若生のり子=誰でもポエットでアーティスト

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生き物語ー自然は尋常ではない!136話「ザクロは語る・カニバリズム」

2021-12-01 | 現代美術
世界各地で栽培されており、古今東西人間とのかかわりのたいへん深いザクロです。
エジプト神話、ギリシャ神話、ローマ神話にも語られ、多産と豊穣の象徴、復活の象徴等とされています。
日本では豊穣や子宝に恵まれる「吉木」とされる地域がある一方、凶事を招くとして忌み嫌われる地域もあります。
ザクロは人肉の味がすると言われますが、それは仏教説話の鬼子母神からきているそうです。要約すると。
=鬼子母神は五百人の子供を産んだが、兇暴な性格で人の子を盗んでは食べていた。お釈迦様が一計を案じて彼女の子供をさらって隠したとき、彼女は悲しみで泣き叫びました。それ以後、子を失った母親の悲しみを理解し悔い改め、安産を司る良い神様に変身しました。
そして、お釈迦さまは、人の子の代わりにザクロの実を食べよと戒めました。だから鬼子母神像は、右手にザクロを持っています。
カニバリズムの風習は日本にはありませんが、、、?
ルビーのように美しい透明な赤いジューシーな部分を食するのですが、そのほんの少しのところが、最初は甘く、すぐに酸っぱくなり、終いには苦くなるのです。実の大半は種でほろ苦く、無理して噛み割って食べるととても苦くて味気ない。
甘くて、すっぱくて、ほろ苦い、まさに人生の味です。
だから、人肉の味に似ているというメタファーなのだと勝手に解釈したい。

武田泰淳の小説「ひかりごけ」=人肉を食べる罪=
わたくしにとって、忘れることのできない小説のひとつです。
戦争という極限状態における人間の筆舌し難い哀しい非情さ

「この作品では最初から最後まで安易な救済をもちこまず、徹して宿命の行方を描こうとした。そこに浮かび上がるのは不気味な人間の姿そのものなのである。これはひとり武田泰淳にして描きえた徹底である」=松岡正剛の千夜千冊

霊峰富士山麓の富岳風穴で、実物の「ひかりごけ」を見ました。
洞窟に生息していたので、一層怪しげでこの世のものと思えない冷ややかな美しさで緑色の光を放っていました。