環境法令ウオッチング

2006年7月から2007年12月までの環境法令情報・行政情報・判例情報を掲載。

マニフェスト制度と委託基準 ②契約自由の原則の規制修正

2006-11-11 07:14:43 | 廃棄物適正処理
2006年11月11日 
 産業廃棄物の処理の責任は排出事業者にあり、自ら処理することが前提となりますが、実務上は許可を受けた産業廃棄物処理業者に委託することがほとんどです。その際、ポイントとなるのが排出事業者と産業廃棄物処理業者との委託契約です。本来、契約行為は私法の大原則である契約自由の原則に基づき、①契約締結の自由、②相手方選択の自由、③内容の自由、④方式の自由、が認められています。しかし、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)では、これらの自由を規制した委託契約しか認められていません。

1.廃棄物処理法による産業廃棄物委託契約の契約自由の原則の修正内容
(1)『契約締結の自由』の修正
 『契約締結の自由』に対しては、①委託するものが産業廃棄物であること、②委託する産業廃棄物の処理が可能な許可を得ている業者と契約すること、という修正がされています。たとえば、木くずの場合、建築業者や家具製造業者の産業活動によって生じたものであれば産業廃棄物となりますが、それ以外の業種から出されたものは、たとえ産業活動によって生じたものであっても事業系一般廃棄物となり、一般廃棄物処理業の許可を得ている業者にしか処理の委託をすることができません。同じ性情の廃棄物であっても、業種により廃棄物の定義が異なるため、それぞれの許可業者としか契約できないことになります。

(2)『相手方選択の自由』の修正
 上記同様、廃棄物の定義に従い、その廃棄物を処理する許可を得ている業者としか、委託契約を締結することはできません。本来、市場では取引価格が安いとか、高度の技術を有している、という要素が相手方選択の重要なポイントとなりますが、廃棄物処理法においては、許可が最優先され、その中で市場優位性を求めることになります。

(3)『内容の自由』の修正
 経済の大原則では、取引価格は『神の見えざる手』である市場に決定権がありますが、廃棄物処理法では『適正な対価の負担』がなく不法投棄や不適正処理が行われた場合、排出事業者に原状回復等の措置命令が用意されているなど、契約内容についても規制修正がなされています。また、排出事業者-収集運搬業者-処理業者での三面契約の原則禁止、再委託の原則禁止などの規制規定も置かれています。

(4)『方式の自由』の修正
 私法において契約は口頭でも書面でも認められていますが、廃棄物処理法では、必ず書面で行うことが義務付けられており、記載事項についても施行規則によって詳細に規定されています。

2.規制修正の理由
 そもそも業や施設設置の許可といった許認可とは、一般に禁止されていることを、一定の要件を満たすことにより、解除するという制度です。廃棄物の処理は、公衆衛生や環境保全の観点から非常に重要な業務であるため、都道府県知事、市町村長の許可制が法定化されています。従って、契約の相手側は、廃棄物処理業を営むために必要となる能力・設備を有している者として許可を得た業者に限られることになります。これが『相手方選択の自由』の規制修正の理由です。
 廃棄物処理法において、委託契約について『相手方選択の自由』以外にも上記のような規制修正を加えているのは、許可制をとってもなお、不法投棄や不適正処理などの事件が頻発しているからであるといえます。たとえば、価格のある程度の制限や三面契約の禁止は、適正処理を実施するために不可欠となる資金を確保することを目的としています。処理料金に満たない廉価な値段で収集運搬を請け負わざるえない場合や、中間搾取が行われると、不法投棄につながる危険性が増大することは誰の目にも明らかでしょう。また、書面によらない契約の場合、契約自体がなかったこととして不法行為が行われることも想定できます。こうした危険を未然に防止することが、委託契約の規制修正の理由であると考えられます。

【官報ウオッチング】
新しい情報はありません。

【行政情報ウオッチング】
環境省
中央環境審議会石綿健康被害判定部会石綿健康被害判定小委員会審査分科会の開催中止等について
中央環境審議会大気環境部会自動車排出ガス総合対策小委員会(第14回)の開催について
中央環境審議会循環型社会計画部会(第31回)の開催について
排水基準を定める省令等の一部を改正する省令について
地球温暖化対策の推進に関する法律施行令の一部を改正する政令案に対する意見の募集(パブリックコメント)について
環境技術実証モデル事業 小規模事業場向け有機性排水処理技術分野における実証対象技術の選定について
都市計画道路一般国道50号前橋笠懸道路に係る環境影響評価書に対する環境大臣意見の提出について
改正フロン回収・破壊法ブロック別説明会の開催について
海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律施行令に規定する有害液体物質等の扱いについての意見の募集(パブリックコメント)について

経済産業省
第3回バイオマス・アジアワークショップの開催について

【判例情報ウオッチング】
新しい情報はありません。

ISO14001
◆「環境法令管理室」に「10月30日から11月5日までに公布された主な環境法令一覧」をアップしました/2006.11.4
◆「環境法令管理室」に「10月30日から11月5日までに発表された改正予定法令一覧」をアップしました/2006.11.4