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縄文人(見習い)の糸魚川発!

ヒスイの故郷、糸魚川のヒスイ職人が、縄文・整体・自然農法をライフワークに情報発信!

「悲しくてやりきれない」ひとびと・・・在日朝鮮人の悲愁を描いた映画「パッチギ」

2025年05月24日 08時36分01秒 | 記録しておきたいヒト・モノ・本・映画
日本の「嫌韓」、韓国の「反日」の根っこを知らない保守層が多いことに驚く。
 
某保守政党のサポーターと話していたら、江戸時代は「朝鮮通信使」を大歓迎していたのに、明治期の「韓国併合」から民族差別がはじまったことも知らずに嫌韓を語っていたのは如何なものか。
そんな保守層に観てほしいのが、1970年代の京都を舞台に、在日朝鮮人高校生と日本人高校生の対立を描いた映画「パッチギ」だ。
 
「フォーククルセダーズ」の加藤和彦が音楽監督を担当し、名曲「イムジン河」「悲しくてやりきれない」「あの素晴らしい愛をもう一度」が、要所で印象的につかわれ、在日朝鮮人の悲愁と「嫌韓」「反日」に至った経緯が見事に描かれている。
主人公が恋する女学生役の沢尻エリカさんのチマチョゴリ姿が清々しい。主人公のノンポリ高校生が諍いが絶えない在日朝鮮人高校と相互理解のために、サッカーの交流試合を申し込みに朝鮮高校を訪れ、吹奏楽部が妙なる楽曲を奏でる中に沢尻をみつけて一目惚れしたことで「イムジン河」を知ることになる。
 
恋愛の部分を除けば実話が元になっていて、後年にフォーククルセダーズが「イムジン河」を発表することになる。
 
沢尻と付き合いたい一心で「イムジン河」をおぼえたノンポリ高校生は一族の花見に誘われ、ボクは味方ですという若干の自負をもって「イムジン河」を披露する。
しかし長老から「国会議事堂のタイルを張ったのは誰だか知っているか?」と問い詰められる。この映画のキーパーソンは長老を演じる笹野高史さん。渋い演技をみせてくれる。
 
日本人大多数はなにも知らない、知らなすぎるのだ。
だから在日朝鮮人は「悲しくてやりきれない」し、若者はパッチギ(突き破る・頭付き)する。
本当の主人公は高岡蒼佑さんが演じる、沢尻の兄貴役で朝鮮高校の番長のアンソン。パッチギ(頭付き)が得意技。抜き身の刀のような不良だが、実は家族思いの役柄を好演していて、格好よくて巧い俳優さんだ。実在のモデルがいるそうだ。
 
シリアスをコメデイタッチで描かれたりすると、哀しみはよりいっそう深くなり、映画の登場人物がいつまでも心に息づく。
井筒監督スゲーな。
 
「嫌韓」の意識改革はまずは知ることから。
映画で歴史の勉強しましょ。
 
 
 
 
 

わたしたちは星の子供たち・・・NHKラジオ「子ども科学電話相談」の名回答にオラは泣いた

2025年05月14日 06時48分47秒 | 記録しておきたいヒト・モノ・本・映画
オラはテーマ曲が流れるだけでウキウキするほどNHKラジオ「子ども電話相談室」の大ファン。
ちょっと前に「さそり座のアンタレスが爆発してなくなっちゃうのはホントですか?」という、星が大好きな6歳の女の子の質問の回答にグッときた。
さそり座のアンタレスはいつか爆発してしまうが、わたしたちが生きている間は大丈夫だし、爆発しても光が届くのに何年もかかる・・・らしい
 
「星にも一生があり若い星は青いが、一生の終わりにちかづいて赤く膨らんだのがアンタレスで、いつかは爆発して小さな星のカケラになる。
そうした小さな星のカケラたちが、次の新しい星の材料になり、死んでは生まれ、そんな星の欠片で地球がうまれ、わたしたち人間もうまれた。
人間の体のなかの鉄やカルシウムといった元素は、星のカケラからもらったものだから、わたしたちは星の子供たち・・・。」
私たちは星の子供たち・・・「はじめ人間ギャートルズ」のエンディング曲、かまやつひろし作曲の「やつらのバラード」がピッタリくる深淵な回答。
 
宇宙は膨張と収縮をくりかえすと聞くが、星の爆発を死とするなら膨張期は死にむかう過程でヒトの一生と同じ・・・死は新たな生の始まりと仏教哲学してしまったw
 
時という漢字は脈動が原義で、インドのヒンドゥー語で時はカーラといい語源はヒンドゥー教の時を司る破壊神の名だ。
19世紀のインドの聖人ラーマ・クリシュナは、宇宙の根源原理の神ブラフマンはただ「在る」だけだが、時の神カーラと結婚することでこの世が生まれる。つまりはブラフマンは時計でカーラはゼンマイ仕掛けで、時計があるだけでは時間を知ることはできず、ネジを巻いてはじめて時間を知ることができると説いている・・・なんだか「わたしたちは星の子供たち」と繋がっていくではないか。
回答者は渋谷プラネタリウムで主任解説員してらっしゃる「癒しの星空解説員」こと永田美絵先生。
ザブトン一枚!!
オラも好奇心いっぱいの知りたがりだから「おとな電話相談室」をやってほしいねぇ。
 
 
 
 

都合の悪い史実を自虐史観とする人々に観てほしい動画・・・【戦時下の性被害】95歳が初めて語る 78年間苦しみ続けた戦争の記憶 

2025年05月13日 07時04分01秒 | 記録しておきたいヒト・モノ・本・映画
「ひめゆりの塔」について、自分が理想とする国家像に都合がわるい史実を、自虐史観の歴史修正と演説した自民党の西田昌司参院議員議員の発言が話題になっているが、そんな極右政治家に投票する人に視聴してほしい証言動画。
 
 
【戦時下の性被害】95歳が初めて語る 78年間苦しみ続けた戦争の記憶 #黒川開拓団 #中京テレビドキュメント
 
満州に進攻したソ連軍に対し日本軍は、「ソ連軍は丸腰の居留民に手を出すまい」「スターリンは西郷南洲のうように話がわかる男」と独善的な理想を言い訳とし、居留民を置き去りにして逃亡した。
 
あろうことか日本軍は橋を爆破して逃げたので居留民は逃げる術もなく、取り残された黒川開拓団はソ連軍に保護をしてもらう条件で若い女性15名を慰安婦として差し出し、帰国後の村民は女性たちを淫売と差別し事実を隠蔽した。
 
国家や村に何度も裏切られた15名の女性の小さな声に耳を傾けて、戦争のリアリティを勉強してほしい。
何度も書くが、彼女たちは損害賠償をもとめているのではなく、闇に葬られた名誉の回復と、二度と繰り返してはいけない過ちと訴えているのだ。
 
西田議員の発言についても、居留民を置き去りにした日本軍と同じご都合主義の論理が透けてみえる。
 
 
 

改憲を論じる前にナゼ?ナニ?ダレガ?を勉強しましょ・・・半藤利一著「日本国憲法の二〇〇日」

2025年05月04日 06時57分59秒 | 記録しておきたいヒト・モノ・本・映画
改憲を論じる前に、敗戦から憲法施行までの、「ナゼ?ナニ?ダレガ?」を、本書で勉強してほしいですナ。
ブックスサカイ閉店間際に買った本の1冊・・・
 
果たして日本国憲法はマッカーサーに押し付けられたのか?
狂信的なナショナリストのテロに戦々恐々と進駐してきた米軍を驚りかせたのは、街を丸腰で歩ける予想外の歓迎ムードだった。
 
また「天皇は神だと思うか?」という質問に「尊崇しておりますが、神だなんて思ったことはありません」と笑って答える日本人だった。
 
漢詩の素養のあったらしい吉田茂も、終戦後に現人神(あらひとがみ)という言葉を知って、読めなかったらしいw
 
当時16歳だった半藤利一さんも、「暴支膺懲」(ぼうしようちょう・横暴な中国を懲らしめる標語)や「遂げよ聖戦 興せよ東亜」と、軍国主義の旗振りをしていた人が、戦後は豹変して「天皇制廃止!」と赤旗を振って歩く節操の無さに呆れたそうだ。
 
扇動する人は扇動されやすい人でもあり、変わり身も早いという教訓。それはそのまま陰謀論やフェイクニュースを拡散したがる人に当てはまる。
 
事前に一般人が知っているクーデターなんかある訳ないのに、4年前のアメリカ大統領選の後に「選挙が盗まれた!ワシントンは米軍に包囲されて大統領就任式にクーデターがおこります!アメリカは共和国となりトランプさんは初代大統領に就任します!」とSNSで拡散してた人たちは、その後は黙っちゃたのが好例。
 
災害時にフェイクニュースを拡散すると人命にも関わる最悪の事態を招きますヨ。
 
なにごとも原点に立ち返らないと議論もあったもんじゃない。
明治にはじまり、昭和初期に創作された皇国史観が、あたかも大昔からある日本文化であるかのように勘違いしている人も読んでほしいし、それらがSNSで拡散されていく時代に危うさを感じる人にも読んでほしい。
 
 
 

ソ連軍に慰安婦として差し出された乙女たちの涙・・・ドキュメンタリー映画「黒川の女たち」

2025年04月29日 07時48分19秒 | 記録しておきたいヒト・モノ・本・映画

今日は昭和の日だそうだが、忘れちゃこまるのが戦争体験者たちの証言の数々。将兵ばかりが戦争体験者ではない・・・

生半可な気持ちでは観ることのできないドキュメンタリー映画「黒川の女たち」が完成したそうだ

 

終戦間際に不可侵条約を破ったソ連軍が満州に侵攻し、「無敵皇軍」は国境にわずかな部隊に死守を命じて橋を爆破して逃亡し、26万人以上はいたらしい在留邦人は置き去りにされた。
 
満州地区で置き去りにされた在留邦人のなかには、熊本の満蒙開拓団のように集団自決した例も多かったようだが、岐阜県黒川村の満蒙開拓団は、15人の未婚女性たちをソ連軍に慰安婦として差し出して保護をうけた。
「無敵皇軍」のなかには立派な将軍もいて、蒙古地区を守備する根本博中将は8月15日の終戦後の武装解除命令に抗明し、倍以上の兵力のソ連軍に対し知略を尽くした獅子奮迅の戦いで食い止めている間に、4万人の在留邦人を列車で後方に避難させて、蒋介石の支援をうけて早期帰国を実現した神様みたいな人。

話しをもどすと、映画とは別になるが慰安婦にさせられた女性の証言はこちら

【戦時下の性被害】95歳が初めて語る 78年間苦しみ続けた戦争の記憶 #黒川開拓団 #中京テレビドキュメント

帰国後の黒川村民は、村のために我慢してくれと慰安婦にさせられた女性たちの事実を隠蔽し、感謝のひと言もなくキズモノとさげすんだので、彼女たちは黒川村を離れざると得なかった。

高齢になってから実名で公表した女性もいたが、マスコミは興味本位に報道したし、心ないバッシングも多かった。
 
黒川村の遺族会が彼女たちに謝罪したのは、戦後78年も経ってからだ。
 
彼女たちは賠償責任を問うているのではない。国策で移住した異国の地で無情にも軍隊から見捨てられた事実、歴史の闇に葬られた哀しみの事実を知ってほしいのだ。
 
 

大八洲、おおやしま、嗚呼!オオヤシマ・・・森浩一著「日本神話の考古学」

2025年04月20日 08時28分39秒 | 記録しておきたいヒト・モノ・本・映画
*4月30日閉店「ブックスサカイ」の本の注文受付は本日20日まで!いそげ~!
考古学者の著作で実証できない神話をあつかう場合は、本題の間のコラム欄で箸休めとして扱うのが定番なのだが、本書は考古学の立場から神話を読み解いているので素人でも読みやすい。
 
日本の国土のことを記紀では大八洲(おおやしま)と呼ぶ。おおやしま、オオヤシマ・・・なんだか格好いい響きでございます。
 
八つの島とは主に西日本のことなのだが、著者の森浩一先生は陸上ルートが定まっていない時代は、海上ルートがヒトとモノを運んでいたから、陸続きであっても島の感覚なのだと解説する。
この解説は丸木舟やシーカヤックで「海のヒスイロード」を検証した時に、航海術をもたない人々にとって海は陸のお終いだが、航海術に長けた人々にとっての海は、世界への玄関口なのだと実感していて大いに賛同する。
 
神話を独善的に解釈したニューアカデミズム論者の著作やYouTube動画を鵜呑みにして、「隠された真実はこれ!」と喧伝する人は多いが、たまには考古学の本でも読んだらどうだろうかね?考古学者は「真実」を隠している訳でなく、実証できないことは扱わないのが考古学なのだと理解できるかもw
 
その点は本書は「神話に興味はあるけど考古学の知識がない」タイプの人の入門書にいいのではないかな。
 
 
 

縄文納豆の可能性とアジアマイノリティのおふくろの味・・・高橋秀行著「謎のアジア納豆」

2025年04月16日 06時58分44秒 | 記録しておきたいヒト・モノ・本・映画
アジアの納豆というと、固形のテンペが健康食として日本のスーパーでも売られてるようになったが、わたしはカンボジアの市場で糸をひく納豆を食ったし、沢庵・竹輪・ラッキョウも売られていて驚いたことがある。
カンボジアのトンレサップの市場にて。左が沢庵で右が納豆だが、納豆は糸引きがすくなくサラサラしていた。
竹輪やガンモドキもあった。海藻を食うのは日本だけという民族優位思想wがあるが、朝鮮料理にはワカメスープを忘れちゃ困るし、メコン川流域には川海苔の板海苔だってある。
左がラッキョウで右が沢庵?
 
ところがドキュメンタリー作家の高野秀行さんは驚くだけに終わらせず、国内海外の納豆を徹底調査して、歯切れのいい文章で解説したのが本書。
509ページもある大書なのに驚きの連続で面白いのなんの。高野さんは学術的な検証をする一方、文章は軽快で「納豆は人を童心にもどす」「納豆好きに悪い人はいない」「納豆は人の輪にはいると輝く」と随所で笑わせてくれる。
 
納豆菌(枯草菌)は藁だけでなく、ホウバ・笹・ススキ・イチジク・シダ・バナナの葉っぱにもいて、むしろ藁より労力は少なく主流というのも意外。
 
最も素朴なつくりかたは、茹でた大豆を葉っぱに包んで囲炉裏の火棚にのせて発酵させただけの、東インドアッサム州の山岳民族ナガ族の納豆だとか。うちの爺さんがいたインパール戦の激戦地付近だ・・・。
 
そこで閃いた。
5,000年前の山梨の縄文遺跡では、在来原種のツルマメから大豆を栽培していたそうだから、縄文時代に納豆があった可能性があるではないか!すなわち縄文納豆だ。
 
しかも秋田をはじめとしたアジア各国の納豆文化圏では、短期熟成ものは生で食べ、長期熟成ものは味噌のような調味料的につかわれ、こちらを出汁にした納豆汁も日常食だそうだから、次回の縄文キャンプではテンペを調味料にした縄文鍋をつくってみることにした。
あったまるそうだ。
 
納豆嫌いの大阪人は多いが、堺の千利休は懐石で納豆汁をだしていたそうだから、幕末に味噌や出汁が普及しはじめる以前の関西でも、納豆は万能調味料だったことが伺われる。
 
ただし明治の鉄道開通を契機にした水戸で、お土産用に藁苞納豆が大量生産されるようになる以前と、現在も秋田南部の横手市で手作りされている納豆は、わたしがカンボジアで食った納豆と同じく、糸があまりひかない納豆だそうだ。
 
しかしなぜ納豆が関西で食われなくなったのかは不明だそうだが、納豆汁がソウルフードの秋田南部には、県外にでてはじめて出汁の存在を知った人もいるくらい濃厚な味わいであるらしい。
 
味噌・醤油は、納豆から派生した発酵食品ではないかとする考察に膝をうつ。
ただし記録上は平安時代に源義家が秋田南部に攻め入った時に食った納豆が最古で、当時の軍用馬は茹でた大豆に藁をまぜたエサを食わせていたので、本書は馬に背負わせた時の体温で熟成されて納豆ができる条件はそろっていると考察している。深い!
 
謎が謎をよぶアジア納豆・・・急にテンペが食いたくなり「業務スーパー」に行ったら長期欠品だそう。
インドネシアの出稼ぎ労働者がいるから、糸魚川のような田舎でも売っているのですネ。
 
軍事政権に弾圧され、欧米に亡命したミャンマー少数民族コミュニティ、傭兵として世界中で戦っているネパールのグルカ族コミュニティでは、納豆が望郷の味として売っているそうだ。
海外で暮らすアジアのマイノリティのお袋の味、納豆が世界に広がっている。シンミリともさせる名著。
 
 
 
 
 

トランプ大統領のお気に入り映画の主人公・・・映画「市民ケーン」

2025年04月14日 07時03分05秒 | 記録しておきたいヒト・モノ・本・映画
アメリカのトランプ大統領の好きな映画が「市民ケーン」とするSNS投稿に、なるほどと納得。
奇才俳優オーソン・ウエイルズが脚本・監督・製作・主演をして、実在の新聞王ウイリアム・ハーストをモデルにした映画史上に名高い映画だが、アカデミー賞は多数のノミネートをされても受賞は脚本賞だけだったのは、ハーストが妨害工作をしたためとされている。
 
ハーストはピューリッツァー賞に名を残したピューリッツァーと報道合戦をした新聞会社の社長だ。事実を歪曲化したセンセーショナルな報道の乱発して発行部数を伸ばし大富豪になったが、映画ではその勃興から謎めいた死までを描いている。
 
当時スペインが支配していたキューバの政策に対し、新聞を売るためのフェイクニュースで世論を扇動して、アメリカの軍事介入を促した。
 
キューバに派遣した挿絵画家が「戦争になる気配はない」と報告すると、「私が戦争を起こすので、あなたは絵を描いてください」と言ったのは有名な逸話で、その結果に本当に戦争になってしまった。
 
余談だが、この時のアメリカ海軍に観戦武官として派遣されて、ハバナ湾の閉塞作戦の失敗の詳細な報告をしたのは、後に日本海海戦の作戦参謀に任命されることになる秋山真之だったことが、司馬遼太郎の「坂の上の雲」に書かれている。
 
噓八百のフェイクニュースで新聞を売りまくって大富豪になったハーストは、ヒトラーを「真の自由主義者」と礼賛もしたが、道義心よりチカラ(利益)こそ正義とする人だったようだ。フェイク情報を乱発するトランプ大統領とハーストは妙に符合する。
 
 

25時間の演説をしたコーリー・ブッカー上院議員は映画を観たよな・・・映画「スミス都へ行く」

2025年04月03日 06時51分25秒 | 記録しておきたいヒト・モノ・本・映画

アメリカ議会で25時間も演説して、トランプ政権を批判した民主党のコーリー・ブッカー上院議員は、戦前のアメリカ映画「スミス都へ行く」に感銘したに違いない。

コーリー・ブッカー上院議員の演説をYouTube動画で視聴したら、最後までしっかりした様子だったが、ネット検索したら元アメリカンフットボールの選手だったとか。

主人公のスミスは、子供に人気のある田舎者の善良なボーイスカウトの団長だが、ひょんなことからダム利権汚職グループの傀儡議員として指名されて、上院議員になる。
 
ところがスミスは純粋すぎるほどの理想主義者で、直情径行タイプの熱血漢だった。
 
汚職を知って加担できないと拒否したスミスは、濡れ衣をきせられ罷免議決されるが、最後の手段として議決を妨害するための25時間におよぶ大演説をして、民主主義とはなにかを訴えつづける。
高校3年の春に深夜放送で視聴して、海千山千の汚職グループに、徒手空拳で糾弾しつづける姿に涙がとまらなかった。
主役は「アメリカの良心」と謳われ、善良なアメリカ人を演じ続けた、若き日のジェームス・ステュチアート。
映画では25時間の演説の最後には声はしゃがれになり、ヨレヨレとなって失神する。
 
監督はヒューマンコメディの巨匠、フランク・キャプラで、二人とも反共思想をもつ保守派として50年代に吹き荒れた「アカ狩り」に協力したが、ステュチワート自身は演じた役柄と同様に、スキャンダルのない善良で良識的な人物だったようだ。
 
ブッカー氏の25時間の演説を売名行為と批判する人がいたら、「自由の国」なんだからやってみればいい。
 
ただし、わたしは政治家をヒーロー視せず冷静に客観視することにしている。救世主と熱狂される政治家がでてくるのは危険信号と歴史に学んだからだが、コーリーブッカー上院議員の今後を見守りたい。
 
現実は映画のようにハッピーエンドで一件落着とはいかないだろうが、民主主義のなんたるかを問い直す機会になればいい。
 
 
 

チーズナンを食って思い出したインド映画「ピザ!」・・・文化のグローバル化に物申す婆ちゃん

2025年04月02日 07時14分03秒 | 記録しておきたいヒト・モノ・本・映画

近所のインド料理屋でチーズナンなるものをはじめて食ったが、ピザとピタパンを足して二で割ったようで美味かった。

中空になったナンの中にチーズがはいっていて、熱いうちは食うたびに溶けたチーズがでてきて食いにくいけど美味いネ。西アジアにはガンモドキのような味と歯ざわりのカッテージチーズしかないから、外国人向けに開発した食い物だろうか。

インド映画「ピザ!」の主人公の兄弟が食ったら、なんていうかな?
カラスの卵を盗んでは食っている貧民街の兄弟が、街に外資系のピザ屋ができて300ルピーもするピザを食いたくなり、あの手この手でウエイ・トウ・ザ・ピザのロードムービーのようなコメデイタッチな文芸映画。
 
ピザを食いたがる兄弟の祖母は、ピザ屋のチラシの写真を頼りに、クレープのような伝統料理のマサラ・ドーサにトマトをいれてつくってくれるが、少年たちは納得できずに闇バイトに精を出す。
 
やっと溜めた300ルピーを握りしめてピザ屋にいったら、ここは貧乏人が来る店ではないと暴行されて追い返されるが、防犯カメラに写った顛末がテレビニュースとなり大騒動になる。
 
いつも裸足の兄弟はプロの俳優ではなく、カーストに入れてもらえないハリジャン(神の子)と呼ばれる、不可触選民なのかもしれない。
 
美男美女が出ず、歌も踊りもないこのインド映画は、深刻な格差社会の問題を扱いながら、すべてにおいてホドがいいヒューマンコメデイになっていて、昔の松竹コメデイをおもわせるホンワカした秀作に仕上がっている。
 
ラストに少年がアップになり呟くセリフがいい。
このラストで、いにも古風な少年の祖母が隠れ主人公の位置にいたことに気付いた。
この老婆の存在はインド文化の象徴といえ、西洋化がすすむインドに自国の文化を大事にしようと物申しているのではないか。