ニュージーランド移住記録「西蘭花通信」

人生の折り返しで選んだ地はニュージーランドでした

日本円切り下げ

2023-10-01 | 経済・家計・投資
インフルで苦しんだり弱ったりしているうちに9月が終わりました(笑)

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「円の切り下げが起きているのか!」
最近の日本や日本円の動向を遠くからぼんやりと眺めているうちに、ふとそんな考えが浮かんできました。通貨の切り下げは通常、通貨に固定相場を採用している国で自国通貨安に振れるよう為替レートを引き下げることなので、日本のように変動相場制を採用している国には無縁に思われる概念ですが、果たしてそうなのか。

1997年7月にタイのバーツを皮切りに始まったアジア通貨危機は、アジア通貨の暴落を引き起こし、各国は通貨切り下げを余儀なくされました。きっかけはヘッジファンドの空売り攻勢だったものの、立ち向かう術はなく売りが売りを呼ぶ展開になりました。

当時のアジアで厳格な米ドルとのペッグ制(自国通貨の相場を米ドルと連動させる固定相場制)を採用していたのは香港だけで、他のアジア諸国は緩いペッグ制を採用しつつ、90年代の高度成長が基軸通貨とのシンクロを下支えしてきました。しかし、成長に陰りが見え始め固定の水準が正当化されなくなるや、その隙を突かれたのです。

今の日本もそんな状況に似ている気がします。日本円は変動相場なので自国経済や他国との金利格差を反映して、上にも下にも時々刻々と動いていきます。なので不意を突かれ、ある日突然朝起きたら風景がか変わっていたという可能性は限られるとしても、経済状況を反映してこのままジリジリと円安が進んでも買い向かう勢力がなければ、実質的な切り下げと変わらないのではないでしょうか。

9月に国際決済銀行(BIS)が発表した8月の円の実質実効為替レート(2020年100とする)は73.19と過去最低になりました。実質実効レートとは、ある通貨の価値を他通貨との相対評価で示したもので、為替だけでなく物価変動や貿易量などを加重平均で算出する「通貨の実力」と言われるもの。NZのように経済規模が小さく貿易相手国が限られる国では、非常に重視されるレートです。

円の実力が過去最低を更新したその過去とは、1970年8月。1962年生まれの私がわずか8歳だったのかと思うとクラっとする53年ぶり。BISは実質実効レートを約60ヵ国/地域以上で使用されている通貨を基に算出しているので、日本円は米ドルだけでなく他通貨に対しても全面的に売られ、減価しているといえます。60数か国となれば経済先進国ばかりでなく、発展途上国/地域も多数含まれ、その比率は4割に迫ります。

途上国と言うと「貧しい国、遅れた国」という根強いイメージがあるかと思いますが、イメージとは裏腹にそうした国々の人も大挙して日本を訪れ、北海道から九州まで新幹線を乗り倒し、旅行三昧、「安い、安い」と食べ歩き三昧に買い物三昧、アクティビティー三昧を繰り広げているのが現実で、これは円の全面安に負うところでしょう。

今年5月にバンコクで会った若い女性は「毎年約2週間日本に遊びに行くのを楽しみにしている」そうです。仕事柄タイの平均よりは所得がありそうですが、富裕層という訳でもなく働く独身女性でした。この逆が毎年できる若い日本人が全体の何%いることか。円の実力が低下しているゆえに、海外のどこへ行っても割高感があることでしょう。それ以前に、2週間の休みをまとめてとることさえ難しそうです。

1970年以来の円安となれば、1985年のプラザ合意での米ドルの切り下げ、合意参加国通貨の切り上げも、日本円に限っては巻き戻されているということなのでしょうか。1984年に日本を出て日々強くなる円を肌身で感じ、目の色を変えて買い物をする日本人観光客の姿を見てきた身には、同じことが今、訪日する外国人のインバウンド消費で起きているというのは容易に想像できます。まさに為替のマジックです。

過去最低の実力となった円がここで反転する理由は見当たらず、海外との金利格差、賃金格差、インフレ格差?!が早々に是正される可能性も低そうです。過去には円安となれば製造業の輸出ドライブで恩恵を受けることもできましたが、せっせと海外に生産拠点を移したことでその恩恵もかなり剥落してしまいました。今手っ取り早く得られる恩恵となれば、サービス輸出であるインバウンド消費をおいてほかにないのでは。

大阪のカジノ主体のIR構想はその象徴に感じます。外国人がカネを落としていく大人のディズニーランドを造れば、有効な外貨獲得手段になります。さらに全国津々浦々に新幹線を通し、世界的な観光ブームに乗る外国人に全国をくまなく回ってもらえば、都市部だけでなく地方にもカネが落ち、雇用や消費が発生します。

これには課題もあります。観光関連などサービス業は製造業などに比べ、往々にして雇用形態が流動的で(季節性があるなど)賃金が安いのも特徴です。またコロナの反動も一因になっている世界的なオーバーツーリズム問題も深刻です。観光客の数にインフラが追いつかず、追いついた頃にはブームが一巡しているリスクもあります。そして何よりも、過去最弱になっても着地点が見えてこない円安が最大の問題でしょう。


『1%の金利が広告になる世界
しかも税引後は0.79%』
と、出張中の息子が送ってきた写真

世界的なインフレに各国があえぎ
つつも高金利を受け入れる中、日
本のねじれの継続は衝撃的で、い
つ、どこで、どう修正されるのか


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編集後記「マヨネーズ」 
自分で字数に限りをつけているのでかなり尻切れトンボですが、とりあえず雑感更新。



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