三種の神器のひとつ、八尺瓊勾玉は連珠(レンシュ・首飾りのこと)であったと推測する専門家は多い。縄文晩期~古墳時代までの勾玉は、つなげた紐が腐朽して痕跡はないものの、首飾りであったことがわかる状態で出土することも多いようだ。
文献史学的にも日本書紀に「八尺瓊の五百箇御統」(ヤサカニノイオツのミスマル)と記述があったりするので連珠説だ。ミスマルは漢字だと御統・美須磨婁とも表記される首飾りの古語であるらしい。
となると、どんな素材で繋げたのかと気になるのが、つくる立場のヒスイ職人というもので、考古学者に聞いても「そこまで考えてなかった」と言われたりする。
わたしがレガリア(王権継承の象徴物)や神社の御神宝として、数千年の使用に耐えるヒスイ勾玉の首飾りを注文されたら、どんな素材で繋げるだろう?
絹紐や麻紐では耐用年数が低いから、金やプラチナなどの錆びない貴金属ワイヤーで繋げるしか選択肢はない。
ところが江戸期以降の考古家・好事家たちのコレクションに、金や銀のワイヤーで意匠を凝らした遺物はあっても、報告書のある出土例となるとなかなか見つからない。

写真は江戸時代に福岡県の周船寺古墳群から見つかったと伝わる、金線を勾玉に通して金鎖で繋げた古墳時代の遺物とされる唯一の例?かな。現在は重要文化財に指定されて神戸の白鶴美術館の収蔵されている。
*写真は雑誌「目の眼」からお借りした
ただし詳細な出土状況を調べてもわからず、もしかしたら江戸時代に見つかった後に金鎖でつなげた可能性もある訳だから、わたしはこの状態で出土したという点については留保している。
スピリチュアルおたくのような野次馬根性で知りたい訳ではなく、勾玉探偵としての学術的な探求だし、注文されたならどうする?という仮定で考えているのですネ。
天皇家に代々つたわった神器に敬意をもつことは重要だし、神秘的なモノは神秘のまま残したいという想いも強い。
嗚呼、遥かなり八尺瓊勾玉・・・これでいいのだ。
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