8月15日に思ったこと

2011-08-16 23:12:01 | 日記
 猛暑が続く。湿度も高い。少し動いただけで、全身に汗が噴出す。

 夏休みを3日とって、実家にいる母、妹弟と過ごした。そして、2年ぶりに高校時代からの友3人に会った。自然に素直に、率直に話ができ、意見もいってくれる。私にとっては大切な人たちで、人生でめぐり合えた幸運に感謝している。

 家に戻ったら、子どもたちも帰ってきて、一家全員が揃った。食事の世話に追われたが、楽しかった。ただ、ブログはちょっと時間が空いてしまった。

 
 昨日、8月15日、NHKで、「渡辺謙アメリカを行く」を見た。元運輸長官のノーマン・ミネタとのインタビューの中で、第二次世界大戦中の日系人収容所(Concentration Camp)が出てきた。太平洋戦争が始まり、太平洋沿岸に住んでいた日系人が強制立ち退きとなり、砂漠などに急ごしらえされた収容施設だ。アメリカ政府は、Relocation Center(転住センター)と言っていたけれど、実際は強制収容所に他ならない。私の修士論文のテーマは、『東京裁判の通訳研究 ― 東條英機証言を通じて ―』だったので、当時のことは、背景として、いろいろ調べた。テレビを見ていたら、それらも含め、論文に関することをいろいろ、思い出した。

 論文に取り組んでたのは、1990年の半ばだ。困ったのは、当時、東京裁判の通訳に関する資料が、ほとんどなかったことだった。東京裁判の速記録を国会図書館で調べると同時に、まだ生存されているであろう当時の通訳者を捜すのに躍起になっていた。六本木の外務省の資料館で事情を話して関連資料を見せてくれるように、頼みこみ、何とか手がかりを得たとき、本当にうれしかった。でも、やっと特定できた島内敏郎氏(東京裁判の通訳者で一番、勤務回数が多かった。外交官)に連絡はとれたが、もうご病気が悪く、話を聞くことはできなかった。お会いできないことが分かったとき、正直、落胆した。結局、当時の通訳者、島田正一氏(島内氏に次いで勤務回数が多かった。通信社記者)に会えたのは、皮肉なことに、修士論文を提出してからだった。島田氏のことは、『大東フォーラム』13号(2000年)の特集のなかで、インタビューとして、恩師の近藤正臣先生と一緒にまとめた。非常に貴重な資料になっている。その他、特集の中には、私が書いた「東京裁判とモニターの役割」もある。

 この『大東フォーラム』は、帰米2世(若いころに日本で教育を受けて、そのあとアメリカに戻っている)で東京裁判のモニターだった伊丹明についての特集だった。山崎豊子の『二つの祖国』、NHK大河ドラマ『山河燃ゆ』の主人公 天羽賢治のモデルだ。戦前、大東文化大学に在学していた。大学院の通訳演習室の壁には、東京裁判でのヘッドフォンつけた伊丹明のレリーフが組み込まれている。



 東京裁判の正式名称は、極東国際軍事裁判所だ。映像で東條英機がヘッドフォンをしているシーンが出てきたのを覚えている人もいるだろう。市ヶ谷の陸軍大学校の大講堂を改造して法廷にし、そのときに通訳ブースが設置された。東京裁判よりも前に開廷していたニュルンベルグ裁判(ナチス・ドイツの戦争犯罪人を裁いた軍事裁判)ですでに使われていたIBMの通訳システムを使うのがよいだろうということで、法廷自体の造り付けのブースになったのだ。ただ、ニュルンベルグでは同時通訳が行われたが、日本での最初の同時通訳は東京裁判ではない。東京裁判ではIBM装置を使ってはいるけれど逐次通訳だった。
 
 ニュルンベルグ裁判と東京裁判はよく対比されるが、このように、通訳に関してもかなり違う。ニュルンベルグでは、Léon Dostertというアイゼンハワー付きのフランス語通訳者だった人が主席通訳者だった。裁判のあとは、ジョージタウン大学大学院言語学研究科を作り、通訳翻訳の高度高等教育を進めた。ジュネーブ大学大学院などでの通訳教育がさらに進められたのも、ニュルンベルグの経験を踏まえてのことだった。
 東京裁判では、日本人通訳者と連合軍から帰米のモニターが4人関わっている。通訳者は、外務省関係者や国際的な通信社の記者だったりで、のちにフリーランスの通訳者になった人はいないし、通訳者教育に関わってもいない。今の会議通訳の始まりは、1960年以降の同時通訳者の登場(東京オリンピック、アポロの月面着陸以降)による。教育もそれ以降、スクールをベースにしたもので、大学院教育も1995年大東文化大学での修士プログラムまでできていない。 
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