limited express NANKI-1号の独り言

折々の話題や国内外の出来事・自身の過去について、語り綴ります。
たまに、写真も掲載中。本日、天気晴朗ナレドモ波高シ

New Mr DB ⑧

2018年12月16日 14時41分06秒 | 日記
東京都八王子、ここに1軒の小さな法律事務所がある。¨AD法律事務所¨の社長の姉の事務所だった。首都高での¨事故¨、ハッキング、などの情報は、全て把握していた。勿論、¨AD事務所¨の惨状も知り得ていた。姉は携帯で話し込んでいた。ミスターJの顧問弁護団、U事務所の社長が相手だった。「ウチの馬鹿が、とんだご迷惑おかけしました。申し訳ございません!」彼女は必死になって詫びを入れていた。「所で、ミスターJはどちらに?まだ来られて居ないのですか?では、部下の方々への非礼をお詫びしたいのですが、連絡先は?左様でございますか。大変失礼ですが、ウチの馬鹿は何をしようとしているのですか?R弁護士!あのRさんのお子さんですか?!ええ、聞いております。今、治療中とか。なんですって!治療薬の輸送車を襲ったんですか?!それとミスターJの¨司令部¨へのハッキングですって?!ああ・・・、何とお詫びをすればいいのか・・・、馬鹿の不始末は私の監督不行き届きです!はい、¨連合艦隊¨を編成されるのですね。構いません!この際、徹底的に思い知らせてやって下さい!私も参加致します。内部事情は全てお話します!覚悟は出来ております!遠慮なさらずに叩いて下さい!この機会に私の手で再建させます。はい、では明日にでもお伺いします。失礼致します」彼女は電話を終えるとため息をついた。「Rさんとの件、どう説明しようかしら?隠しだてにする訳にはいかないし・・・元は馬鹿の誤解から始まった¨対立関係¨なんだけど、親父が揉み消した¨グレーゾーン¨を知っているのは、ミスターJなのよね。今更、ミスターJにすがる訳にも行かないし・・・、どうしようかしら?」彼女は頭を抱えた。「いや、そう深刻になる必要性は無い。この際、1からやり直す覚悟があるなら、手を貸そう!」以外な言葉が飛んできて、彼女は固まった。「ミスターJ、いつの間に・・・」彼女は絶句した。「いましがた着いたばかりだ。話は聞き及んでいるだろう?社長も無茶苦茶をしたものだ。だが、丁度いい機会でもある。¨経営権¨を取り戻し、まっとうな事務所に再建する意思があるなら、私と部下は喜んで手を貸そうじゃないか!」「それは勿論です。出来るならば、そうしたい!しかし・・・」「時、既に遅しかね?私はそうは思わん!貴方がお父上の遺志を継がれる心があるなら、まだチャンスはある!」ミスターJは断言した。「ともかく、お座り下さい。全てはRさんとの¨確執¨から始まった¨誤解¨に端を発した話です。長い話になりますので、順を追ってお話しなくてはなりません」彼女は、お茶を淹れるとミスターJと改めて対峙した。

時間を10数年間巻き戻して、まだ¨AD事務所¨が街の小さな事務所に過ぎなかった頃、先代の社長とR氏は共同で事務所の運営に当たっていた。所帯は小さかったが、大手に負けない地力を持つ有力な弁護士事務所だった。姉弟共に大学の法学部を出て、司法試験に合格。司法修習生として、都内の事務所に在籍。R氏の娘も法学部を目指して勉強中。全ては順調に見えた。だが、突如として事態は暗転する。弟が交通事故を起こしたのだ。相手は大物代議士。しかも、ある贈収賄事件で東京地検に目を付けられている人物だった。過失は相手方が不利だったが、¨政治的圧力¨で弟の過失割合を引き上げて、謝罪を迫った。こうした理不尽に黙っている2人ではない。先代とR氏は、ミスターJに協力を依頼した。弁護士仲間も¨連合艦隊¨を結成して対抗した。裁判にもつれ込んだ¨事件¨は、苦しみながらも勝利を勝ち取った。しかし、代償が無かった訳では無い。弟が司法修習生として勤務していた事務所をクビになったのだ。如何に相手がワルでも、代議士である。所属政党からの圧力は凄まじいものがあり、対価として弟のクビが要求されたのだ。将来を嘱望されていた弟は、希望を失った。自棄になり酒に溺れ、今度は暴力団と揉め事を起こした。先代は揉み消しを図ったが、R氏は反対した。「彼の将来の為にならない」と言って、法的解決の道を模索した。それが弟の感情を逆撫でした。「親父の努力を無にするのか?!」先代と弟とR氏の間に溝が生まれた。次第に溝は拡大して、対立に発展した。そうこうしているうちに、先代が病に倒れた。後を誰が継ぐか?で骨肉の争いが始まった。姉はR氏と協力して事務所の存続を模索したが、弟は先代を動かして「相続権」を一手に握った。先代の死後、弟が真っ先に手を着けたのは、R氏と姉の¨追放¨だった。弟は、その後拡大路線を取り「過払い返済金や債務超過処理」で利益を挙げてのしあがった。姉とR氏は都内での仕事を邪魔され、八王子と横浜へ移っていった。だが、R氏への執拗な攻撃は止まず、一時事務所を閉じるハメに陥った。R女史が事務所を再開したものの、身辺には常に¨監視¨の網が張り巡らされていた。そこに、今回の「MRSA」が絡んだ。弟は絶好の機会とばかりに魔手を繰り出した。R女史を狙い、あらゆる手を使った。その結果、¨スナイパー¨は襲撃され、¨司令部¨もハッキングされたのだった。

「なるほど、全ては“あの事件”が発端だと言うのか。親父さんが“もみ消した”結果、弟と姉さんとR氏に溝を・・・」ミスターJは遠い目をして聞いていた。「父の唯一の汚点であり失敗。それこそが“全ての始まり”なんです。弟を止めるには“AD事務所”を取り潰すしかありません!これだけ見境なく悪に手を染めた以上、酌量の余地はありません!」彼女の手は怒りに震えていた。「襲撃を受けた車の所有者は、予備役とは言え“海兵隊の中佐”だ。米軍を相手にするには、相応の覚悟が無くてはならん!だが、私の元で働く部下でもある。襲撃についてはU事務所に穏便に処理してもらうしかあるまい。それと、私の“司令部”へのハッキングだが、部下達が黙って引き下がる訳がない。それ相応の報いは受けているだろう。最も、私に言わせれば、些か“手緩い”報いだが・・・」「ミスターJ、お顔に泥を塗られていられるのに、そのような事を甘受されるのですか?」「いいや、黙って居るつもりは毛頭ない!だから、姉さん貴方を訪ねた。部下達では事の背景は掴めないだろう。当時を知る貴方に子細を聞いてから、反撃を開始するつもりだった。闇雲に手を出さないためにな!」「では、近々には・・・」「対応を決めて“AD事務所”に対して反攻に出る。U事務所と“連合艦隊”の意向も聞いてな!」「R女史は助かるのでしょうか?」「多少の時間は掛かるが、快方へ向かって行くだろう。私が人を殺めたりしないのは知っているだろう?犠牲者は必ず救済する。この信念は部下達にも徹底している」「“連合艦隊”には私も参加します。当事者として全てを語り弟と対峙する覚悟です!」「姉さん、1つ頼みがある。弟に“海兵隊の中佐”襲撃の件を耳打ちして置いて欲しい。“大魚に噛みついた”事実を知らしめるためにな!」「弟は恐怖にかられます!何をするか予測できません!」「それが狙いだ!新たに動いてくれれば、次の手が打ちやすくなる。当然、ハッキングの件もそれとなく伝えてくれ。更なる報いを“倍返し”するとな!」「弟が受けるダメージは決定的になりますね」「そうすれば、姉さんにすがるしかなくなる。少しは言う事も聞く様になるだろう?そこに隙が生じる。貴方はその隙を突いて事務所を掌握してしまえばいい。後は我々が始末を引き受ける。どうだ?乗って見る気は無いかね?」「否とは言いません!父も許してくれるでしょう」「その言葉を待っていた。まずは明日、U事務所で全てを告白して楽になりなさい。弟を焚きつけたら、U事務所で見聞きしていればよい。私が本気で立ち向かったらどうなるか?しかと目に焼き付けて置きなさい。遅くまで済まなかった。私は“司令部”へ向かうよ」「ミスターJ、宜しくお願い致します」「まだ、早い!全てが終わってからだ。ここへ立ち寄った事は伏せて置いてくれ」そう言うとミスターJは、事務所を後にした。遂に“本陣”が動き出したのだ。

「DB!遺言は何だ!」ノイズ交じりの声が地下空間で誰何する。最早、絶体絶命の状況にあるDBは声も出ない。「レーザー出力MAXマデ上昇!一斉射撃マデ30秒!」合成ボイスが最終通告を突きつけた。「たっ・・・たす・・・け・・・て・・・」震えながらDBは何とか声を振り絞る。「今日はここまでだ!DB!もう一度だけチャンスを与える。絶対服従!いいか、これこそが生き抜く道だ!忘れるな!」声が途絶えた。恐る恐る目を開けるとレーザーは消えていた。「ひぃー・・・・!」恐怖の声を上げてDBはベッドに潜り込んだ。体の震えは止まらなかった。「これで“恐怖心”は根付いただろう。レーザーで言う事は聞くはずだ」事業所長は眠そうに言った。「お疲れさまでした。どうぞ社宅でお休みください!」「そうしよう、今日は午後から出社にしてくれ。もう直ぐ夜明けだ」「はい、後はシステムに監視させます。妙な挙動を感知した場合は、レーザーが襲い掛かります」「少しでもいい、分からせていくしかあるまい。どの道、出口は無いのだからな」「はい、こうやって意識を削ぎ落せば、ヤツの意思もグラつくでしょう」「そう願いたいモノだ!」事業所長はモニタールームを出ると、デスクの椅子に座り込んだ。「済まんが、コーヒーをくれ。さすがに眠くてたまらん!」「はい、只今ご用意します」徹夜明けは体に堪えた。「歳だな、昔は3~4日は平気だったのだが・・・」事業所長はゆっくりとコーヒーを飲んだ。

ミスターJは、都内で1泊して翌朝、横浜の“司令部”へ顔を出した。“司令部”では“車屋”と“スナイパー”がPCで何かを検索していた。リーダーはソファーで眠り、他のメンバーは、各自の部屋で死んだように眠っていた。ミスターJは、そっと2人に近づき、“司令部”を出る様に促した。眠っている者を起こすのが忍びなかったからだ。みんな全力を尽くして寝ているのだから。ミスターJは、¨車屋¨と¨スナイパー¨をホテルのカフェに招いた。熱いコーヒーをオーダーすると、本題を切り出した。「¨スナイパー¨、今回の襲撃をどう見る?」「運転手は素人でしょうが、¨ECM¨を操ったのはPC関係のプロでしょう。車のカメラの画像を見てみると、2台の内必ず1台は¨ECM¨でこちらを包み込んでます。余程の知識が無くては出来ない技ですよ」「目的は¨ドクター¨の抗生物質の略奪で間違いないか?」「ヤツらは、成田からずっと着けて来てました。¨空きスペース¨が出来るまで待ってから襲って来てます。成り行き次第でしたが、略奪の意図は明らかですね」「この件を米軍の捜査官に通報してあるのか?」「いえ、してません。もし、軍が介入するとなると、かなり厄介な事になりますからね。自由に飛び回る事は難しくなりますし、¨任務¨に影響が生じます」「それを承知で、敢えて通報してもらいたい!と言ったらどうする?」ミスターJは身を乗り出して誰何した。「いいんですか?相当にややこしい事になりますよ!」¨スナイパー¨は念を押す。「¨AD事務所¨は、こちらが何処に居るかを掴んだ!攻撃を防ぐには、助っ人が欠かせない。米軍に鉄のタガを敷いてもらわなくては、防戦も覚束ないのだ。その為にはJAGに手を貸してもらい、¨軍事法廷¨で¨AD事務所¨と対峙しなくてはならん。私は、今回に限って¨情け¨を捨てるつもりだ。すなわち、¨AD事務所¨を潰す覚悟でいる!」「本気ですか?タダでは済みませんよ!¨軍事法廷¨では、日本の法律は通じません。下手をすれば、禁固100年だって平然と食らいますよ」「それが目的だ。相手のボスを封じ込めるにはそれしかない!」ミスターJは本気で応じた。「分かりました。どの道、横須賀の補給基地へ行かなくてはなりません。ついでに法務部へ訴状を提出して¨保護¨を要請しましょう。何処が対応するかはJAGの本部が決めますが、捜査は厳格を極めますよ。¨AD事務所¨も生半可な事では済みません」「それでいい。とにかく、あそこの¨首根っこ¨を抑え込めればな。横須賀へは何をしに行くんだ?」「電子機器の損害が思いの外、重症でしてトランジスターを探しに行くつもりでした。何しろ¨ゲルマニウムトランジスター¨ですからね!アメリカ製以外換えが無いんです」「それは災難だった。では、提訴の件は宜しく頼む」「¨車屋¨、修理にかかった見積書を用意しておいてくれ!じゃあ行って来ます!」コーヒーを飲み干すと¨スナイパー¨は地下駐車場へ向かった。「¨車屋¨、今回の損害の具体的な状況はどう見る?」ミスターJが聞く。「車でしたから被害も限定的でしたが、これを¨司令部¨が食らったとしたら、壊滅的な被害になっていたと思います。PCには、撹乱波に対する防御機能はありません。シャットダウンされていれば免れますが、電子機器全般は使用不能にされる恐れは否定できません」「うむ、次のターゲットは間違いなく¨司令部¨だろう。何か対策はあるか?」「危険性はありますが、雑電波でシールドを張るぐらいしか無いでしょう。相手は、ここに¨司令部¨があると知り得ているならば、攻撃して来るでしょうし、手持ちの装備品で出来るとすれば、シールドしかありません」「シールドを張るとすると、どうやって察知する?」「電波の周波数に大きな変動があれば、ある程度は察知できます。ただ、街中の電波変動も拾ってしまうので、設定値を限定しなくてはなりません。幸い、¨スナイパー¨が襲われた際に向こうが使った周波数は割れています。前後に幅を持たせれば盾の代わりにはなるでしょう」「作業は手間取るのか?」「N坊とF坊が手伝ってくれれば、2時間もあれば設置は出来ます。後は¨シリウス¨に検証してもらってネットワークの設定値をいじれば完了です!」「そうか、皆が起きれば直ぐにかかれるのだな。よし、分かった。お前さんは、見積書を作成したら必要な機材を揃えて置け。そして暫く休め。修理で徹夜だろう?タフなのは分かるが、親父さんに叱られるのはマズイ!」「分かりました。まず、リーダーを起こして来ます。ミスターJもお話があるでしょう。ここへ降りて来る様に言って置きますよ」「済まんが、頼む。私はコーヒーのおかわりをして待っておるとしよう」疲れも見せずに¨車屋¨はエレベーターへ向かった。きっかり10分後にリーダーはやって来た。「申し訳ありません、ミスターJ。寝過ごしました」リーダーは恐縮しきりだった。「気にするな。深夜まで¨侵入¨を指揮していたのだろう?無理は言わん。所で成果は出たのか?」「残念ですが、めぼしい成果は出ませんでした。これから再検証にかかる予定です」「そうか、めぼしい記録は出なかったのだな?やはりそう来たか!真相は闇に埋めて隠し通す腹づもりと、子に類が及ばぬ様に墓へ持って行ったと言う事か!」「ミスターJ、どう言う事でしょう?」リーダーは首を傾げる。「R女史と¨AD事務所¨を結ぶ線は、深く埋めてあるのだ!尋常な手では掘り返せないのだよ。私は昨夜、真相を聞いて来た。皆が揃ったら話そう!Z病院には誰が貼り付いている?」「ミセスAと¨ドクター¨です」「¨スナイパー¨は横須賀へ向かった。JAGへ提訴させるためだ。全員に伝えるのは、昼過ぎだな。Z病院とは携帯で繋げばいい。まずは、ひと休みしよう。リーダー、お前さんも寝不足だろう?¨司令部¨で休め。私は、U事務所、¨連合艦隊¨と打ち合わせを済ませて置く。これからの反転攻勢について法的に問題点があるか?を確認しなければならん」「では、¨AD事務所¨は・・・」「壊滅させる。根こそぎねじ切ってくれよう!」ミスターJは憤怒の表情を露にした。全てを焼き付くす巨大な火の玉の如く。

「まだか?!」¨AD事務所¨の社長の語気が荒い。「ダメです。手掛かりさえありません」「この忌々しゲームは、いつになったら消せるんだ?!!」「消せるどころか、しわじわとサーバーを侵してCPUに迫ってます。サーバーを守るには、電源を遮断する以外にありません!」「データー消滅を覚悟でか?!!」サイバー部隊の指揮官は無言で頷いた。「クソー!!やむを得ん!やれ!!」サーバーの電源は落とされた。だが、以外にもサーバーは自ら電源を入れ直し、立ち上がった!ゲームは再び始まった。しかも、レベルは高難度に移行して¨身代金¨は5000万ドルにはね上がって居るではないか!「なんじゃこりゃ?あくまでもゲームは続くのか?」社長は呆れてしょげた。「これでは¨いたちごっこ¨です。¨身代金¨を払って解除コードをてに入れましょう!」「誰に払うんだ?当座の資金は借りるにしても、全体でいくらになる?」「システム全体にかかるとなると、億単位に…」「そんなカネが何処にある?ゲームをクリアすればタダだろうが!早急にクリアしろ!」「社長!お姉さんから電話です」「今度は何だ?姉貴は何と言ってる?」「火急の知らせだそうです」「ちっ!」社長は舌打ちをすると「姉貴、何事だい?」「愚か者!三宅坂で何をしでかしたの?よりによって¨米軍海兵隊の中佐¨を襲うとは、どういうつもりなの?!」電話が壊れんばかりの大声で怒鳴られる。「かっ海兵隊!?中佐?!どういう事だ!」「その中佐は、既に¨米軍犯罪捜査機関¨JAGへ提訴の手続きをしてるわよ!あんた¨軍事法廷¨に召喚される覚悟はあるの?!言っときますけど、こっちの法律は通じないのよ!正当な理由も無く軍属に手を出したなら、米軍は情け容赦はしないわよ!このスカポンタン!!」社長は青くなって震え出した。「あっ姉貴!ミスターJに助け・・・」「お馬鹿!同じ時刻にハッキングした相手が誰だと思ってるの?!よりによって、ミスターJの¨司令部¨に攻撃を仕掛けるとは、どういう了見な訳?ミスターJはカンカンよ!!お馬鹿の¨尻拭い¨なんて頼める訳が無いでしょう!」青ざめた顔は蒼白に変わった。「姉貴、どうすれば…」「もう打つ手は無いの!その内ミスターJとJAGから¨素敵なプレゼント¨が届くでしょう!首を洗って待っているといいわ!当然、弁護士会からも訴追を受けるだろうし、追放されるわね!あたしも黙っては居ないわよ!¨連合艦隊¨に参加して¨有りのまま¨を話すつもり。今の内に身辺整理でもしてなさい。警告はしたわよ!後は自分で切り抜けなさい!アンタもこれまでね。これからは、縁を切らせてもらう。じゃあ、せいぜい余生を楽しみなさい!」姉は絶縁を告げて電話を切った。「JAGだと?¨軍事法廷¨?何故そうなるんだ?」手から受話器が転げ落ちた。「社長、弁護士達が、事務所を開けたいと言ってます!どうします?」「システムはどうなってる?」「今まで無事だった無線LANもゲームに乗っ取られました。PCもタブレットもゲームに侵されてます。サーバーにはアクセス不能。事務所の機能は停止状態です」「復旧の見込みは?」「メドが経ちません!何をどうすればいいのか?指示を出して下さい!」「まず、事務所は開けろ。ただ、PCタブレットの使用は差し止めだ。システムの方は、ネットワークを切断して電源を切ってセーフモードで立ち上げて、プログラムからゲームを削除しろ。そしてシステム復元をやってみろ。サーバーの方は隔離するしかあるまい。PCが正常になったら、お蔵入りにしてある旧サーバーを引っ張り出して、ネットワークを組み直してみろ。正し、外部とは回線は繋ぐな。俺は姉貴に会いに行って来る。この危機を乗り切るには姉貴の力がいる。後は任せる」殆ど機械的な指示を与えると、社長はフラフラと事務所を出て、車に乗った。宛がある訳では無かった。ただ、逃げたかったのだ。自宅マンションへ着くと部屋へ逃げ込み、バーボンを瓶ごと煽る。だが、いくら呑んでも酔いは回らなかった。暫くすると携帯が震えた。「社長、今、JAGのケイコ·オブライエン少佐から連絡が入りました。明日、事務所に来られるそうです!如何されますか?」「ほっとけ!JAGだと?!ヤツらに何が出来る?勝手に捜査しようとしても、証拠がなけりゃ何とでもなる。それより、システムはどうなった?」「社長の言われた通りやって見ましたが、効果はありません!対処不能です!」「クソ!!こうなったら最後の手段を取るしかあるまい。撹乱波発生機を用意しろ!俺の車へ乗せて¨特攻¨を仕掛ける!U事務所とミスターJの¨司令部¨を襲撃してPCシステムを破壊する!証拠を消しちまえば、どうにでもなる。俺は直ぐに戻る。準備して置け!」「はっ!」携帯を切ると「ミスターJ、姉貴、悪いが手を引いてもらうぜ!今度はそっちが泣く番だ!」と言ってバーボンを煽り、憤怒の表情を浮かべた。だが、この¨特攻¨が彼の息の根を止める事になるとは、想像すらしていなかった。

「今、話した通り¨AD事務所¨とR家には、実に根深い因縁がある。最早、弟の専横は目に余る非道な行いだ!私は今回、¨情け¨を捨てて壊滅的なダメージを与える!Kの陰謀を阻止してDBを封じ込めるには、遠回りをしなくてはならんが、誰か異議のある者は居るか?」ミスターJは静かに問いかけた。誰もがため息を漏らした。「異議などありません!この際、徹底的にやりましょう!」リーダーが代表して答えた。「目には目を、悪逆非道には鉄槌を!わしなら¨AD事務所¨にニトロを投げ込む所じゃ!ミスターJ、わしらの分も上乗せしとけよ!」Z病院の¨ドクター¨の鼻息も荒い。「JAGの捜査官は、ワシントンを出ました!後、・・・19時間で到着します。クレニック中佐とハワード少佐です。¨司令部¨の周囲には、1個小隊が秘かに展開してます。¨AD事務所¨が仕掛ける隙はありません!」¨スナイパー¨が報告をする。「では、行くぞ!みんな覚悟はいいのか?」ミスターJは改めて念を押す。拍手が¨司令部¨を包んだ。全員が賛成を表明したのだ。「では、まず¨司令部¨とU事務所の防御を固める必要性がある!N、F、¨車屋¨の案を早速実行に移せ!U事務所にも同じように¨仕掛け¨を施す必要がある!」「その点については賛成ですが、もう一歩踏み込んだ策を用い様と思います」「反撃出来る可能性がありますので」「どう言う事だ?」ミスターJは不思議そうに聞く。「相手が使った周波数は割れてます」「シールドと同時に撹乱波をパラボラアンテナで跳ね返してやれば、文字通り¨倍返し¨に出来そうです」「理屈はそうだろうが、上手く行くのか?」「ミスターJ、窓から外を見て下さい!」N坊が言う。「“司令部”を狙うなら、河口の橋からピンポイントで狙うしかないんです。交差点や海が人口の堀を形成してます。つまり、橋からの攻撃にのみ対処すればいいんです!」F坊が補足する。「U事務所はどうする?」「BS波、CS波を受信するパラボラアンテナがあれば、シールドで受け止めた撹乱波を逃がしてやればいいんです。アースと同じ原理ですよ!」「ふむ、U事務所の電器屋に説明すれば分かるのだな?」「ええ、何なら俺達が電話で直接指示を出しても構いません」「よし、とにかく工事にかかれ!」「こっちは、“車屋”とN坊で出来ます。俺は、U事務所の電器屋へ説明方々指示を出しますよ!」既にF坊は受話器を取り上げている。「“シリウス”、“AD事務所”のサーバーだが、データーは消滅しているのか?」「いえ、フォルダ単位で圧縮されてまだ残っています。それが何か?」「U事務所の別のサーバーへデーターを転送できないか?」「転送そのものは可能です。圧縮によってデーター量は軽くなってます。2~3時間あれば出来ます。ただ、“解凍して自己展開を終えるまで”は、サーバーは使えなくなります」「どれくらいだ?」「データーの量にもよりますが、24~36時間はかかるでしょう。後は、検証と接続設定が必要になります」「送り付けた“ゲーム”を突破される可能性は?」「“ゲーム”そのものはシンプルですが、不確定要素はあらゆる場面で現れます。突破しようと足掻けば“身代金”が跳ね上がりますし、難易度もどんどん上がります。仮に突破される事を考慮するなら、そろそろ次の“ゲーム”を進呈する時期かも知れません」「どんなヤツがある?」「スター・ウォーズゲームなら“帝国の逆襲”と“ジェダイの復讐”バージョンが残ってますよ。2つを送り付ければ、永遠に“ゲーム”からは抜けられません!」“シリウス”が不敵な笑みを浮かべる。「では、まずデーターの転送からかかれ!済み次第、“ゲーム”を進呈してやれ!向こうのPCを使い物にならない様にしろ!転送先のアドレスはこれだ!」ミスターJはメモを手渡した。「では、高速回線を開いて、転送を開始します!」“シリウス”はPCを操り始めた。「さて、リーダー。JAGへ渡す情報だが、“スナイパー”の車からの情報+我々が搔き集めた情報の他に何かあるか?」「今の所はそれだけです。“AD事務所”へ“侵入”した際に集めた情報の精査は終わっていませんので、まだ+αは出るかも知れませんが・・・」「そちらは、我々2人でかかろう。出来る限りの情報を渡して、事を優位に運ばねばならん!今晩、“AD事務所”が仕掛けて来るのは、分かっている。ここで米軍に拘束されれば、ヤツらを壊滅させるのは容易だ!」そう言うとミスターJは、空いているPCに向かった。ついに“山は動いた”のだ。それも火口から多量の溶岩を噴き出している“怒れる山”である。飲み込まれた者は焼き尽くされるのみ。知らぬは“AD事務所”のみであった。

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