limited express NANKI-1号の独り言

折々の話題や国内外の出来事・自身の過去について、語り綴ります。
たまに、写真も掲載中。本日、天気晴朗ナレドモ波高シ

ミスター DB 52

2018年10月05日 15時43分55秒 | 日記
3日目の朝がやって来た。ミスターJの朝は早い。「歳を取ると早くなるものだ。昔は信じられなかったが、今は先輩たちの言い分が身に染みて分かる」静かに起き上がると、洗顔をし着替えを済ませる。リーダーはまだスヤスヤと寝ている。彼を起こさない様に、荷物の整理にかかる。手荷物は最小限にまとめて小さなショルダーバックへ移し、衣類などはボストンバックに押し込んで置く。機動部隊に引き渡し運んで貰うためだ。“耳”を聴いて見ると、爆音の如きイビキが響いているのが確認できた。「“2匹の食用蛙”達も、まだ爆睡中か。自身の運命が決まると言うのに、呑気なものだ」ミスターJは湯を沸かして、お茶を淹れソファーに座り込んだ。「さて、結末や如何に?」小声で呟くとゆっくりとお茶を飲み始めた。

N坊は悩んでいた。「何でこんなに早く起きちまったんだろう?」まだ、結構な時間が残っている。F坊はまだ爆睡中だ。「コイツを起こすのはまだ先でいいが、問題は方法だな」以前に比べれば寝起きはよくなっているが、F坊を起こすのは骨の折れる作業に変わりが無かった。「“撤収作業”もあるし、早めに起こすしかねぇが、何しろ目覚ましが無いと来てる。たっぷり30分は格闘しなきゃならんな!」N坊はため息交じりに呟くと、そそくさと洗顔、着替えを済ませ荷物との格闘に移る。衣類や特殊な道具類の装備一式は、機動部隊に引き渡し運んで貰うつもりだ。護身用のスタンガンと必ず持ち歩いている小型の工具達だけを残すと、ショルダーバックへ移し替えた。「ふー、毎度の事ながら、装備品が多いのは俺達の商売柄しょうがないか・・・。おっと、ノートパソコンの梱包を忘れちゃいかんな!」慌てて、パソコンと付属機器を終いにかかる。その時だった。ドアをノックする音が聞こえたのは。「“スナイパー”か?あっちも早くお目覚めか?」N坊は慎重にドアを開ける。「N坊!お・は・よ・うー!」唇が頬に飛んで来た。赤い口紅が目一杯、頬に叩き込まれた。「ミセスA!どうしました?こんな早い時間に?」N坊は慌てて聞いた。「私の荷物も運んで貰おうと思ってね、預けに来たの。もう一回、ほっぺちゃんに唇をお見舞いしてあげる!」N坊の両頬に、口紅がたっぷりと叩き込まれた。「ねぇ、F坊はまだ?」「ええ、見ての通り爆睡中ですよ」F坊は依然としてお休み中だ。「とにかく、荷物を預かりますよ」そう言うとN坊は廊下に出たが、腰を抜かしそうになった。「なんじゃこりゃ?!」巨大なボストンバックが4つ廊下に鎮座していのだ。しかも、4つとも途轍もなく重く、パンパンに膨れ上がっている。ミセスAは、ショルダーバックも持っていたはず「どうやって担いで来たんだこりゃ?」N坊はヒーヒー言いながら部屋へボストンバックを引きずり込んだ。「ここまで運んでくるのに、骨が折れそうだったわ」ミセスAがぼやいた。「尋常じゃない荷物の量ですぜ!どうやって運んで来たんです?!」N坊は悲鳴を上げつつ聞いた。「タクシーの運転手さんに手伝ってもらったのよ。運転手さんもヒーヒー言ってたけれど何故かしら?」ミセスAは不思議そうに言う。「中身が何か知りませんが、1人の荷物としては尋常じゃない量です。運転手に同情しますよ」N坊はヘタッて顎を出した。その位、重く大量なのだ。「女の子は持ち歩くモノが多いのよ。あれもこれもって考え出すと、どうしても増えちゃうのよねー」ミセスAは呑気にコンパクトを出して、口紅を塗り直している。女性の荷物だと割り切っても、N坊にもどうしても納得のいかない量である。ひょっとすると、彼女はクローゼット毎持ち歩いているのではあるまいか?N坊は背筋が冷たくなった。タクシーの運転手がぎっくり腰でダウンしなければいいが・・・。「N坊、F坊を起こしてもいい?」ミセスAが聞いた。「そろそろ起こしてやって下さい。“撤収作業”もあるし、俺だと30分は格闘しなきゃいけませんから」N坊は荷物の中から“メイク落とし”を引きずり出しながら言った。「俺は司令部に行って来ます。その間に頼みますよ」「分かったわ!まずは添い寝してからね!」無邪気にはしゃぐミセスAを残して、N坊は司令部のドアをノックした。「おはよう、N、派手にやられたな。Aが来ているのか?」ミスターJが笑いながらドアを開けて言った。「おはようございます。これ位は普通ですよ。今、F坊を起こして貰ってます」N坊はいつもと変わらずに言う。「だが、外は歩けないな!明らかに“不審者”だ。洗面台は空いてるよ!」リーダーが腹を抱えて笑う。「お前さん達にとっては普通だろうが、Aの性格を知らない人が見たら“不審者”扱いは免れんぞ」ミスターJも噴き出しながら言う。「まあ、お前達を育て直したのは、Aだから仕方ないのは認めるが、“メイク落とし”を持参して来るのは他に例が無いだろう!」司令部内は笑いが止まらなかった。「まあ、慣れてますから。ともかく顔を洗わせてください。その後、ミセスAを呼んできます」そう言うと、N坊は洗顔をやり直しにかかる。「当人達にして見れば普通の事?!私なら到底受け入れられませんが」リーダーが不思議そうに言うと「グレ果てた2人を立ち直らせたのは、Aの途轍もない愛情だ。彼女には脱帽するしかない」ミスターJは昔を思い出しながら言った。「尋常じゃない愛情の注ぎ方ですね」「ああ、あの2人は両親を知らないまま育てられた。施設でな。その後、身元保証人になって、2人を今の姿に育て直したのがAだ。彼らにとっては、母親以上の存在なのだよ」「それにしても、凄い育て直しだ。私には到底出来ません」リーダーが呆れたように言うと「だからこそ、今の2人がある。Aの子供達は勇猛果敢だよ」ミスターJは目を細めて言う。「じゃあ、ミセスAとF坊を呼んできます」洗顔を終えたN坊は部屋へ戻って行った。「さて、最終の協議を始めよう。リーダー、朝食を6人分注文してくれ。皆が揃ったら早速かかろう」「分かりました」いよいよ最後の協議が幕を開けようとしていた。

覚醒には“悪夢の鈍痛”が伴った。爆音の様なイビキが止まると“2匹の食用蛙”達はベッドで呻き声を上げた。「うー、又しても悪夢の鈍痛がしてやがる。DB、そっちはどうだ?」Kが腹を摩りながら聞いた。「うぉー、鈍痛じゃなくて波の様な激痛になりつつある。では・・・、一気に行くか・・・K?」「ああ、急ごう。悪臭が漂うのは、分かっている。いてぇー・・・、急げ!DB!」“2匹の食用蛙”達はトイレに急行すると、ドアを閉めるのも忘れて座り込んだ。「うーん!」「あぎゃー!」それぞれに呻くと、強烈な悪臭が部屋へ流れ出した。冷や汗が噴き出し、親父臭と混ざり合い悪臭に吸収され状況は更に悪化する。「これで・・・“異臭の素”は・・・駆逐される・・・のだな・・・DB」Kは呻きながら何とか声を絞り出す。「ああ・・・そうだ・・・これで・・・最後だ」DBも苦しみつつ言う。10分の苦痛と引き換えに、2匹は全てを押し出した。ヨレヨレになって室内を這い進み、ベッドへ戻る。「臭い、体臭を飲み込んだ悪臭が漂ってる」Kは鼻を摘まんでいる。「お香を2本焚こう。その前にまずは換気だ」2匹は換気扇を回し、エアコンを全開にして窓を開けた。朝日が眩しい。澄んだ空気が室内へとなだれ込む。DBはお香2本に火を点じ、部屋の真ん中へと置いた。「よし、窓を閉めよう」換気扇も切って、室内にお香の香りを循環させると悪臭は徐々に駆逐されていった。「ふー、これで悪臭地獄から抜け出せた。もう、ガスも出ないから“異臭の素”は体外へ出たな。DB、腹の具合は?」Kが聞く。「うむ、落ち着いてる。やっと悪夢から抜けたと見ていいだろう」「部屋の悪臭も駆逐された。さてと、まずは洗濯だ!」Kの号令の元、2匹はシャンプーとホディソープを大量に使い、全身を洗った。残っていた親父臭も洗い流され、2匹はサッパリとして浴室から出た。「空気が変わってる。やっと普段の生活に戻れる」DBはしみじみと言った。「いよいよ、今日の午後、憎たらしい小僧の始末も付く。晴れて我らの天下が戻る日だ。DB、まずは朝食だ。その後に、最終確認をしよう!」「長い雌伏だったが、これで日の当たる世界に戻れる。午後3時が待ち遠しいな!」そう言うとDBは朝食をオーダーした。Kは、腹をバシバシと叩くと着替えに移った。DBも汗を拭い着替えた。オーダーした朝食を囲んで、2匹は暫く無言で食べ続けた。「DB、相談がある」Kが真顔で言う。「何だ?」「今夜発の航空券が3枚ある。俺の高飛び用に用意したモノだ。行先は全部バラバラだが、お前さんも高飛びするのはどうだ?」意外な話にDBは驚き、暫く声も出なかった。「この際だ、ちょいと日本を抜け出して、行方を眩ませるのも一手じゃないか?」Kの予想外の発言に、DBは戸惑った。高飛びなど予定外の話だ。DBは何と答えたものか?と思案に沈んだ。「どうも、お前さんの先行きが不安でな。Yが失脚するまで、海外で待つのも一案の様に思うんだが、どうするDB?!」Kは本気だった。

ミセスAとF坊、“スナイパー”の3人にN坊とリーダーが揃い、6人は朝食を囲んで座っていた。「F坊、その口紅は何とかならんのか?」“スナイパー”は噴き出しそうになりながら言う。F坊の顔には、ミセスAの“キスマーク”が所狭しとばかりに付いている。「別にいいじゃないか!俺にとっては普通の状態だ!」F坊は意に介す事無く朝食に食らいつく。「そうよ、私達にとっては、ふ・つ・う・の出来事だわ」ミセスAも同じことを言う。「うーん、何処が普通なんだ?常識が通じない」“スナイパー”は頭を抱えた。「さて、皆が揃ったところで、最終の協議を始めるとしよう。A、まずはZ病院の状況からだ。何か変化はあったか?」ミスターJが問うた。「あるわ。昨夜、県警の捜査一課長が来院したの。理事長や院長と話し合っていたわ。当初の予定では、KとDBは、病棟で取り押さえられて“誘拐未遂”の容疑で任意同行されるはずだったのが、外の駐車場で“殺人未遂”と“麻薬取締法違反”の容疑で逮捕されることになった様よ。県警の方針が大きく変わったみたい」ミセスAは一気にまくし立てた。「ほう、県警が逮捕に踏み切るのか。どうやら我々の証拠が功を奏したな。県警としても、これを足掛かりにして一気に青竜会を掃討するつもりだろう」ミスターJは“バトン”が繋がった事を確信した。「それともう1つ、相模原の施設へ同時刻に家宅捜索が入るって聞いたわ」「旧NPO法人の施設にガサ入れか。本腰を入れると言う事は、壊滅作戦に突入したと見て間違いないな」ミスターJが唸る。「ミセスA、そろそろ出勤時間じゃありませんか?」N坊が時計を見て言った。「そうね、もう行かなくちゃ遅刻だわ。N坊、F坊、また打ち上げの時にね!熱いのをたっぷりと、し・て・あ・げ・る!」少女の様に言うとミセスAは、支度を始めた。「ミセスA、お使いを頼んでもいいですか?」リーダーが分厚い封筒を差し出した。「これは何?」「音声記録ですよ。ジミー・フォンとミスターJの。警察の方に渡して欲しいんです」「このままでいいの?」「渡せば分かりますよ。裏に捜査一課長様って書いてありますから」リーダーは拝むように手を合わせている。「分かったわ。これは確かに届けるわ。じゃあ皆さんお先に!」彼女はN坊とF坊に手を振りながら出勤して行った。「先陣を切ってのご出勤か」“スナイパー”が呟く。「Aは、自分の役割をきちんと把握しておる。Z病院内は彼女に任せておけば大丈夫だ。次は、NとF、お前達と“スナイパー”だ。Kの車に発信機は装着してあるな?」ミスターJが確認する。「ええ、昨日のガサ入れの際に設置してあります」「型番はRX-02。こいつは、見通しが良ければ1キロ先まで受信可能なタイプです。発信周波数は“スナイパー”、この付近だ」「ふむ、一番混信の少ないバンド帯だな。市街地でも700mは距離を保てる」「バッテリーの持続時間は、約12時間。ヤツらがエンジンを始動させればスイッチが入る仕組みになってます」N坊とF坊はてきぱきと答えた。「うむ、それなら追尾も容易だな。お前達3人は、KとDBが車で出発したら、直ぐに追尾にかかってくれ。それと万が一だが、KとDBが車で逃走した場合の対策はどうなっている?」ミスターJが更に踏み込む。「Kの車を詳細に分析した結果、ブラックボックスを取り付けて置きました」「最初は、ECUを狂わせるウィルスプログラムを送り込むつもりでしたが、Kの車が結構なポンコツでして、ウィルスを送り込むと走行に支障が出る事が分かりました。Z病院までは、まともに走って貰わなければ困りますので、結局、制御回路を新たに別個体で外付けにすることにしました」「別個体の制御回路は、燃料噴射やATの変速を狂わせる様に細工してあります。アクセルをベタで踏んだとしても、時速40キロ以上の速度は出せないでしょう。ただ、問題が1つだけ残っています」「Z病院にKが乗り付けた後でないと、切り替えができないんです。切り換えそのものは遠隔操作で出来ますが、俺達のどちらかがZ病院に潜った上で、リモコン操作をしなくてなりません」N坊とF坊は説明しつつ、問題点を提起した。「ふむ、一手間をかける必要があると言うのだな。それは構わん。ともかくKの車を容易に追い詰められさえすれば、目的は達せられる。2人のどちらでもいいから、Z病院に潜入して確実に切り替えを完了させろ。リーダー、Z病院周辺の地図を」ミスターJは地図を持って来させると「機動部隊と遊撃隊は、Z病院周辺でインターへ向かう筋を中心に、円を描く様に展開させる。“スナイパー”は、KとDBを追尾して、Z病院の東側のバス停付近に車を止めて待機だ。NとFのいずれかが、ここからZ病院に潜入してリモコン操作を完了させる。操作が終わり次第、このバス停付近へ戻れ。私とリーダーもここで合流する。“スナイパー”、直ぐに駐車場から車を引き出して、αポイントへ向かってくれ。NとFは“撤収作業”が完了したら、αポイントの“スナイパー”の車内で待機だ。各自、荷物は必要なモノ以外は、ここへ運び込め。では、速やかにかかれ!」「はい!」3人は司令部を出て各自の部屋へ戻った。「では、リーダー。いよいよ機動部隊と遊撃隊の配置だ。もう腹案は出来ているだろう?」ミスターJはリーダーに問う。「はい、インターへ向かう幹線道路を重点に、車両の配置を考えました。逃走するにしても、行先は成田に決まっていますので、インター入り口付近にも車両を配置します。追跡の中心は“スナイパー”になりますが、車を乗り捨てられた場合を考慮すると、半径2キロ以内に集約するのが限度になります」リーダーは別の地図を広げて説明する。「Z病院周辺の最寄り駅は、カバーすると言う訳か。徒歩で逃げられる確率は低いし、警察も逃走されれば非常線を張り巡らせるはずだ。我々の配置はこれでいいだろう。車両の数に措いては、到底警察には敵わない」ミスターJは配置に同意した。「分かりました。では、大隊長に連絡して各車両を配置に向かわせます!」「よし、直ぐにかかれ。リーダー、大隊長にトラックを回すように言っておけ。今のうちに、積み込みを始めないと司令部の“撤収作業”に影響が出る」「1時間後でよろしいですか?」「そうだな。KとDBに悟られる前に済ませたい。大隊長へさっきの地図も届けなくてはマズイ。1時間後に着けてくれ」「分かりました」リーダーは携帯で大隊長を呼び出し始めた。N坊とF坊、“スナイパー”も司令部に荷物を運びこみ始めた。ミセスAのボストンバックは2人がかりで持ち込まれた。「何でこんなに重いんだ?」「気を付けろ!破けたら最期だ!」N坊とF坊が口々に言う。「ミスターJ、ミセスAのボストンバック4つ、取扱い要注意でお願いします」N坊が願い出る。「何だ?!この化け物の様なバックは?」「ミセスAに聞いてください!クローゼット丸ごと入ってるらしいので!」「うーむ、とにかく気を付けよう」ミスターJも呆れながら言う。いよいよ、矢は弦を放れようとしている。慌ただしく続けられる作業は、分刻みのスケジュールに沿って動き始めた。決戦は午後3時。各自は可能な限り急いで作業に取り組み始めた。

DBは悩んだ。当初は、海外逃亡など考えてもいなかった。だが、Kは本気で尋ねている。「DB、お前の安全の為でもあるんだ。どうする?」パスポートは持ち歩いているし、手持ちのキャシュもソコソコある。1週間ぐらいなら、海外へ行けるだけの用意もしている。DBは悩んだ末に「では、俺も高飛びするとしよう」と答えた。「よし!これで安心だ。では、行先を決めよう。香港、上海、シンガポールの3つだ。俺は香港を取らせて貰う。DB、残るは2択だ。どちらにする?」Kは2枚の航空券を出した。「ならば、上海を選択する。国内線で香港へ飛べるからな」DBは上海行きの航空券を取った。「分かった。シンガポールの分は、成田でダフ屋に売って金に換えよう。逃走資金は多いに越したことは無い」Kは航空券を懐に入れると「日本に凱旋できるまで、左程の時間はかからないだろう。Yが失脚しさえすればいいのだ。今度こそ、我らが勝つ番だ!」Kは自信に溢れていた。Y副社長は失脚し、自分達の天下に取って替われると、疑いすら抱いていなかった。計画は完璧、後腐れも無く事は済むはずだった。だが、知らぬ間に張り巡らされたワナに堕ちるのは、KとDBの方だった。しかも2匹は“まったく気付いていない”のだ。「DB、そろそろ片付けにかかろう。今日でこのホテルを引き払う。車も出さなくてはならない。チェックアウトまで、あまり時間は残っていないぞ!」「ああ、最後の打ち合わせもしなくてはならない!肝心の場面でボロが出るのはマズイ」「その通りだ。DB、名演技を見せてもらうぞ!」「任せて置け!ハリウッドからスカウトが来る位の演技をして見せようじゃないか!」DBは腹を打って自信たっぷりに言った。これが2匹の最期になるとは、当人たちも知る由も無かった。音を立てて迫りくる包囲網に、2匹はまだ気づきもしていなかった。