東北のお茶人から、予算内であれば意匠、音色などお任せするので、納期は気にせず納得のいく石笛を作って欲しいとのご注文。
「費用お構いなきこと、意匠お構いなきこと、期限催促なきこと」を条件に桂離宮造営を請け負ったと伝えられる、大名茶人の小堀遠州になった気分。
喜ばしい事に、最近はオーダ-品が増えてきたのだけど、こういった注文は職人冥利に尽きる。
完成した石笛、銘「バサラ」の透過写真。透光性が極めて優れたヒスイ。右端下が原石の姿を残した部分。
予算に見合うヒスイ原石・・・たまたま机に乗っていた端材が眼に留まった。
鮮やかな黄緑色が発色する部分が何も作れないほど端っこにある・・・普通ならカットして端材になってしまう箇所。
あまりにも綺麗なのでこの部分を活かせないもんか?
注文主がお茶人だから、異形・破調・歪形の石笛でも許してくれるかな?
順光だとこんな感じだが、荒々しく残した部分がケロイドのようで醜いと感じるか、野趣を感じるかは人それぞれ。私は面白しと感じ、お客様も共感してくれた。ただ単に未研磨の部分を残して完成させた訳ではないと、観る人が観ればわかるはず・・・だといいが(笑)
右端裏にものすごく綺麗な黄緑が部分的に発色しているのだが、実物通りの綺麗な写真が撮れなかったので表だけ公開(笑)
実の所、私は楽茶碗を造りだした長次郎を師と仰いでおり、長次郎のような作風をヒスイでも造り得たいものだと常々想い描いている。
版画家の棟方志功の自伝「わだはゴッホになる」に倣えば、オラは長次郎になりたい!
そして異形・破調・歪形こそ私好みなのだ。
こうなればヒスイを使った活花のようで、端っこの部分をどう活かすのかを考えるのが愉しい。
完成した石笛を「バサラ」と銘打ち、写真をメールしたら、「よくぞ!」と気に入って頂けた。
価値を共感できる事は喜び。
ひとつ殻を脱皮したように思う。
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