ニュージーランド移住記録「西蘭花通信」

人生の折り返しで選んだ地はニュージーランドでした

通貨のスーパー12

2002-04-13 | 移住まで
NZドル高ですね。NZドルはキウイとも呼ばれ、昨年8月以来、約8ヵ月ぶり高だそう。12日には1NZ㌦が44.45米㌣まで上昇しました。NZはオーストラリアとの経済的結びつきが強いので、キウイはオージーこと、豪ドルに連動しがちなのですが、今年に入ってからの上昇率はオージーの5%を抜く6%台と、南アフリカのランドと並んで世界主要通貨の中では最高位です。

自国通貨高というのは国内にいると特に実感もなく、あまりありがたみも湧かないことでしょう。しかし、外から見ると比較的景気が良く、そこそこ金利が高くて魅力的に映るものです。金利が高いということは借金する身には辛いことですが、預金など投資する立場であれば、より高い金利を得られる結構なこと。通常の状態であれば、通貨高はその通貨の人気のバロメーターとも言えましょう。日本はもちろん、ここ香港でも今はほとんどゼロ金利状態で預金金利はとっくに1%を下回っています。なのでキウイの強さと金利は眩しく見えます。

しかし、キウイ、オージー、ランドと今年に入って世界的に突出して強い通貨は、すべて南半球通貨です。これら3ヵ国はラグビーの世界最強リーグ、「スーパー12」開催国ではないですか!う~ん、通貨の「スーパー12」かぁ。ちなみに今年に入ってからのユーロと円は、多少の高下はあっても昨年末から全く変わっていません。南半球は資源国が多いので経済原則から言えば、「世界的に景気回復期待が高まる中、原油を始めとする資源需要の回復が見込まれての通貨高」と説明がつき、景気循環の一環といえます。

しかし、私見ですが、
「ひょっとしたら南半球という世界の桧舞台でほとんど脚光を浴びたことのない地域で、新しい価値の創造が始まっているのではないか」
ということを密かに考えています。アメリカを中心としたグローバル化の波が20世紀内に世界の主要国の隅々にまで行き渡り、共産政権の中国でさえも「グローバル化」を唱える中、その限界や構造疲労も顕在化してきています。その一例が97年以降のアジア金融危機で、ロシアも際どい思いをしました。最近では米国でも名門企業の破たんが相次ぐなど、きしみが出てきています。

世界に新しい価値観を教える師であった米国の後を第二の勢力が埋めていけるのであれば、世界がそれになびく可能性もあるでしょうが、実質ナンバー2のヨーロッパは多数の文化と政権の複合体で、世界の覇者になることよりも域内での調和を優先させているところです。それに、ことのほか個を重んじる彼らの文化的背景からいっても、世界的に「ヨーロッパ式」(そういう共通したものさえないわけですが)を普及させていこうとする可能性はかなり低いように思います。

ではどこが世界の覇者なのか?それがアメリカであることには変わりはなく、急速に台頭してきている中国が影響力を強めてくることは間違いないでしょう。世界を共通のルールで結ぶグローバル化そのものは、もう後戻りができないことでしょう。その端的な例がインターネットです。一度手にしてしたら、瞬時に地球の隅々まで結ぶことができる情報伝達手段を人類が手放すわけがありません。

その一方で、それぞれの経済、地域、文化、宗教等によるブロック分けが進むという、新しい傾向が強まるのではないかと漠然と考えています。あまりに進んだアメリカ主導のグローバル化への軌道修正という意味合いです。こうしたブロックの一つとして「南半球」という、非常に緩いつながりの中で新たな価値が生まれてくるような気がしています。

「スーパー12」も南アフリカがアパルトヘイトを廃止して、世界に認められてから実現した新しいものです。こうした結びつきがもっと増えていくことは考えられないことではないでしょう。3ヵ国がより近づいても目に見える経済効果はないかもしれませんが、経済効率の追求のためだけに結びつくのではないことも、これからの新しいテーマになってくるのではないかと考えています。

比較的新しい3ヵ国が先住民とそれぞれの方法での折り合いを模索しながら独立国としやってきた経験は、内戦が頻発する周辺国への力になるかもしれません。単純に気候が同じっていうのもいいじゃないですか(笑) 地球温暖化への取り組みで何か共通の課題が見えてこないとも限りません。南極を上にした世界地図というものを見たことがあります。本来の地図なら北半球がある上の方が、ずい分スカスカで頼りなく見えました。でも今では、
「そんな考え方があってもいいよね~」
という気がしてきています。


=============


「マヨネーズ」  
今回はちょっと堅い内容になってしまいましたが、NZに魅かれる理由の一つに、壮大な夢を見せてくれる大きな潜在性があります。現在の価値観でいけば、NZは先進国の中ではお世辞にも経済規模が大きいとは言えず、金融市場が世界で一番最初に開くのに、NZ市場がその日の世界の相場を左右したという話も聞いたことがありません。でも、もしもこうした価値観が変わっていったとしたら? 今のところは自分一人で見ている白昼夢ですが、何だかとっても可能性を感じます。

西蘭家は「移住しよう!」と決めた去年から早々とNZドルを買い始めたので、今のNZドル高でも、
「やっと買値を上回ってきたかな?」
というところですが、香港ドルで預金していたよりは若干利回りが良かったはずです。いずれにしても金額が金額なので、どうでもいい差なのですが(笑) カナダ政府発行のNZドル建てのキウイ債を買ってみました。利回りが6%以上あるし、NZドル高傾向で、ちょっと楽しみにしてます。


=============


2019年5月の後日談:
スーパーラグビーは1992年にスーパー6から始まり、このメルマガや移住して来た頃はスーパー12、その後スーパー14になり、個人的にはあの頃の粒よりの水準が一番面白く、南半球ラグビーの真骨頂だったと思っています。

その後、2016年にはスーパー18の大所帯にまでなり、チーム数が増えた分選手が分散し、大差のつく試合も増えてしまい、失敗は明らかでした。さすがに興行的にも厳しくなり、2021年からは再びスーパー14に。往年の興奮が戻ることを祈っています。