limited express NANKI-1号の独り言

折々の話題や国内外の出来事・自身の過去について、語り綴ります。
たまに、写真も掲載中。本日、天気晴朗ナレドモ波高シ

ミスター DB 56

2018年10月15日 15時56分56秒 | 日記
「あのアホ蛙共め!さっさと総合案内へ行け!」ミスターJは毒づいたが、依然として¨2匹の食用蛙¨達はうろつくばかり。オロオロと周辺を見回して立ち往生したままだ。「マズイですね。このまま時間を空費してしまえば、¨遅刻¨してしまいます!何かアクションを起こさなくてはなりません!」リーダーは、意を決したかの様に言う。「何が出来る?面が割れてしまったらそれまでだ。我々はあくまでも¨追う側¨に居なくてはならない」ミスターJは慎重な口振りで返す。「ミスターJ、貴方は蛙達に面が割れておられるでしょうが、私は割れて居ない。そこに活路があります。KかDBの荷物をひったくり、¨ランドマークタワー¨まで突っ走ればどうです?」「それではリーダー、君が追われる立場になるぞ!リスクが大き過ぎる。KやDBだけでなく、警備員からも追跡される事になる。第一、何処に逃げ込むつもりだ?」「¨スナイパー¨の車がありますよ。もし、それが無理なら街中へ出ればいい!Z病院へは、電車とバスで行けます!ラグビーで鍛えた脚ですから、人混みを縫って走るのは、難しい話ではありません」リーダーは平然と言ったが、あまりにもリスキーな手口に、ミスターJも二の句が続かなかった。「後、5分待ちます。もし、決行した場合には、ミスターJを置いてきぼりにしますが、ご容赦下さい!」そう言ってリーダーは、タイミングを見計らいにかかった。

「K、どっちから俺達は歩いて来たんだ?」DBが聞くが「分からん!ゴミ箱ばかりを探していたから、目印になるモノをろくに見て無いんだDB」Kも困り果てていた。「確か真っ直ぐに歩いて来たな。だとすれば、うーん!分からない!右か?左か?」DBも迷いに迷っている。虚しく時間だけが過ぎて行く。だが、ここでは救いの神は、味方をした。総合案内の女性が声をかけてくれたのだ。KとDBは、彼女の助言に依って方向感覚を取り戻したのだ。「ふー、助かった!K、急ごう!大分時間をロスしてしまった。おい?どうした?K?」DBが誰何するが、Kの足取りが覚束無い。「DB、感じないか?あの¨悪夢の鈍痛¨を!」Kは、脂汗を滲ませて呻く様に言う。「マズイ!微かに痛みを感じる!例のヤツか?!」DBの背筋にも悪寒が走る。だが、ここは¨クイーンズ・スクエア¨だ。人混みが途切れる事は無い。もし、異臭を放出すればパニックは免れない!「トイレはあそこだ!だが、ここはコンビニでは無い。¨異臭の素¨は駆逐された筈だが、リスクは避けようが無い。DB!どうする?」Kは喘ぎながら言う。DBにも¨悪夢の鈍痛¨は訪れて来た。「仕方あるまい。リスクはあるが、逃れる術も無いとなれば、一か八か賭けるしかあるまい。K!飛び込もう!」DBは決断した。「行くぞK!」2匹は、遮二無二トイレへ駆け込んだ。だが、焦りすぎて女子トイレへ雪崩れ込んでしまった。「キャー!!」甲高い悲鳴が響き渡る。2匹は慌てて反対へ再度雪崩れ込む。個室は幸い空いていた。次の瞬間、ズドン、ズドン、ズドンと爆発的な噴射音が3回響き、生臭い¨魚の腐敗臭¨の様な悪臭がトイレ内に充満した。たまたま用を足していた男達も、喘息患者の様に呼吸困難に陥り激しく咳き込むか、口元を押さえてトイレ外へ這い出した。悪臭は徐々に周囲へ漂い始めた。「何だ?!どうした?!」一部の客達が騒ぎ出した。悪臭は急速に拡散し始めた。「警備員だ!警備員を呼べ!」騒ぎは拡大し始めた。KとDBは、必死にいきんで腸から流れでるモノを押し出そうとするのだが、その間にもドスン、ドスンと爆発的なガス噴射が続き、状況はどんどん悪化して行く。「俺達の意志で…、コントロール・・・出来ない・・・から・・・、あー!・・・うーん・・・困ってるんだ!」Kは脂汗を滴らせながら呻く。「急げ・・・、警備員に囲まれたら・・・アウト・・・、あぎゃー!・・・イテテテ・・・切れ痔に・・・なる・・・」DBも真っ青になりながら腹を急かす。止めどなく流れる悪臭に対して、警備員はトイレ外に規制線を張り巡らせ、立ち入り禁止の処置まで取り始めていた。2匹は袋の蛙になってしまったのだ。

リーダーが飛び出そうとした瞬間、総合案内の女性がKとDBに救いの手を差し伸べたので、リーダーの¨特攻¨は回避された。だが、KとDBの動きは鈍い。「今度は何だ?」リーダーが焦れる。「多分、例のヤツだろう。間も無く周囲は、悪臭に包まれるだろうて」ミスターJは懐からマスクを引っ張り出すと、リーダーに差し出した。「活性炭入だ。多少だが悪臭に耐えられる」「しかし、ここでの¨放出¨は自殺行為に等しい。ヤツらだって分かっている筈です」リーダーが言う。「ジミー・フォンの¨エキス¨の恐ろしさは、簡単には体外へ抜けない事にある。また、ひと騒ぎありそうだ。問題は、どうやって突破口を開くか?にかかっている。さて、お手並み拝見じゃ!」ミスターJとリーダーは、¨ランドマークタワー¨方向へ移動して待機した。女子トイレへの誤突入を経て2匹はトイレへ雪崩れ込み、次の瞬間猛烈な爆発的噴射音が聞こえた。周囲には¨魚の腐敗臭¨の様な悪臭が漂い始めた。「うわ!臭い、臭いー!」リーダーが悶絶する。「警備員が規制線を張り出した。これで難易度は格段に高くなった。ヤツらとて容易には突破口を開けまい」ミスターJは他人事の様に言う。「しかし、突破口を開いて逃げて貰わなくては困ります!」リーダーは焦り出した。「さて、我々は一足先に地下へ戻ろう!」ミスターJは、落ち着いた言葉でリーダーを促した。「何故です?ヤツらを放って置くんですか?!」リーダーは驚いて聞き返す。「ここで捕まる2匹ではあるまい。混乱を避けて先回りしなくては、我々も脱出不可能になりかねん」「そうか・・・。そうですね!では、今の内に戻りましょう。荷物もありますし・・・」ミスターJとリーダーは、地下駐車場へと急いだ。

「DB聞こえるか?」Kが小声で呼んでいる。「ああ、やっと落ち着いた。だが、厄介な事になっているぞ!」外では警備員が“規制線の中には入らないで下さい”と言っているのが聴こえる。「DB!“石鹸の香”のボトルを寄越せ!消臭しないと・・・」「ダメだ!今、使えば新たな臭気を生み出すだけだ!それよりK!どうやって突破する?」“規制線”が張られている以上、ある程度警備員を蹴散らすしかない。「K、どうする?」「DB、強行突破しかないぞ!素知らぬふりをして、外へ出たら後は逃げるだけ逃げるんだ!どの道、地下5階へ行かねば車には辿り着けない。ともかく下へ逃げ込むんだ!」Kが言う。どうやら、それしか道はなさそうだ。「では、いくぞK!」個室のドアを開けると、新たな臭気が流れ出た。だが、そうした些細な事はどうでもよかった。2匹は慎重に外を伺う。「警備員が4人程居る。今の内に出るぞ!」DBは間合いを計った。「それ!」何事も無かったかのように、2匹はトイレから出た。野次馬が壁を作って見守っている。規制線を潜り、2匹は素知らぬふりを装い“ランドマークタワー”の方向へ歩き出す。「アイツらよ!女子トイレに乱入して来たのは!!」野次馬に紛れていた女性の鋭い声が響いた。「早くもケチが付いた!走れK!」KとDBは全速力で走りだした。「待て!そこの2人!!」警備員が誰何するが、そんな声に立ち止まる2匹ではない。壮絶な“追いかけっこ”が始まった。警備員は、走りながら無線で応援を要請した。「下だ!下を目指せ!」KとDBは、立ちはだかる警備員に体当たりを喰らわせると、床を蹴って前へ前へと人込みをかき分け、蹴散らして進む。エスカレーターを駆け下り、ぐちゃぐちゃに走り回って追いすがる警備員を撹乱する。階段を駆け下り、フロアをグルグルと走り回っていると、エレベーターが見えた。丁度、下に向かおうとしている。「どけ!」「悪いな!」エレベーター内の客を外へ放り出すと、一目散に地下5階へと向かう。警備員は一旦足止めを喰らったが、尚も無線で応援を呼んでいた。「もう直ぐ・・・、地下5階だ・・・。出るぞ!」Kが喘ぎながら言う。地下5階にエレベーターが着いた。ドアが開く前から2匹は出口に殺到した。以外にも地下5階は静まり返っていた。「急げ!車はどこだ?!」KとDBは狼狽え気味に車を探す。散々走り回った挙句に車を発見すると、Kは直ぐにエンジンを始動させ、出口を目指す。地下から地上へ出るまで誰の追跡も受けずに済んだが、料金所で警備員が張り込んでいた。「眼鏡を外せ!」DBが瞬時に言う。警備員は何事も無かったかの様に清算を手伝い、誘導までしてくれた。街中へ滑り出した車の中で2匹はため息をついて、眼鏡をかけた。「DB、いい判断だったよ」Kが言った。「なに、ヤツら顔までは覚えてはいまい。咄嗟に“安全策”を思い付いただけさ!」DBは冷や汗を拭う。「さあ!いよいよZ病院だ!」Kは流れに乗るとスピードを上げた。

ミスターJとリーダーは車で待機していた。「コイツはどうします?」リーダーが聞く。例の“始末品”だ。「それは、Z病院で警察にくれてやればいい。さて、そろそろ2匹がお出ましになるハズだ。追われていなければいいが・・・」ミスターJが言った途端、KとDBが目の前を走り去る。ヤツらは必死の形相だったので、周囲が見えていなかった。慌てて車に乗り込むと、エンジンをかけ急発進で出口を目指す。「追跡開始!」「了解」ミスターJとリーダーの乗った車は、Kの車の後ろに着いて距離を置いて追尾して行く。FMラジオからは、荒い息遣いが聴こえるだけだ。料金所には警備員が居る。「ここで捕まったらアウトだ!」リーダーが言うのと同時に「眼鏡を外せ!」とDBが叫んだ。警備員は何の疑いも持たずに清算を手伝い、Kの車を街中へ出した。ミスターJも清算を済ませ、後を追うべく街中へ飛び出した。「・・・B、・・・判断」「よいよ、・・・院だ!」途切れ途切れになった音声からも、2匹がZ病院へ向かった事は推測できた。携帯が震え出した。「ミスターJ、随分と時間を食いましたが、何があったんですか?」N坊が尋ねる。「“2匹の迷える食用蛙”とまたまた“悪臭事件”だよ。今頃、みなとみらい地区は大騒ぎだろうて」ミスターJは事の顛末を掻い摘んで説明した。「あちゃー、最悪だ!警察も大挙して動員をかけるでしょうね!」F坊が言うと「県警は大動員をかけてZ病院と相模原に兵力を割いている。残っている捜査官は僅かだ。こんな状態では、どこまでやれるか未知数だろうて」ミスターJは言った。「不幸中の幸いってヤツですな。2匹は間違いなくZ病院へ向かっています。“遅刻”は免れそうですぜ!」“スナイパー”が言う。「みんな聞いてくれ!いよいよ勝負の分かれ目だ。このままZ病院へ向かう。各自、自分の役割を再確認してくれ!」ミスターJは各個に打ち合わせを促した。「了解しました。そのまま付いて来て下さい。まず、それが1点。Z病院へ潜るのはN坊が行きます。その際、“始末品”も持っていきます。これが2点目。後は所定の配置に着いて待機します」F坊が答えた。「よし!最後の仕上げだ。抜かるなよ!」「はい!」3人の声も引き締まっていた。Kの車は帆を架けたようにZ病院へ向かっている。2台の追尾車両も遅れまいと前へ急ぐ。もう直ぐ“最後の仕上げ”にかかる時が来た。Z病院は目の前に迫っていた。

「何!みなとみらい地区で異臭騒ぎだと?!誰だ?!ホシは確保できたのか?何ぃ!取り逃がしただと、警ら隊は何をして居る?ああ、確かに手は足りないな。仕方あるまい、L署から出せるだけの捜査員と鑑識を送れ!とにかく収拾を図るんだ!あそこが混乱しては警察のメンツに関わる!E警部補以外の者を動員して、速やかに鎮静化させろ!急げ!」捜査一課長は苛立たしそうに電話を切った。「異臭騒ぎですか?」W警部が問う。「ああ、これで昨日から3件連続の異臭騒ぎだ。まったく、何処の誰なんだ?!こっちはそれどころじゃないってのに!」「もしかすると、KとDBではありませんか?」W警部が言う。「KとDBなら、何故みなとみらいなんだ?ヤツらの目的はここだろう?!」Z病院周辺の検分が終わったばかりの一課長は首を捻る。「陽動作戦とも考えられませんか?我々が動けると踏んでの撹乱ですよ!」W警部は言う。「確かに、そう考えれば辻褄は合うが、そんな手に引っかかる戦力は我々には無い!だが・・・、我々の事情はヤツらは知らんのだから、そう考えると筋は通るなW警部」「ええ、もしかすると昨日のコンビニ異臭事件も、彼らの犯行ではないでしょうか?」「撹乱目的でか?!」一課長も思案に沈む。「ここZ病院を襲撃するための撹乱だとすれば、兵力は分散され隙が生じやすくなります。そこを突く予定の行動だったとすれば、敵ながらいい布石になります!」W警部は言った。「うーん、仮にそうだったとすれば、ここは隙だらけになったな!だが、KとDBの行動は既に筒抜けだ。我々はここで待ち構えていればいい!みなとみらい地区の鎮静化だけなら、L署と警ら隊で凌げるだろう。W警部、各員の配置は?」「Z病院内に10名、駐車場に10名、立体駐車場に5名、ここに私達と5名それに鑑識です」「よし!情報が確かならそろそろ現れるはずだ!各員物陰に隠れて待機!」一課長の号令と共に捜査員は散った。「さあ、来い!今日がお前たちの年貢の納め時だ!」捜査一課長はメラメラと燃え盛っていた。

「まも・・・病院・・・つい・・・勝った・・・最後・・・げるぞ・・・K」相変わらず途切れ途切れの音声だが、Kの車は遂にZ病院へ到達した。「午後2時45分か。何とか間に合ったな!」ミスターJは時計を見ながら安堵の表情を浮かべていた。「Z病院が見えてきました」機動部隊員の声も明るい。「後は、Aに任せるだけだ。“スナイパー”の車の後方へ着けろ!」ミスターJは停車位置を指示した。バス停の東側、Z病院の正面玄関から100m離れた場所だ。Kの車は予定通りZ病院へ滑り込んだ。“スナイパー”の車は指定された場所へピタリと止まった。その後方にミスターJ達の乗った車も止まった。「警察は見えませんね」リーダーが言う。「彼らは張り込みのプロだ。見える筈が無い。さて、Nよ」「はい、分かってます」いつの間にか左側にN坊が控えている。「“始末品”はこれだ。ECUの切換が済んだら、速やかに戻れ!」「ええ、では!」N坊は静かに立ち上がると、Z病院へ向かった。F坊と“スナイパー”が双眼鏡で周囲を探る。「ここからだと、駐車場付近は死角が多くて見えずらいな」「だが、派手な真似は出来ん。おっ!立体に2人居るぞ!見つかると事だ!」2人は慌てて双眼鏡を隠す。「ミスターJ、捜査員は要所要所に分散しています。人数までは分かりませんが・・・」F坊が知らせに来た。「ここから先は、Aに託すしかない。KとDBは何処だ?!」「今、荷物を抱えて玄関に向かっています」リーダーが双眼鏡で探りながら言う。その時、後方から車が1台、ゆっくりと近づいて来た。「ミスターJ、誰か近づいてきます!」「何!そんな予定は無いぞ!誰だ!」黒塗りのセダンがゆっくりと接近して来る。「まさか、警察か?!」リーダーが言った。最終段階でのニアミスは予定外だった。果たして誰が乗っているのか?!