を行う、②前環境相が設けた「水俣病問題に係る懇談会」が提言した恒久的な救済の早期実施、など5項目とのことです。

 水俣病問題は、最高裁判決後も、認定申請者は増え続け、新たな訴訟も提起されようとしています。なぜ、このような事態が生じているのか、平成18年9月19日に公表された『「水俣病問題に係る懇談会」提言書』及び国会の議論を引用しつつ、本日から数回にわたり整理していきたいと思います。

1.水俣病の発見と行政の不作為
(1)水俣病の発見
 水俣病発生の公式確認は、昭和31年5月1日、チッソの附属病院から水俣保健所に、実に奇妙な病気が出て、すでに4人入院しているという報告があった日とされています。しかし、環境異変はそれ以前からあらわれはじめていました。水俣市ではこの事態に対し、昭和31年5月28日に水俣市奇病対策委員会を設置。熊本大学医学部に奇病の解明を要請しました。
 一方、チッソは、企業秘密を理由に、医師たちを工場内立入を認めず、調査協力を拒否。熊本大学医学部研究班は、独自に調査活動をした結果、同年11月に、水俣病は伝染性疾患ではなく、ある種の重金属中毒であり、その重金属は魚介類によって人体に侵入した可能性が高いという結論を出しています。しかし、いかなる重金属が関わったのかについては、その時点では、突き止めることができませんでした。また、厚生省厚生科学研究班は、昭和32年3月、厚生省に提出した報告書で魚介類を介して摂取した何らかの化学物質か金属類による中毒であろうとの推測を示しています。つまり、水俣病の発見から1年以内には、おおよその原因が推測されていたことになります。

(2)行政の不作為
 それにも関わらず、政府がこの事実を認めて、政府統一見解として発表したのは、水俣病発生公式確認からは実に12年4か月も経った昭和43年9月になってからのことでした。その間の行政の対応を『「水俣病問題に係る懇談会」提言書』から抜粋すると以下の通りとされています。
 『昭和32年5月21日付けの「水俣奇病会議」と題する厚生省技官メモ(水俣病研究会編「水俣病事件資料集」葦書房)によれば、熊本大学の意向としては漁獲の禁止を求めていたのに対し、行政側は、今の段階では何とも言えない。まだまだ手を打てない。大学が行政のことまで口だししてもらいたくない。との趣旨の発言をしたと汲み取れる(11ページ)』
 『厚生省は同年9月11日、熊本県知事に対し、水俣湾内の魚介類の全てが有毒化しているという明らかな根拠が認められないので、食品衛生法を適用して、漁獲魚介類のすべてを販売禁止にすることはできないという見解を示した(12ページ)』
 『昭和34年7月、熊本大学の研究班が「有機水銀説」を発表すると、厚生省の食品衛生調査会水俣食中毒特別部会も、11月12日に、発生源には触れずに(つまりチッソの責任を問うのを避ける形で)、水俣病の主因をなすものはある種の有機水銀化合物であると答申した。ところが特別部会は翌日解散させられた。答申が出ても、厚生省は積極的な手を打たず、報告書は葬られたに等しい扱いを受けた』

(3)なぜ、不作為が継続されたか
 行政はなぜ、このような対応に終始したのでしょうか。その理由は、当時の経済的背景に求めることができます。高度経済成長の入口に入りかけていた当時、水俣病の問題をめぐっては国の内部でも、有機水銀説を認め工場排水に適切な措置を講じるように要請する厚生省と有機水銀説を否定し重化学工業の担い手であるチッソを擁護しようとする通商産業省の対立があったとされています。
 平成16年10月15日の最高裁判決においても事実の概要として『昭和33年6月開催の参議院社会労働委員会において、厚生省環境衛生部長は、水俣病の原因物質は水俣市の肥料工場から流失したと推定されるとの発言をした。また、同年7月、同省公衆衛生局長は、関係省庁及び上告人県に対して発した文書により、水俣病はある種の化学毒物によって有毒化された魚介類を多量に摂取することによって発症するものであり、肥料工場の廃棄物によって魚介類が有毒化されると推定した上で、水俣病の対策について一層効率的な措置を講ずることを要望した。他方、通商産業省(以下「通産省」という。)軽工業局長は、同年9月ころ、厚生省に対し、水俣病の原因が確定していない現段階において断定的な見解を述べることがないよう申し入れた。』とされています。
 結果、有機水銀説も政府統一見解とならずチッソの工場排水規制も行われることはありませんでした。
 このような経過の中で、熊本大学の入鹿山教授らは、地道に原因究明の研究を続けました。そして、チッソの工場内アセトアルデヒド工程の反応管から採取されて残されていた残滓から塩化メチル水銀を抽出することに成功。昭和37年8月にその論文が発表されています。
 しかし、昭和43年9月に、『熊本水俣病の原因はチッソ工場排水中のメチル水銀化合物であり、新潟水俣病の原因も昭和電工鹿瀬工場の排水中のメチル水銀化合物である』という政府統一見解が発表されるまでの『空白の8年余』における政府の有機水銀汚染対策の無策は、第2の水俣病である「新潟水俣病」を生むことになります。
 また、当時の水質規制法に関する法律としては、公共用水域の水質の保全に関する法律(水質保全法)がありましたが、水俣湾がこの水質保全法に基づく指定水域に指定され、排水規制が開始されたのは、さらに遅れて翌昭和44年2月になってからのことでした。水質保全法は、『人の生命・健康は絶対的に保護するが、生活環境の保全は経済発展と調和する範囲で進める』といういわゆる調和条項つきの構成となっており、そこにも経済優先の政策を垣間見ることができます(同法は、昭和45年の公害国会において、現在の水質汚濁防止法へ改正され、調和条項は削除されています)。
 こうした行政の「不作為」は、水俣病関西訴訟の最高裁判決で以下の通り、厳しく問われています。
 『国が、昭和34年11月末の時点で、多数の水俣病患者が発生し、死亡者も相当数に上っていると認識していたこと、水俣病の原因物質がある種の有機水銀化合物であり、その排出源が特定の工場のアセトアルデヒド製造施設であることを高度のがい然性をもって認識し得る状況にあったこと、同工場の排水に含まれる微量の水銀の定量分析をすることが可能であったことなど判示の事情の下においては、同年12月末までに、水俣病による深刻な健康被害の拡大防止のために、公共用水域の水質の保全に関する法律及び工場排水等の規制に関する法律に基づいて、指定水域の指定、水質基準及び特定施設の定めをし、上記製造施設からの工場排水についての処理方法の改善、同施設の使用の一時停止その他必要な措置を執ることを命ずるなどの規制権限を行使しなかったことは、国家賠償法1条1項の適用上違法となる。』
 『熊本県が、昭和34年11月末の時点で、多数の水俣病患者が発生し、死亡者も相当数に上っていると認識していたこと、水俣病の原因物質がある種の有機水銀化合物であり、その排出源が特定の工場のアセトアルデヒド製造施設であることを高度のがい然性をもって認識し得る状況にあったことなど判示の事情の下においては、同年12月末までに、水俣病による深刻な健康被害の拡大防止のために,旧熊本県漁業調整規則(昭和26年熊本県規則第31号。昭和40年熊本県規則第18号の2による廃止前のもの)に基づいて、上記製造施設からの工場排水につき除害に必要な設備の設置を命ずるなどの規制権限を行使しなかったことは、国家賠償法1条1項の適用上違法となる。』

※明日は、混迷する被害者救済、を掲載する予定です。

【官報ウオッチング】
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【行政情報ウオッチング】
環境省
茨城県神栖市における有機ヒ素化合物による汚染土壌等の本格処理の開始について

経済産業省
第3次産業活動指数(平成18年9月分)

国土交通省
冬柴大臣会見要旨(平成18年11月14日・道路特定財源と環境対策)

資源エネルギー庁
石油備蓄の現況 平成18年11月分

【判例情報ウオッチング】
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感覚の衝突をどう克服するか 『環境の街作り検討会』報告書骨子案と『陰翳礼讃』

2006-11-15 07:37:28 | 環境行政一般
2006年11月15日 
 環境省は、14日、『環境の街作り検討会』の資料として、報告書骨子案を公表しました。『環境の街作り検討会』は、地球環境問題への対応・価値観の多様化に伴う社会構造の変化・国際化の進展といった国内外を取り巻く環境問題と、高度成長期に形成された第一世代の都市から環境共生型の第二世代の都市に再編していく時期に来ている「まちづくり」について、両者を複合的に捉え、①熱、②光、③かおり、④音、といった4つの視点から「まちづくり」により環境を改善するための基本的方向、具体の環境事業等について検討しよう、というものです。
 同報告書骨子案では、環境共生型の第二世代の都市に再編していくためには、①都市住民のニーズが量から質に転換していること(モノがある程度充足されている現在では、「ゆたかさ」、文化的な環境、風格や安心といった精神的要素を含んだ広い意味での生活の質の向上が求められている)、②現在の都市活動が地球温暖化をはじめとした新たなタイプの広域な環境問題の大きな原因の一つとなっている現状を受け、都市内のみならず都市外を含めた広い範囲での環境への影響に配慮することが求められていること、に注目することが必要であるとしています。そのうえで、従来のヒートアイランド・過剰照明・悪臭・騒音といった負の環境を、適温・光・かおり・音といった積極的な環境づくりへと転換していくことの重要性を示唆しています。
 公害問題のように、原因-結果、加害-被害といった相対的な関係性の構造をもつ問題の場合には、最低限の環境水準を確保するといったナショナルミニマムの保全水準を見出すことが第1義的に重要となります。一方で、同報告書骨子案が提唱する「第二世代の街作り」のように、高度化・多様化したニーズに対応する、あるいは複雑な環境問題に対応する必要がある場合には、一律の指標や水準を見出すことが難しくなります。たとえば、かおり1つとってみても、その良し悪しの感じ方は個人によって異なるため、社会的なコンセンサスを得ることは、相当困難なことのように思えます。
 負の環境を転換させ、新たな都市環境を創造しようという試みには大いに賛同できるものがありますが、いざ実行していくとなると、経済的な利害関係だけでなく感覚の衝突も生じることとなり、結構、大変なことであろうと思います。そのため、同報告書骨子案では、専門家の育成や環境教育の重視など、長期的な視点から本事業の設計が描かれています。この点が成功の鍵といえるでしょうか。

 余談ですが、同報告書骨子案を読んでいて、故・谷崎潤一郎氏の『陰翳礼讃』を思い出しました。「太陽の光線の這入りにくい座敷の外側へ、土庇を出したり縁側を附けたりして一層日光を遠のける。そして室内へは、庭からの反射が障子を通してほの明るく忍び込むやうにする。われわれの座敷の美の要素は、此の間接の鈍い光線に外ならない。」など、『陰翳礼讃』は、今でも建築家や照明関係の職業につく方で必読の書とされている人が多いと聞きます。
 『陰翳礼讃』が書かれた昭和8年頃の環境を考えてみると、冷暖房装置などはまださほど普及してなく、電気による照明は電球のみ、騒音・悪臭も社会問題とされるまでには至っていなかったと思います。現代と比べれば、だいぶ不自由な時代であったと思いますが、それでも谷崎潤一郎氏は、『陰翳礼讃』のなかでロウソクの灯火や日本家屋が生み出すそれ以前の時代の陰影などの風情を懐かしんでいます。
 もしも、谷崎潤一郎氏が『環境の街作り検討会』に参画されていたら、果たしてどのような意見をのべられたでしょうか? 想像するだけで楽しく思えてきます。しかし、詩人で明治大学教授の飯島耕一氏が東京新聞の『回流』に書かれた『明るい部屋 快適な街』(1994年3月6日)では、谷崎潤一郎氏の別の面が紹介されています。谷崎潤一郎夫人によると、『陰翳礼讃は、あくまで、あの人の夢だったんですよ』とのことで、谷崎潤一郎氏が自宅を建てる時に『陰翳礼讃』を読み込んだ建築家に対し、『これではだめだ。小説を書くには海から光が入る明るい部屋でないといけない』と、やり直しを命じたとのエピソードが紹介されています。

【官報ウオッチング】
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【行政情報ウオッチング】
環境省
中央環境審議会 瀬戸内海部会(第5回)の開催について
中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会浄化槽専門委員会第21回会合の開催について
小笠原諸島の世界自然遺産候補地地域連絡会議等の設置について
若林環境大臣の気候変動枠組条約第12回締約国会議(COP12)及び京都議定書第2回締約国会合(COP/MOP2)の閣僚級会合への出席について
平成18年度第2回「ジフェニルアルシン酸に係る健康影響等についての臨床検討会」の開催について
クマ類出没対応マニュアル(暫定版)について

経済産業省
「製品安全対策に係る総点検結果とりまとめ」を受けた液化石油ガス保安規則の一部を改正する省令等に対する意見募集

厚生労働省
第11回石綿に係る疾病の業務上外に関する検討会議事概要
第14回石綿に係る疾病の業務上外に関する検討会開催について

東京都
水道事業 二酸化炭素排出量削減の共同研究相手を公募

【判例情報ウオッチング】
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国会の議論から ③水俣病をめぐる司法判断と政治解決

2006-11-14 08:51:38 | 健康被害
2006年11月14日 
 国会の議論から第3回は、水俣病関連の質疑をふりかえります。10月27日の衆議院環境委員会において、末松義規代議士(民主党)が司法判断と政治解決の差異について質問しています。

1.水俣病関西訴訟最高裁判判決の政府評価
『まず、一昨年の10月の最高裁の判決、これについての評価を、簡単で結構ですから、大臣の方から評価をお願いしたいと思います。』(末松代議士)

『一昨年10月に出されました水俣病関西訴訟の最高裁判所の判決は、国及び熊本県に、昭和35年1月以降、水俣病の被害の拡大を阻止できなかった不作為の不法行為責任を認める判決でございました。16年の10月15日でございますが、判決当日、小池環境大臣が談話を出しております。「水俣病を発生させた企業への対応に長期間を要しその被害の拡大を防止できなかったことについて真摯に反省し、」そして「本訴訟の当事者の方々をはじめ、多年にわたり筆舌に尽くしがたい苦悩を強いられてこられた多くの方々に対し、誠に申し訳ないという気持ちで一杯であります。」ということで、率直に反省をし、おわびをしながら、その気持ちをあらわしたところでございます。』(若林環境大臣)

2.司法判断と政治解決
■議論のポイント
 □最高裁判決は、認定基準自体の見直しを求めたものか?
 □政治解決は、救済の時間を短縮し、範囲を拡大したものか?
 □被害者救済という同一目的でありながら、なぜ、救済の道筋が複数あるのか?
 
『厳粛に受けとめておわびをしてきたということなんですね。そこは非常に私なんかは評価するんです。ただ、そのおわびと、私も今資料で配っていますけれども、保健手帳の交付申請書というので、これは何をチェックしているかというと、この中段にあります、水俣病に係る認定に関する処分について不服申し立てをしていますかどうか、あるいは水俣病に係る認定に関する処分の取り消しの訴えを提起していますか、あるいは裁判等をやっていますか、こういったことをチェックして、これにはいという話があれば保健手帳が交付されないというのが実態なんですね。・・・・・・結局、厚生労働省の認定基準というものを認めない、あるいは、最高裁はこれを覆して、そうじゃないと司法の判断を示したわけですけれども、これを認定しないとか、そういったことに異議を申し立てる人間はこの保健手帳を交付しない、これはおかしいんじゃないですか。そこは大臣としてどう思いますか。』(末松代議士)

『まず、高裁の判断、そして最高裁がこれを認めたわけですけれども、この判断、最高裁判決におきましても、認定基準が間違っている、認定基準とは別のものが必要だという意味で、公健法による認定基準の見直しを要求する判決ではないというふうに我々はまず理解をしているという点でございます。それからもう一点は、今の手帳の関係でございますけれども、この制度を決めましたのは平成7年の、簡単に言いますと政治解決、こう言われております。政治解決をいたしたわけでありまして、水俣病問題をめぐります紛争の状況をおさめていくために設けられた制度で、訴訟を通じて解決を図っていくというのとは別の道をもう一つつくって、別の道で救済を求め、そしてそのことによって早急に、そこで納得の上で決着をしていくというためにつくられた制度でございます。そういう制度の趣旨を踏まえて、先ほどお話を申し上げたような運用になっているわけでございまして、保健手帳の交付と裁判の提起というのは本人の意思による選択の問題でございまして、少し時間がかかっても裁判でいくんだということで訴訟を、裁判提起をするということで、これは保健手帳を受けたら将来の裁判を制限するというものではなくて、裁判を行っているときは保健手帳による医療費の給付を受けられないという制度にしているわけでありまして、裁判をやめて賠償が認められない、あるいはそれを求めないということになりましたら保健手帳の対象にするというふうに、選択的にしているわけでございます。』(若林環境大臣)

『それは人の救済という話で、命をどう考えているかということですよ。結局、政治決着を認めない人は、あなたは不健康なままでいいんですか、いいんですよというふうに言っているのと一緒じゃないですか。今大臣が、それは厚労省がそう言わせているのかもしれません、要は、政治決着を受けるんだったらあなたは健康になるような形で支援しますよ、でも、裁判を続けて政府と対決するんだったら、それはどうぞ自由に、あなたの健康がどうなっても構いませんと。これは国民を二分するようなやり方で、それこそ踏み絵を踏ませるおかしなやり方じゃないですか。むしろ、環境省はそういったことに対して敢然と立ち上がって、きちんとやるべきところが環境省の立場じゃないんでしょうか。』(末松代議士)

『基本的には、医療費の自己負担分については、全く同じ制度で同じ負担ということから、自己負担分についてはすべて見るということでございます。それから、若干、はり、きゅうとか温泉療養費とか、その点での上限があるということで、これも非常にわずかなものでございます。』(政府参考人/環境省総合環境政策局環境保健部長)

3.政治解決の意義
■議論のポイント
 □司法判断にあわせた政治解決はできないのか?
 □因果関係の判断の困難さをどう克服すべきか?

『・・・・・・最高裁は、もうそれでこの認定基準云々の話は吹っ飛ばしてもしっかりと司法判断をしているんですよ。だから、みんな、結局また裁判に持ち込めば、その最高裁の判例が前例となって、最高裁が出した、あるいは認定した形での基準というものが彼らの前例になっていくわけなんですね。そうすると裁判で勝っていくと。もう先が見えている話なんですよね。だから、そこはぜひこの機会に、もう余り役所の方で前の政治決着ということにこだわらずに、今もう50年たっているわけですから、ここで、救済の中で新たな政治決着を、新たに第二次の政治決着をやっていくという形を早くしないといけないと思うんですね。大臣、そこはぜひお願いしたいと思うんですが、いかがですか、大臣。』(末松代議士)

『最高裁判断が示された判決が出ているんだから、行政上の、公健法上の認定基準はそちらに合わせていくべきじゃないか、それはそういう意味では二重基準ではないかという御批判だと思います。そう放置していると、今事実、訴訟が新たに提起されておりますが、それは、訴訟が提起されれば国の方が負けるのは明らかだというような意味合いのことを言っておられますけれども、私は決してそんなふうに思っておりません。大阪高裁の判決及びそれを受けての最高裁の判決は、訴えた人たち一人一人について因果関係を審査しているわけですね。そういう因果関係があることによって初めて、国の責任というものが、あるいは県の責任というものが明らかになるわけで、そういう因果関係が明確でないものについてまで拾うというのは、本来言えばいろいろ問題があるところ、平成7年の政治決着というのは、その辺を明確にしない、するのにも非常に時間がかかるので、そこのところは大方の納得が得られる形で平成7年の解決を図った、こういう性質のものでございます』(若林環境大臣)

4.「水俣病問題に係る懇談会」提言書
■議論のポイント
 □救済財源の確保と公平性の問題をどう考えるか?
 □汚染者負担原則をどのように実現させていくか?
 
『今大臣が言われた、裁判は当事者の全部、チェックをしていって一人一人やっているんだ、そう言われましたけれども、小池大臣の「水俣病問題に係る懇談会」提言書の中で、これは44ページ、「「認定基準」をそのまま維持するにせよ、この「認定基準」では救済しきれず、しかもなお救済を必要とする水俣病の被害者をもれなく適切に救済・補償することのできる恒久的な枠組みを早急に構築することであろう。」というふうに書いていて、そして45ページで、これは「新たな救済・補償に伴い、国は財政負担を強いられることになるが、国全体が経済成長の恩恵を受けその陰で犠牲となった人々への償いととらえるなら、「汚染者負担の原則」に基づく原因企業の負担は当然にしても、国民の税金を財源とする一般会計から応分の支出をするのも当然のことと考えるべきであろう。」そういうことはきちんと言っているわけですよ。・・・・・・それと同時に、今認定審査会というのが全く再開できない、それはなぜか。認定基準にずっとこだわってくるから、当然、今1年半ぐらい立たないわけですよ、その認定審査会なるものが。これからずっと立ちませんよ、そういったことで。だって、最高裁の判定が出ていて、それでまた覆されるかもしれない認定について一々言う人なんていませんよ。ぜひそこはある程度政治的な判断を加える必要があるんじゃないですかと私は申し上げているんですよ。・・・・・・何も、大臣がおっしゃるように、いや全く関係のない人がそれがここで焼け太りをしよう、そういうふうに言っている犠牲者の方なんていませんよ、ほとんど。そこを基準として考えるとこの問題を誤るということですよ。ぜひそこは、むしろ環境省の方が、それは財務省が反対するのはわかる、でも環境省の方がしっかりとそこは財務省に対して言うべき話、立場だと思います。』(末松代議士)

『・・・・・・心情的には、そういう心情がないわけじゃありませんけれども、やはり国の機関として言いますと、払わなければならないものは払うけれども、どうしても払わなければならないということでないものまで払うということについては、やはり払えないものは払えないという判断を我々はしっかりしておかなきゃいけないという、私は常日ごろそのように考えて対処しているところでございます。』(若林環境大臣)

【官報ウオッチング】
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【行政情報ウオッチング】
環境省
第5回ASEAN+3(日、中、韓)環境大臣会合の結果について
第2回 環境の街作り検討会 議事次第・資料

経済産業省
CDMプロジェクト政府承認審査結果について(申請者:JFEスチール株式会社、三菱UFJ証券株式会社)
鉱工業生産・出荷・在庫指数確報(平成18年9月分)
資源・エネルギー統計確報(平成18年9月分)
機械統計確報(平成18年9月分)
化学工業統計確報(平成18年9月分)
窯業・建材統計確報(平成18年9月分)
繊維・生活用品統計確報(平成18年9月分)
紙・パルプ・プラスチック製品・ゴム製品統計確報(平成18年9月分)
鉄鋼・非鉄金属製品・金属製品統計確報(平成18年9月分)
需給統計確報(平成18年9月分)
商業販売統計確報(平成18年9月分)

【判例情報ウオッチング】
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家電リサイクル法と廃棄物処理法の関係

2006-11-13 07:41:57 | リデュース・リユース・リサイクル
2006年11月13日 
 『某県某市の一般廃棄物処理業者が、地域の消費者から有料で引き取った冷蔵庫やテレビを、廃棄物処理法で定められた処理をせずに処分していたことが分かった。地域ぐるみで小売店やリサイクル義務のあるメーカーを通さないこうした処理を推進、市も黙認していた。環境省や県は、同法違反と指摘する。』とのニュースがありました(自治体名は伏せました)。
 廃家電の扱いと廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)との関係について、整理をしてみます。

1.ニュース内容の整理
 上記のニュース記事ですが、文面を読む限り廃棄物処理法違反ではなく、特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)に反する行為であると思います。家電リサイクル法では、廃棄物となった冷蔵庫・テレビ・洗濯機・エアコンについて、小売業者・指定法人・市町村の引取・引渡義務が定められています。
 また、消費者は、『特定家庭用機器をなるべく長期間使用することにより、特定家庭用機器廃棄物の排出を抑制するよう努めるとともに、特定家庭用機器廃棄物を排出する場合にあっては、当該特定家庭用機器廃棄物の再商品化等が確実に実施されるよう、特定家庭用機器廃棄物の収集若しくは運搬をする者又は再商品化等をする者に適切に引き渡し、その求めに応じ料金の支払に応じることにより、これらの者がこの法律の目的を達成するために行う措置に協力(第6条)』することが義務付けられています。
 そして、上記廃家電が排出されてから再商品化等される過程は、特定家庭用機器廃棄物管理票(第43条、第44条)によって管理されることとされています。
 したがって、消費者が排出した廃冷蔵庫や廃テレビを引取義務のある小売店やメーカーを通さないで処分する行為は、家電リサイクル法のリサイクルルートを逸脱した行為であるといえます。

2.廃棄物でない場合 ただし、売却価格<運送費等=廃棄物
 家電リサイクル法は、あくまで廃棄物となった冷蔵庫・テレビ・洗濯機・エアコンについてのリサイクル方法を定めた法律ですので、たとえば有価物としてリサイクルショップ等に売り渡す場合には適用されません。
 ここで問題となるのが、中古品等としてリサイクルショップ等へ売却するケースです。再使用可能なものを再使用するために売買すること自体には問題はありません。しかし、売却価格より運送費等の費用のほうが高く、結果として売り手側がマイナスとなる場合には、廃棄物と判定されることになりますので注意が必要です(平成3年10月18日衛産第50号厚生省生活衛生局水道環境部環境整備課産業廃棄物対策室長通知、平成17年3月25日環廃産発第050325002号環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課長通知)。つまり、売却価格<運送費等の場合は、中古品ではなく廃棄物であるため、家電リサイクル法上の正式ルートへ乗せる必要が生じる、ということになります。

3.廃家電の収集運搬
 なお、廃棄物となった廃家電の収集運搬については、『小売業者又は指定法人若しくは指定法人の委託を受けて特定家庭用機器廃棄物の収集若しくは運搬を業として行う者は、廃棄物処理法第7条第1項又は第14条第1項の規定にかかわらず、これらの規定による許可を受けないで、特定家庭用機器廃棄物の収集又は運搬(第9条の規定による引取り若しくは第10条の規定による引渡し又は第33条第3号に掲げる業務に係るものに限る。)を業として行うことができる(第49条)』とされ、廃棄物処理法の特定規定が設けられています。ただし、その場合であっても廃棄物処理法に規定されている基準にしたがって処理にあたることが求められています。

【官報ウオッチング】
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【行政情報ウオッチング】
環境省
本年度の「COOL BIZ」の成果について
平成18年度環境技術実証モデル事業検討会山岳トイレし尿処理技術ワーキンググループ会合(第2回)議事要旨
第10回環境コミュニケーション大賞の募集について
地球環境パートナーシッププラザ(GEIC)10周年記念シンポジウム開催のお知らせ
環境政策提言能力向上セミナーの開催について

国土交通省
「航空法施行規則」、「航空機による爆発物等の輸送基準を定める告示」、「航空機による放射性物質等の輸送基準を定める告示」等の一部改正に関するご意見の募集について

資源エネルギー庁
レアメタル生産動態統計2006(平成18)年度9月分
我が国の主要非鉄金属の国別形態別輸入状況2006(平成18)年度9月分
非鉄金属等需給動態統計調査2006(平成18)年度9月分

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マニフェスト制度と委託基準 ③委託基準の改正系譜

2006-11-12 08:01:52 | 廃棄物適正処理
2006年11月12日
 産業廃棄物処理の委託契約については、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)施行規則に詳細規定が置かれていますが、今年にはいって3回の改正がありました。3つの改正のうち最初の2つの施行日は7月1日、最後の1つは10月1日とされており、いずれも施行からだいぶ日にちが経過しています。しかしながら、私が契約等に関わった範囲では、排出事業者、処理業者ともまだまだ周知が徹底されていないように感じられます。委託基準違反は、『6月以下の懲役又は50万円以下の罰金(廃棄物処理法第29条)』という罰則規定が設けられており、適正な対応が不可欠です。とくに産業廃棄物処理業者にとっては、廃棄物処理法による罰金刑以上が確定すると欠格要件に該当するため、許可の取消事由となり、仕事と失うという極めて高いリスクがあるといえます。今回は、3つの改正内容について振り返ります。

1.平成18年3月10日改正の概要 
(1)改正の概要
 『廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則及びポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令』によって、委託基準が改正されました。
 本改正の内容は、①廃棄物処理委託契約時に提供した廃棄物情報(廃棄物処理法施行規則第8条の4の2第6号に掲げる事項)に変更がある場合における情報の伝達方法、②廃棄物処理の委託契約の有効期間中に、規則第8条の4の2第6号に掲げる廃棄物の性状等が契約締結時の内容から変更が生じた場合、変更情報が廃棄物処理業者に適切に提供されるよう、変更に関する情報の伝達方法、を廃棄物処理の委託契約事項に追加するというものです。

(2)「廃棄物情報の提供に関するガイドライン」の公表
 本改正の背景には、廃棄物処理過程において、有害特性等の廃棄物情報が排出事業者から処理業者に十分に提供されないことに起因する自然発火や化学反応等による事故や有害物質の混入等の課題があり、廃棄物情報の適切な伝達が求められている、という点にありました。本改正内容がスムーズに実施されることを目的として、環境省では、平成18年4月28日に「廃棄物情報の提供に関するガイドライン」を公表しています。同ガイドラインでは、廃棄物の処理過程で発生した事故事例の検証結果等から、廃棄物情報が必要な項目として、廃棄物の有害性等の12項目を選定し、必要な情報項目を整理した廃棄物データシート(WDS)の様式例が提示されています。排出事業者は、産業廃棄物の処理委託に当たって、廃棄物情報をWDS等で通知し、これを基に処理業者と十分打合せを行うことが望ましいとされています。

2.平成18年5月26日改正の概要
(1)改正の概要
 本改正は、パーソナルコンピューター等の製品中に含有する有害物質に関する情報について、資源の有効な利用の促進に関する法律に基づく表示制度が導入されることから、有害物質情報の表示された製品が廃棄される段階で、こうした情報を処理の過程で活用できるよう、排出事業者から処理業者への情報伝達を制度化することを目的としています。
 廃棄物処理法に定める産業廃棄物の委託基準では、排出事業者は、処理を委託する産業廃棄物の性状等廃棄物情報を委託契約の中で処理業者に提供することとされていますが、今回の改正では、提供すべき廃棄物情報に、当該含有マークが貼付されている旨を追加することとされました。

(2)対象廃棄物など
①対象廃製品
 平成18年7月1日以降に製造された廃パーソナルコンピュータ、廃ユニット形エアコンディショナー、廃テレビジョン受信機、廃電子レンジ、廃衣類乾燥機、廃電気冷蔵庫、廃電気洗濯機が対象となります。

②対象有害物質
 鉛又はその化合物、水銀又はその化合物、カドミウム又はその化合物、六価クロム化合物、ポリブロモビフェニル(PBB)、ポリブロモジフェニルエーテル(PBDE)が対象となります。

3.平成18年7月20日改正の概要
 本改正は、人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有する石綿を含む廃棄物の高度な技術による無害化処理の促進・誘導を行うため、石綿による健康等に係る被害の防止のための大気汚染防止法等の一部を改正する法律により改正された廃棄物処理法の改正に伴うものです。
 具体的には、石綿含有産業廃棄物の処理の委託を行う際には、委託契約書に石綿含有産業廃棄物が含まれる旨を記載すること、とされています。

【官報ウオッチング】
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マニフェスト制度と委託基準 ②契約自由の原則の規制修正

2006-11-11 07:14:43 | 廃棄物適正処理
2006年11月11日 
 産業廃棄物の処理の責任は排出事業者にあり、自ら処理することが前提となりますが、実務上は許可を受けた産業廃棄物処理業者に委託することがほとんどです。その際、ポイントとなるのが排出事業者と産業廃棄物処理業者との委託契約です。本来、契約行為は私法の大原則である契約自由の原則に基づき、①契約締結の自由、②相手方選択の自由、③内容の自由、④方式の自由、が認められています。しかし、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)では、これらの自由を規制した委託契約しか認められていません。

1.廃棄物処理法による産業廃棄物委託契約の契約自由の原則の修正内容
(1)『契約締結の自由』の修正
 『契約締結の自由』に対しては、①委託するものが産業廃棄物であること、②委託する産業廃棄物の処理が可能な許可を得ている業者と契約すること、という修正がされています。たとえば、木くずの場合、建築業者や家具製造業者の産業活動によって生じたものであれば産業廃棄物となりますが、それ以外の業種から出されたものは、たとえ産業活動によって生じたものであっても事業系一般廃棄物となり、一般廃棄物処理業の許可を得ている業者にしか処理の委託をすることができません。同じ性情の廃棄物であっても、業種により廃棄物の定義が異なるため、それぞれの許可業者としか契約できないことになります。

(2)『相手方選択の自由』の修正
 上記同様、廃棄物の定義に従い、その廃棄物を処理する許可を得ている業者としか、委託契約を締結することはできません。本来、市場では取引価格が安いとか、高度の技術を有している、という要素が相手方選択の重要なポイントとなりますが、廃棄物処理法においては、許可が最優先され、その中で市場優位性を求めることになります。

(3)『内容の自由』の修正
 経済の大原則では、取引価格は『神の見えざる手』である市場に決定権がありますが、廃棄物処理法では『適正な対価の負担』がなく不法投棄や不適正処理が行われた場合、排出事業者に原状回復等の措置命令が用意されているなど、契約内容についても規制修正がなされています。また、排出事業者-収集運搬業者-処理業者での三面契約の原則禁止、再委託の原則禁止などの規制規定も置かれています。

(4)『方式の自由』の修正
 私法において契約は口頭でも書面でも認められていますが、廃棄物処理法では、必ず書面で行うことが義務付けられており、記載事項についても施行規則によって詳細に規定されています。

2.規制修正の理由
 そもそも業や施設設置の許可といった許認可とは、一般に禁止されていることを、一定の要件を満たすことにより、解除するという制度です。廃棄物の処理は、公衆衛生や環境保全の観点から非常に重要な業務であるため、都道府県知事、市町村長の許可制が法定化されています。従って、契約の相手側は、廃棄物処理業を営むために必要となる能力・設備を有している者として許可を得た業者に限られることになります。これが『相手方選択の自由』の規制修正の理由です。
 廃棄物処理法において、委託契約について『相手方選択の自由』以外にも上記のような規制修正を加えているのは、許可制をとってもなお、不法投棄や不適正処理などの事件が頻発しているからであるといえます。たとえば、価格のある程度の制限や三面契約の禁止は、適正処理を実施するために不可欠となる資金を確保することを目的としています。処理料金に満たない廉価な値段で収集運搬を請け負わざるえない場合や、中間搾取が行われると、不法投棄につながる危険性が増大することは誰の目にも明らかでしょう。また、書面によらない契約の場合、契約自体がなかったこととして不法行為が行われることも想定できます。こうした危険を未然に防止することが、委託契約の規制修正の理由であると考えられます。

【官報ウオッチング】
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【行政情報ウオッチング】
環境省
中央環境審議会石綿健康被害判定部会石綿健康被害判定小委員会審査分科会の開催中止等について
中央環境審議会大気環境部会自動車排出ガス総合対策小委員会(第14回)の開催について
中央環境審議会循環型社会計画部会(第31回)の開催について
排水基準を定める省令等の一部を改正する省令について
地球温暖化対策の推進に関する法律施行令の一部を改正する政令案に対する意見の募集(パブリックコメント)について
環境技術実証モデル事業 小規模事業場向け有機性排水処理技術分野における実証対象技術の選定について
都市計画道路一般国道50号前橋笠懸道路に係る環境影響評価書に対する環境大臣意見の提出について
改正フロン回収・破壊法ブロック別説明会の開催について
海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律施行令に規定する有害液体物質等の扱いについての意見の募集(パブリックコメント)について

経済産業省
第3回バイオマス・アジアワークショップの開催について

【判例情報ウオッチング】
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