日本の「嫌韓」、韓国の「反日」の根っこを知らない保守層が多いことに驚く。
某保守政党のサポーターと話していたら、江戸時代は「朝鮮通信使」を大歓迎していたのに、明治期の「韓国併合」から民族差別がはじまったことも知らずに嫌韓を語っていたのは如何なものか。

そんな保守層に観てほしいのが、1970年代の京都を舞台に、在日朝鮮人高校生と日本人高校生の対立を描いた映画「パッチギ」だ。
「フォーククルセダーズ」の加藤和彦が音楽監督を担当し、名曲「イムジン河」「悲しくてやりきれない」「あの素晴らしい愛をもう一度」が、要所で印象的につかわれ、在日朝鮮人の悲愁と「嫌韓」「反日」に至った経緯が見事に描かれている。

主人公が恋する女学生役の沢尻エリカさんのチマチョゴリ姿が清々しい。主人公のノンポリ高校生が諍いが絶えない在日朝鮮人高校と相互理解のために、サッカーの交流試合を申し込みに朝鮮高校を訪れ、吹奏楽部が妙なる楽曲を奏でる中に沢尻をみつけて一目惚れしたことで「イムジン河」を知ることになる。
恋愛の部分を除けば実話が元になっていて、後年にフォーククルセダーズが「イムジン河」を発表することになる。
沢尻と付き合いたい一心で「イムジン河」をおぼえたノンポリ高校生は一族の花見に誘われ、ボクは味方ですという若干の自負をもって「イムジン河」を披露する。

しかし長老から「国会議事堂のタイルを張ったのは誰だか知っているか?」と問い詰められる。この映画のキーパーソンは長老を演じる笹野高史さん。渋い演技をみせてくれる。
日本人大多数はなにも知らない、知らなすぎるのだ。
だから在日朝鮮人は「悲しくてやりきれない」し、若者はパッチギ(突き破る・頭付き)する。

本当の主人公は高岡蒼佑さんが演じる、沢尻の兄貴役で朝鮮高校の番長のアンソン。パッチギ(頭付き)が得意技。抜き身の刀のような不良だが、実は家族思いの役柄を好演していて、格好よくて巧い俳優さんだ。実在のモデルがいるそうだ。
シリアスをコメデイタッチで描かれたりすると、哀しみはよりいっそう深くなり、映画の登場人物がいつまでも心に息づく。
井筒監督スゲーな。
「嫌韓」の意識改革はまずは知ることから。
映画で歴史の勉強しましょ。