環境法令ウオッチング

2006年7月から2007年12月までの環境法令情報・行政情報・判例情報を掲載。

国会の議論から ③水俣病をめぐる司法判断と政治解決

2006-11-14 08:51:38 | 健康被害
2006年11月14日 
 国会の議論から第3回は、水俣病関連の質疑をふりかえります。10月27日の衆議院環境委員会において、末松義規代議士(民主党)が司法判断と政治解決の差異について質問しています。

1.水俣病関西訴訟最高裁判判決の政府評価
『まず、一昨年の10月の最高裁の判決、これについての評価を、簡単で結構ですから、大臣の方から評価をお願いしたいと思います。』(末松代議士)

『一昨年10月に出されました水俣病関西訴訟の最高裁判所の判決は、国及び熊本県に、昭和35年1月以降、水俣病の被害の拡大を阻止できなかった不作為の不法行為責任を認める判決でございました。16年の10月15日でございますが、判決当日、小池環境大臣が談話を出しております。「水俣病を発生させた企業への対応に長期間を要しその被害の拡大を防止できなかったことについて真摯に反省し、」そして「本訴訟の当事者の方々をはじめ、多年にわたり筆舌に尽くしがたい苦悩を強いられてこられた多くの方々に対し、誠に申し訳ないという気持ちで一杯であります。」ということで、率直に反省をし、おわびをしながら、その気持ちをあらわしたところでございます。』(若林環境大臣)

2.司法判断と政治解決
■議論のポイント
 □最高裁判決は、認定基準自体の見直しを求めたものか?
 □政治解決は、救済の時間を短縮し、範囲を拡大したものか?
 □被害者救済という同一目的でありながら、なぜ、救済の道筋が複数あるのか?
 
『厳粛に受けとめておわびをしてきたということなんですね。そこは非常に私なんかは評価するんです。ただ、そのおわびと、私も今資料で配っていますけれども、保健手帳の交付申請書というので、これは何をチェックしているかというと、この中段にあります、水俣病に係る認定に関する処分について不服申し立てをしていますかどうか、あるいは水俣病に係る認定に関する処分の取り消しの訴えを提起していますか、あるいは裁判等をやっていますか、こういったことをチェックして、これにはいという話があれば保健手帳が交付されないというのが実態なんですね。・・・・・・結局、厚生労働省の認定基準というものを認めない、あるいは、最高裁はこれを覆して、そうじゃないと司法の判断を示したわけですけれども、これを認定しないとか、そういったことに異議を申し立てる人間はこの保健手帳を交付しない、これはおかしいんじゃないですか。そこは大臣としてどう思いますか。』(末松代議士)

『まず、高裁の判断、そして最高裁がこれを認めたわけですけれども、この判断、最高裁判決におきましても、認定基準が間違っている、認定基準とは別のものが必要だという意味で、公健法による認定基準の見直しを要求する判決ではないというふうに我々はまず理解をしているという点でございます。それからもう一点は、今の手帳の関係でございますけれども、この制度を決めましたのは平成7年の、簡単に言いますと政治解決、こう言われております。政治解決をいたしたわけでありまして、水俣病問題をめぐります紛争の状況をおさめていくために設けられた制度で、訴訟を通じて解決を図っていくというのとは別の道をもう一つつくって、別の道で救済を求め、そしてそのことによって早急に、そこで納得の上で決着をしていくというためにつくられた制度でございます。そういう制度の趣旨を踏まえて、先ほどお話を申し上げたような運用になっているわけでございまして、保健手帳の交付と裁判の提起というのは本人の意思による選択の問題でございまして、少し時間がかかっても裁判でいくんだということで訴訟を、裁判提起をするということで、これは保健手帳を受けたら将来の裁判を制限するというものではなくて、裁判を行っているときは保健手帳による医療費の給付を受けられないという制度にしているわけでありまして、裁判をやめて賠償が認められない、あるいはそれを求めないということになりましたら保健手帳の対象にするというふうに、選択的にしているわけでございます。』(若林環境大臣)

『それは人の救済という話で、命をどう考えているかということですよ。結局、政治決着を認めない人は、あなたは不健康なままでいいんですか、いいんですよというふうに言っているのと一緒じゃないですか。今大臣が、それは厚労省がそう言わせているのかもしれません、要は、政治決着を受けるんだったらあなたは健康になるような形で支援しますよ、でも、裁判を続けて政府と対決するんだったら、それはどうぞ自由に、あなたの健康がどうなっても構いませんと。これは国民を二分するようなやり方で、それこそ踏み絵を踏ませるおかしなやり方じゃないですか。むしろ、環境省はそういったことに対して敢然と立ち上がって、きちんとやるべきところが環境省の立場じゃないんでしょうか。』(末松代議士)

『基本的には、医療費の自己負担分については、全く同じ制度で同じ負担ということから、自己負担分についてはすべて見るということでございます。それから、若干、はり、きゅうとか温泉療養費とか、その点での上限があるということで、これも非常にわずかなものでございます。』(政府参考人/環境省総合環境政策局環境保健部長)

3.政治解決の意義
■議論のポイント
 □司法判断にあわせた政治解決はできないのか?
 □因果関係の判断の困難さをどう克服すべきか?

『・・・・・・最高裁は、もうそれでこの認定基準云々の話は吹っ飛ばしてもしっかりと司法判断をしているんですよ。だから、みんな、結局また裁判に持ち込めば、その最高裁の判例が前例となって、最高裁が出した、あるいは認定した形での基準というものが彼らの前例になっていくわけなんですね。そうすると裁判で勝っていくと。もう先が見えている話なんですよね。だから、そこはぜひこの機会に、もう余り役所の方で前の政治決着ということにこだわらずに、今もう50年たっているわけですから、ここで、救済の中で新たな政治決着を、新たに第二次の政治決着をやっていくという形を早くしないといけないと思うんですね。大臣、そこはぜひお願いしたいと思うんですが、いかがですか、大臣。』(末松代議士)

『最高裁判断が示された判決が出ているんだから、行政上の、公健法上の認定基準はそちらに合わせていくべきじゃないか、それはそういう意味では二重基準ではないかという御批判だと思います。そう放置していると、今事実、訴訟が新たに提起されておりますが、それは、訴訟が提起されれば国の方が負けるのは明らかだというような意味合いのことを言っておられますけれども、私は決してそんなふうに思っておりません。大阪高裁の判決及びそれを受けての最高裁の判決は、訴えた人たち一人一人について因果関係を審査しているわけですね。そういう因果関係があることによって初めて、国の責任というものが、あるいは県の責任というものが明らかになるわけで、そういう因果関係が明確でないものについてまで拾うというのは、本来言えばいろいろ問題があるところ、平成7年の政治決着というのは、その辺を明確にしない、するのにも非常に時間がかかるので、そこのところは大方の納得が得られる形で平成7年の解決を図った、こういう性質のものでございます』(若林環境大臣)

4.「水俣病問題に係る懇談会」提言書
■議論のポイント
 □救済財源の確保と公平性の問題をどう考えるか?
 □汚染者負担原則をどのように実現させていくか?
 
『今大臣が言われた、裁判は当事者の全部、チェックをしていって一人一人やっているんだ、そう言われましたけれども、小池大臣の「水俣病問題に係る懇談会」提言書の中で、これは44ページ、「「認定基準」をそのまま維持するにせよ、この「認定基準」では救済しきれず、しかもなお救済を必要とする水俣病の被害者をもれなく適切に救済・補償することのできる恒久的な枠組みを早急に構築することであろう。」というふうに書いていて、そして45ページで、これは「新たな救済・補償に伴い、国は財政負担を強いられることになるが、国全体が経済成長の恩恵を受けその陰で犠牲となった人々への償いととらえるなら、「汚染者負担の原則」に基づく原因企業の負担は当然にしても、国民の税金を財源とする一般会計から応分の支出をするのも当然のことと考えるべきであろう。」そういうことはきちんと言っているわけですよ。・・・・・・それと同時に、今認定審査会というのが全く再開できない、それはなぜか。認定基準にずっとこだわってくるから、当然、今1年半ぐらい立たないわけですよ、その認定審査会なるものが。これからずっと立ちませんよ、そういったことで。だって、最高裁の判定が出ていて、それでまた覆されるかもしれない認定について一々言う人なんていませんよ。ぜひそこはある程度政治的な判断を加える必要があるんじゃないですかと私は申し上げているんですよ。・・・・・・何も、大臣がおっしゃるように、いや全く関係のない人がそれがここで焼け太りをしよう、そういうふうに言っている犠牲者の方なんていませんよ、ほとんど。そこを基準として考えるとこの問題を誤るということですよ。ぜひそこは、むしろ環境省の方が、それは財務省が反対するのはわかる、でも環境省の方がしっかりとそこは財務省に対して言うべき話、立場だと思います。』(末松代議士)

『・・・・・・心情的には、そういう心情がないわけじゃありませんけれども、やはり国の機関として言いますと、払わなければならないものは払うけれども、どうしても払わなければならないということでないものまで払うということについては、やはり払えないものは払えないという判断を我々はしっかりしておかなきゃいけないという、私は常日ごろそのように考えて対処しているところでございます。』(若林環境大臣)

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【行政情報ウオッチング】
環境省
第5回ASEAN+3(日、中、韓)環境大臣会合の結果について
第2回 環境の街作り検討会 議事次第・資料

経済産業省
CDMプロジェクト政府承認審査結果について(申請者:JFEスチール株式会社、三菱UFJ証券株式会社)
鉱工業生産・出荷・在庫指数確報(平成18年9月分)
資源・エネルギー統計確報(平成18年9月分)
機械統計確報(平成18年9月分)
化学工業統計確報(平成18年9月分)
窯業・建材統計確報(平成18年9月分)
繊維・生活用品統計確報(平成18年9月分)
紙・パルプ・プラスチック製品・ゴム製品統計確報(平成18年9月分)
鉄鋼・非鉄金属製品・金属製品統計確報(平成18年9月分)
需給統計確報(平成18年9月分)
商業販売統計確報(平成18年9月分)

【判例情報ウオッチング】
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ISO14001
◆「環境法令管理室」に「11月6日から11月12日までに公布された主な環境法令一覧」をアップしました/2006.11.11
◆「環境法令管理室」に「11月6日から11月12日までに発表された改正予定法令一覧」をアップしました/2006.11.11