limited express NANKI-1号の独り言

折々の話題や国内外の出来事・自身の過去について、語り綴ります。
たまに、写真も掲載中。本日、天気晴朗ナレドモ波高シ

New Mr DB ⑦

2018年12月13日 10時39分21秒 | 日記
絶体絶命の危機だった。正体不明の2台の車に背後を取られた“スナイパー”の車は、右へ左へと蛇行運転を繰り返して、2台の車から逃れようとしていた。携帯電話が途切れたのは“ECM(電波妨害)”のせいだった。「ちくしょう!ECMとはな!ナビもレーダーも使い物にならん!」“スナイパー”は、必死に車を操りながら毒づいた。「どうやら、ベンツのようじゃな。500馬力は出せるハイパワー仕様じゃ。“スナイパー”、都心環状線へ逃げ込め!あそこなら、勝機はある!」“ドクター”はシートベルトをむしり取ると、後席へ転がり込んだ。「“ドクター”、何を始めるんだ?」「目潰しじゃよ。わしも、久方ぶりに燃えて来た!“全学連”の意地に賭けても2台を屠ってくれよう!」“ドクター”は、手荷物の中から薬品を取り出して、何やら調合を始めた。「都心環状線へ入るぞ!」“スナイパー”は、強引に乗り入れた。「ここからは、腕がモノを言う。ベンツの様なデカブツではパワーを持て余して、素早くは動けん!その点、こっちは敏捷性がある。後、5分持たせろ!そうすれば、向こうを屠る道具が出来る!」「何をする気だ?」「悪いが、ベンツにはスクラップになってもらう!三宅坂JCT当りがいいじゃろう」“ドクター”は2つの瓶を手に助手席へと戻った。2台のベンツは、“スナイパー”の車の背後を伺おうと、必死に追い上げて来る。「なんだい?その瓶は?」「即席火炎瓶とでも言って置くか。フロントガラスに叩きつければ、炎に包まれる仕掛けじゃ!三宅坂JCTの手前で、追い越し車線へ出て減速しろ!2台まとめて屠ってくれる!」“ドクター”は、窓を半分開けて準備に掛かる。JCTが迫った。「今じゃ!」“ドクター”の合図で“スナイパー”の車は追い越し車線へ移動して減速する。追って来た2台のベンツは、つんのめる様に走行車線を先行した。“ドクター”は窓を全開にすると、瓶を2台のフロントガラス目掛けて叩きつけた。爆発的な炎がベンツのフロントを包む。「急げ!巻き添えを食う前に脱出じゃ!」“スナイパー”の車は追い越し車線を全速力で駆け抜ける。炎に包まれたベンツは側壁に車体を擦り付けて減速を試みる。だが、パワーがある分簡単には止まらない。結局、追突事故を起こし、はじき出された1台が反対車線の側壁にぶち当たった。更にそこへ後続ベンツが突っ込む。炎はいつのまにか消えていた。「どうじゃ!“全学連”の意地で屠ったぞ!」「お見事ですよ。“ドクター”、いつも火炎瓶を持ち歩いているんですかい?」「わしが持っておるのは薬品じゃ!有り合わせの即席火炎瓶ぐらいは直ぐに作れる!勿論、単体では何の問題も無い代物だ!」「怪我人が出てもいいんですか?」「あの程度では、鞭打ちと擦り傷ぐらいしか出来ん!ベンツで骨折するなら余程運が悪いヤツだけじゃ!車体はスクラップになるが、人様は守る。それがベンツの使命じゃ」“ドクター”は“事故”について意に介す風は無い。「さて、本来の目的地へ向かうとするか!携帯も使える様になったらしい。“司令部”へ連絡を入れて置こう」“ドクター”は、“司令部”を呼び出した。「どいつもこいつも、ぶっ飛んだヤツが揃ってやがる!だが、こうでなくちゃ“任務”を遂行してる気分が出ない!」“スナイパー”気を取り直して、Z病院へのコースをひた走った。

「“スナイパー”の車のビーコンは?」「三宅坂JCTへ向かってます!依然状況は不明!」「首都高の事故・渋滞状況地図を表示して下さい。何かあれば推測は出来るかも知れない」リーダーが言うと「三宅坂JCTで事故発生!“スナイパー”の車のビーコンは・・・、今、確認出来ました!何があったのかしら?」PCで追跡していたミセスAが不思議そうに言う。“車屋”とN坊とF坊も空いているPCにかじりつく。そこへ携帯が鳴った。「もしもし、今、オープンマイクに切り換えます。どうしました?三宅坂で何があったんです?」リーダーが誰何すると「屠ったぞ!忌々しいベンツ2台をスクラップにしてやった!」“ドクター”が誇らしげに言う。「ベンツをスクラップ?!どうやったんです?」リーダーが目を剥いた。「即席火炎瓶をお見舞いしてやった!わしらは、Z病院へ向かう!」「携帯が繋がらなかった原因は?」「ECMのせいじゃ。指向性の高い撹乱波を浴びせられた。それで、一時電子機器がダウンしたまでじゃ。相手のベンツのナンバーは、品川389“と”の1と2じゃ。陸運支局のデーターベースから所有者を割り出せ!」N坊とF坊が無言で頷いて直ぐに調査を開始する。「なるべく急いでZ病院へ行く。これ以上の邪魔が入らん内にな!」「分かりました。くれぐれも油断しないで下さい!」リーダーが返すと通話は切れた。「リーダー、画像解析の結果、“スナイパー”の車を追っていたベンツのナンバーは間違いない様です!」“シリウス”が報告する。「“スナイパー”の車のナンバーは映っているか?」「ええ、割とはっきりと読み取れます。マズイですね・・・」「その点は心配いりません。“スナイパー”の車のナンバーは“フェイク”です」“車屋”が自信ありげに言う。「どういう事だ?」「“スナイパー”は予備役とは言え、軍属です。本来は米軍ナンバーを付けていますが、今回の“任務”に備えて“なんちゃってナンバー”に取り換えてあります。勿論、検問に引っかかればイチコロですが、陸運支局のデーターベースに照会されても、何も出ては来ません!ネットで検索すれば、いくらでも手に入る代物です!」「“シリウス”どうだ?」リーダーが聞くと「フハハハハ!見事に騙されました。こんなナンバーは正規にはありません」リーダーも画像を見るとふきだした。「ここまで用心しているなら、問題はあるまい。じゃあ、正規のナンバーに戻せば・・・」「ええ、取り換えれば後は辿れません」“車屋”も笑いながら言う。「こっちも分かったぞ!2台のベンツの持ち主は“AD事務所”ですよ!」F坊が報告する。「新車登録は半年前、手痛い結末になりましたね!」N坊も言う。「“AD事務所”か!何故ヤツらが我々を付け狙う必要がある?!」リーダーが宙を仰ぐ。その時、無機質な電子音が鳴り響いた。「今度は何だ?!」「“侵入者”です!」“シリウス”が叫ぶ。「どこのどいつか知らないが、簡単には突破できないぞ!さあ、どこまで入り込めるかな?」「第2ハードルで食い止めた!ざまーみろ!今頃、“スター・ウォーズゲーム”にハマっただろう!」「サーバーのデーターは人質にされたな!」N坊とF坊が言う。「おい、“スター・ウォーズゲーム”って例のヤツか?」「ああ、ゲームをクリアするか“身代金”を払うかのいずれかをしないと、永遠にゲームから抜けられない!」「しかも、ジワジワとサーバーを乗っ取られる!最終的には、CPUまで操られてPCもサーバーもオシマイになるヤツだよ!」N坊とF坊が鼻で笑う。「いつの間にリンクを貼り付けたんだ?」「T女史が帰った後、直ぐに細工して置いた。誰が“侵入者”かは知らないが、今頃ゲームは始まってるし、サーバーも半分は占拠されたハズだ。足掻けば足掻くほどに高額な“身代金”が待ってる。明日になればネットワーク全体が侵される!」「PCの電源を入れた途端に、ゲームスタート。仕事には使えないよ!」N坊とF坊は悠然と言い放った。「“侵入者”を撃退したのはいいが、誰かは特定出来ないか?」「痕跡は残ってますから、後を辿ればどこから“侵入”を試みたかは分かります。ただ、漠然と“この当り”までですね。深入りするとこっちの足跡も残りますから返って危険になります」そう言いつつ“シリウス”はPCを操って痕跡を追っている。「分かりました。海外の3つサーバーを経由して都内から“侵入”を試みています!」「だとすると、“AD事務所”か?!」「確証はありませんが、そう判断すれば辻褄は合います。こっちを混乱させるのが目的でしょう」「念のため、高速回線を遮断して置け!」「了解、回線遮断しました。ホテルの回線のみ有効です」“シリウス”が報告する。「“AD事務所”とR女史と間に何があったんだろう?ここまで介入して来ると言う事は“余程R女史に回復されては困る事情”があるとしか考えられない」リーダーが宙を見る。「そうね、過剰過ぎる反応だわ。もしかすると、彼女ではなく彼女の亡くなった父親との間に何か確執があったのかしら?」ミセスAも考えている。「それと、我々の情報がどこから漏洩したのか?も気になります」“シリウス”も手を止めて考えている。「どうやら、“サイバー部隊”が陰で動いているとしか思えん!我々に関する情報はT女史の事務所から漏洩したとしか思えない。知っているは、あそこしか無いのだから。後はR女史に対する怨恨。この2点がセットにならないと、襲われた理由の説明が付かない!」リーダーはソファーに腰を下ろすと言い放った。「仮にそうだとすると、怨恨とは何ですかね?」「R女史に蘇ってもらっては困る事情か・・・、何なんだ?」N坊とF坊も思いを巡らせる。不意に携帯が鳴りだした。「T女史からだ。オープンマイクに切り換えよう。もしもし、T先生、どうされました?」「夜分にすみません。ウチの事務所がハッキングされました。そちらは異常ありませんか?」T女史の声が震えている。「Z病院へ向かう車が“AD事務所”のベンツ2台に襲撃されました。こちらのシステムにも“侵入”しようとしましたが、いずれも撃退した所です。先生、“AD事務所”とR女史との間に何があったんです?」「分かりません。でも、そちらにも被害が及んだのですね?」「まだ、損害は軽微ですが、今後の我々の活動に影響が出るのは必至です!」「“AD事務所”のサイバー部隊は、必ず攻撃を仕掛けて来るでしょう。ウチの事務所も対策に追われています。何か手はありませんか?」「“AD事務所”にはノシを付けてお返しをしてあります。ベンツ2台は大破、システムには“スター・ウォーズゲーム”を送り付けました。PCシステムは使いモノにならないでしょう。今の内にセキュリテイを強化される事です!」リーダーは進言した。「PCシステムが使えないなら、時間を稼げますね。こちらも法的に対応が取れるか検討して見ます。ただ、R女史の件は私達にも見当が付きません。先代との間に何かあったのかも含めて再調査をしなくはならないでしょう」T女史も困惑を隠さない。「分かりました。“事故”の件も含めて法的処理はお任せします。我々も可能な限り動いて見ましょう」「ともかく、R女史の身辺警護、“事故”の後処理はお任せください。皆さんの情報に関しては、かなりの部分が漏洩してしまっています。くれぐれも注意を怠らないで下さい。恐らく、彼らは全力で襲い掛かって来るでしょう。必要なデーターを言いますので、FAXで送信して下さい」T女史は“事故”の詳細や“侵入”の痕跡について項目を挙げてデーターの提出を依頼して来た。「画像データーなどはどうします?」リーダーが尋ねると「通信回線は使えますか?当面、仮に復旧は出来ているので、これから言うアドレスに送って下さい」T女史はアドレスを指定して来た。“シリウス”が早速、データーを送り始めた。「順調に受信しています。送信し終えたら、直ぐに切断して下さい。PCのキャシュも削除して下さい。とにかく、厄介な連中です。私達も“応援”を依頼して対処します。繰り返しになりますが、必ず彼らは牙を剥いて来ます!用心してかかって下さい」T女史は気丈に声を出していたが、ショックは隠せなかった。「こちらは、更に防衛を強化します。外での活動にも充分に注意を払います。では、宜しくお願いします」リーダーが感謝をして通話は終わった。「“シリウス”、“AD事務所”に今から“侵入”する事は可能か?」リーダーが切り出した。「ドサクサに紛れて何を探すんです?」“シリウス”は否とは言わずに聞き返した。「R女史、並びに先代の父親に関する事だ」「今直ぐは無理です。“スター・ウォーズゲーム”が佳境を迎えるには、3~4時間はかかります。その頃になれば、混乱に乗じて乗り込む事は可能です」「N、F、R女史の自宅兼事務所に“侵入”する経路は決まっているか?」「ええ、かなり際どいですが、1ヵ所見つけてあります」「天窓から、垂直降下で入ります」「警備システムを誤魔化して、どの位動ける?」「約3時間」「それ以上となると難しい話になります」「よし、これから直ぐに出発準備だ!」「ちょ、ちょっと待って下さい!2時間は待たないと人通りが減りませんよ!」N坊とF坊が止めに入る。「他に立ち寄ってもらう場所がある!ミセスA、Z病院でのR女史の警護、お願い出来ますか?」「勿論!一家総出でやるわよ!」「と言う訳だ。N、F、ミセスAを送ってくれ!“スナイパー”の二の舞は避けねばならない!」「了解です!」2人は合唱した。「これから2件の“侵入”を試みる。探すのは“R女史とAD事務所を結ぶ線”だ。最近だけでなく過去にも遡って調査してくれ!何かあるはずだ。そうでなくては、我々が巻き込まれた理由が立たない!可能な範囲で徹底的に洗ってくれ!」「はい!」「“車屋”、お前さんは修理の手筈を整えて置け!“スナイパー”の車は、少なからずダメージを受けているだろう。朝までに修理を完了させるんだ!」「分かりました。では、トラックで待機します」“車屋”は地下駐車場へ向かった。「みんな、危険は覚悟の上だ!それぞれの“任務”を細心の注意を払って遂行してくれ!“AD事務所”が混乱している今が勝負だ!出来る限りの手を尽くしてヤツらの前に出る!」リーダーは、今に全てを賭けた。各員はそれぞれに散って行った。

「何だと?!ベンツが“おしゃか”だと?!何を喰らった?!火炎瓶?!そんなモノを持っているのか・・・、何者だヤツらは?!」「社長!サーバーが乗っ取られました!PCが使い物になりません!」「今度は何だ?PCがどうした?」「ゲームに乗っ取られました!お手上げ状態です!」“AD事務所”は上へ下への大騒ぎになっていた。ベンツ2台の大破に“スター・ウォーズゲーム”による乗っ取り。社長が自分のPCを起動すると派手な音楽と共に“スター・ウォーズゲーム”の画面が現れた。「なんじゃこりゃ!早く復旧させろ!」社長は喚いたが、サイバー部隊のトップは「復旧のメドは経っていません。プログラムを削除しようにもゲーム画面から切替わらないのです!」「サーバーはどうなっとる!データーは無事か?」「サーバーにもアクセス不能です。このプログラムは現在もサーバーへ侵入を続けています!既に半分はゲームに乗っ取られました!」「クソー!!これでは何も出来ん!朝までに復旧させろ!」社長は力むが「保証できません!最悪の場合、システム全体がクラッシュします!ゲームをクリアするか、“身代金”を払わなくては、解除コードが手に入りません!」「うぬぅー、“身代金”はいくらだ?」「1台500万ドルです。放置しても時間が経てば金額は増えるだけです!」「どうしてこうなった?!」「お言いつけ通りにハッキングをしましたら、海外のサーバーへ飛ばされてゲームに乗っ取られました。向こうの防壁にリンクが張り付けられていたのでしょう」「とにかく、この忌々しいゲームを終わらせろ!電源を遮断したらどうなる?」「それが相手の狙いです。システムクラッシュさせるために仕掛けられたのです!」「うむむむむ!小賢しいヤツらだ。車もPCも使い物にならんとは!手足をもがれたも同然ではないか!!」社長の顔が赤から青に変わった。華々しくゲームは進行していく。その裏でデーターは無事かどうかも分からず、車は廃車に変わった。経済的な損失と蓄積して来たデーターを失えば、損害は億を下らないだろう。「まず、ゲームを何とか消し去れ!時間はかかっても止むを得ん。明日は業務を止める。丸1日あれば手も見つかるだろう。ベンツは修理可能か業者の元へ移動させろ!」青筋を立てて社長は怒鳴った。如何に彼が力んでも事態は変わらない。「最悪だ!とんだしっぺ返しを喰らうとは・・・、相手は何者なんだ?!」予想を超えた相手と戦っていると気づいた時には手遅れだった。“AD事務所”は完全に機能を止められた。

深夜3時、N坊とF坊が引き上げて来た。「ダメだ!何にも出て来ない」「ありとあらゆる場所を洗ったけど成果なし!」2人は疲れて顎を出した。「こっちも成果なしだ!データーのデの字も見つからなかったよ」“シリウス”も嘆いた。「R女史の所から引っ張って来た記録やデーターは?」リーダーが問うと「これですよ」「後、こっちも」N坊とF坊がポータブルHDDとSDカードを差し出す。PCとサーバーのデーターとスキャンした記録類のコピーである。「成果なしか・・・、“シリウス”、“AD事務所”のデーターは保存できているか?」「ええ、俺のPCに落としてあります」「分かった。もう遅い。ともかく休め!朝になったら再検証しよう」「ふぁーい!」3人はそう言うと、各自の部屋へ引き揚げた。リーダーは考えていた。「理由もなく我々が攻撃の対象になる訳がない。何が絡んでいるんだ?」その時、携帯が鳴った。「もしもし、“ドクター”!どうです?」Z病院からだった。「無事に“グリコペプチド系抗生物質”の投与が終わった。意識が回復すれば問題はないだろうて。ミセスAが看護に着いておる。R女史は間一髪で助かるだろう」「“スナイパー”はどうしました?」「先程、“司令部”へ向けて出発した。ナンバーフレートは元に戻してある。後、10分もすれば戻るだろう。奴さんの車からも“悪人達”の証拠は拾えるはずじゃ。わしは、しばらくZ病院で治療に手を貸すつもりじゃ。抗生物質の効果の程を見極めたいのでな」「分かりました。宜しくお願いします。“ドクター”、“即席火炎瓶”については証拠を残してませんよね?」「わしがそんなドジを踏むものか?!指紋の採取すら不可能にしてある!どっちにせよ、跡を辿られる心配はない!むしろ、後ろ暗いのは襲った連中の方だ。どうやって誤魔化すか?今頃、頭が痛いはずじゃ」「では、Z病院の方は任せっきりになりますが、よろしいですか?」「ああ、構わんよ。ここなら設備も整っている。ついでだから、研究のための資料を集めようと思っとる。R女史の警護も含めて任せて置け!夜分に済まなかったな。リーダー、お前さんも休め!指揮官がシャンとしとらんと部下の士気に影響するぞ!」「はい、ではおやすみなさい」リーダーは携帯を切ってソファーに寝そべった。疲れてはいる。だが、心が落ち着かない。“ドクター”に貰った睡眠薬を1錠だけ飲んだ。「さて、次の一手をどう打つか?“AD事務所”について徹底的に洗って見るか?」あれこれと思いを巡らせるうちに、リーダーも眠りの世界へ引き込まれていった。

眠る者が多い中、目覚めた人物も居た。「何だこれは?」DBは違和感で目覚めた。いつの間にか布団とシーツと枕がウレタンシートと防災用の防寒アルミシートに変わっている。ヘッドの周囲を探ると、必死に縒りあげた糸が全て消えていた。「クソ!またしてもやられたのか!」小声で呟く。繊維の類は全て消え失せた。脱走に備えた道具も作る事は不可能になった。天井を見ると、8基の監視カメラ兼レーザーが不気味に動いている。「どうやら夜の様だな」DBは悟り始めていた。小声でも呟けば、合成ボイスが警告を出すはずだが、今はそれが無い。監視は自動制御になっている。つまり、無人。現地は夜だと。「なるほど、夜警は自動システムに切り替わるのか。ならば、今の内に調べて置くか」DBは静かに起き上がると、唯一の扉へ近づいた。薄暗い中、集中してに目を凝らす。「金属が手に入れば、道は開ける。どこからむしり取ってくれようか?」DBは丹念に探した。その時だった。不意に天井から10本のレーザーが床に照射された。扉との隙間にDBは閉じ込められてしまった。8基のレーザーが急旋回して、ターゲットを追う。「警告、無差別攻撃を開始スル。脱走氾確保。ハイパワーレーザー照射マデ5分!」「ちっ!」DBは己の迂闊さを呪った。「まっ・・・待て!眼鏡の・・・レンズが外れた・・・だけだ!逃げるつもりはない!」必死に訴えるが「脱走氾を逃ガスナ!非常警報発令!レーザー、ターゲット自動追尾。脱走氾を逃スナ!」合成ボイスは容赦しない構えだ。「た・・・助け・・・て、くっ・・・くれ!」DBは恐怖に震えた。「何をした?DB!逃げようとしたな!違背は許さぬと言ったはずだ!」ノイズ交じりの声が地下空間に響く。「なっ・・・なん・・・でも・・・ない。めっ・・・眼鏡・・・拾い・・・行こう・・・とした・・・」「そんな誤魔化しが通用すると思っているのか!今度こそ最期だ!遺言は聞いて置いてやるぞ!」「たっ・・・頼む・・・見逃して・・・くれ!」DBは失禁して命乞いをするハメになった。「さあ、終わりだ!遺言は何だ?!」「そっ・・・外・・・外の・・・空気・・・吸わせて・・・く・・・れ」「よろしい、排水プラントの汚水の臭いを嗅がせてやろう!」地下空間に汚水の匂いが充満した。「さようならDB!大人しくしていれば命脈も尽きる事はなかったろうに!」8基のレーザーの輝きが増した。攻撃まで時間は無い。DBは、覚悟を決めた。レーザーに焼かれていずれとも知れぬ場所で自分は消えていくと。

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