環境法令ウオッチング

2006年7月から2007年12月までの環境法令情報・行政情報・判例情報を掲載。

京都議定書第2回締約国会議閉幕 ①新たな枠組みの可能性と二酸化炭素海底貯留技術(CCS)の是非

2006-11-20 08:05:56 | 地球温暖化
2006年11月20日 
 11月6日から17日まで、約70か国の閣僚を含む180を超える国の代表が出席し、ナイロビ(ケニア共和国)で開催された気候変動枠組条約第12回締約国会合(COP12)、京都議定書第2回締約国会議(COP/MOP2)が閉幕しました。結果として、最大の懸念であった2013年以降の枠組みについては、2008年冬の京都議定書第4回締約国会議(COP/MOP4)で協議することを明記した会議報告書が採択され、決裂は避けることができました。以下、各紙報道を引用しつつ、2回にわけて今回の会議を検証してみます。

1.新たな枠組み議論
 今回の会議の最大のテーマであった2013年以降の新たな枠組みについては、途上国にも一定の負荷を求める先進国側とそれを認めない途上国側、という対立の構図が早くからクローズアップされていました。閣僚級会合2日目に若林正俊環境相が「すべての国が能力に応じて温室効果ガスの排出削減に取り組み、主要排出国による最大限の削減努力を促すための枠組みを構築しなければならない」と演説するなど、日本はこの問題の推進に向けて積極的な議論を展開。一方、中国など途上国は今回の会議で議論を打ち切るよう主張し、議論は空転を続けましたが、議長国のケニアが途上国の主張に配慮した『話し合いの時期のみを2008年と示して具体的な削減義務に踏み込まない』とする妥協案を提案し、中国を含む途上国の同意を取り付け、会議報告書の採択に至っています。この模様を毎日新聞は、以下のように報じています。

『最大の課題だった途上国の取り組みを合意に導くことができたが、経済への悪影響を嫌う途上国に配慮し、具体的な内容の協議は来年以降に先送りした。今後、世界第2位の温室効果ガス排出大国・中国などを実効性のある取り組みに巻き込めるかが課題となる。
 作業手順は、途上国を含めた温室効果ガス削減のための取り組みをどのような内容で進めるかなどを、各国が意見書にまとめて07年8月までに提出。08年の会議で具体的な取り組みについて話し合う(毎日新聞)』

 京都議定書をめぐっては、科学的根拠がない、として世界最大の排出国の米国が2001年に離脱。排出量第2位と第5位の中国、インドを含め、開発途上国には削減義務が課せられていないため、現在、排出削減量は義務を負う日本、EUなどの世界全体の30%に過ぎない状況となっています。これでは、義務国が目標を達成しても、それだけでは地球全体の温暖化防止には至らず、実効性の面からも問題があるといえます。結論は先送りとなりましたが、2013年以降の新たな枠組みの議論の余地が残されたことは、最低限の成果であったと思います。

2.二酸化炭素海底貯留技術(CCS)の是非
 日本国内でも話題となった二酸化炭素海底貯留技術(CCS)を、削減量として認めるかどうかにつての議論も、2008年冬の京都議定書第4回締約国会議(COP/MOP4)での決定に持ち越しとなりました。この課題は読売新聞が積極的に報じています。

『開催中の京都議定書第2回締約国会議は16日、油田やガス田などから排出される二酸化炭素(CO2)を分離・回収し、地中や海底の地層に封じ込める貯留技術(CCS)を温暖化対策として認めるかどうかを、2008年の第4回締約国会議で決定することに合意した。
 来年、民間団体や国際機関で議論し、各国がこれを踏まえた意見を提出。第3回締約国会議で議論したうえで、第4回会議で決定する。
 先進国が途上国でCO2削減事業を行い、削減分に応じて国連が発行するクレジットを先進国の削減分として算入する「クリーン開発メカニズム」の一つとして注目され、先進国や産油国は賛成したが、一部の途上国から安全性などを疑問視する声が強く、決定を先送りした形になった(読売新聞)』

 世界のCO2排出量の約100年分の削減が可能との推測もある二酸化炭素海底貯留技術(CCS)については、11月3日、ロンドン条約議定書が改正され、投棄可能な廃棄物に海底下地層に貯留される二酸化炭素(CO2)を追加することが国際的に認められることとなりました。これを受け、政府は次期通常国会に、海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律(海洋汚染防止法)改正案を提出し、国内でも対応可能となるよう法整備を進めています。法整備が整っても、技術的な問題などの検証も含め、実現されるのは先のことであるとは思いますが、二酸化炭素海底貯留がCO2削減の対象とならないのでは、技術開発のインセンティブも乏しく、今後の進展に少なからず影響を及ぼすのではないでしょうか。この点、11月19日の読売新聞の社説では次のように危惧しています。

『対立は、個別のテーマでも目立った。CO2を地下約1キロの深さに封じ込める「地中貯留(CCS)」技術をめぐるものだ。各国が実施すれば、世界のCO2排出量の約100年分の削減が可能との推測もある。カナダやノルウェーではすでに事業化されている。
 紛糾したのは、貯留したCO2を削減分として認めるかどうかだった。
 EUのほか、貯留に適した油田跡地を抱える産油国は、CCSに積極的だったのに対し、非産油途上国の多くは反対に回った。温暖化防止のための有望な技術なのに、結論が先送りされてしまった。事業化のスピードが落ちそうだ(読売新聞)』

 二酸化炭素海底貯留技術(CCS)は、CO2排出量の削減にとっては、確かに夢のような話ですが、それとて『有限』であることには違いはありません。毎年の貯留量を明確に規定するなどの措置をとらない限り、廃棄物の最終処分場の逼迫と同様の問題を将来世代に残すことになります。この点、各国の利害の不一致が原因とはいえ、慎重な議論がなされることとなったことは評価したいと思います。

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「BDF混合軽油の規格化に関する説明会」

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