前回は循環血液量減少性ショック(Hypovolemic Shock)について整理した。
血が減ってるから一回拍出量も減っちゃう。心臓は回数で一回拍出量を維持しようとして心拍数を上げる。戻ってくる血も少ないから中心静脈圧(CVP)は下がる。末梢では大事な臓器に血液送るために血管しめるから末梢血管抵抗は上がる。皮膚表面は血が少なくなるからひんやりする。
これに対して輸液や輸血で循環血液量を確保しつつ、循環血液量が減っちゃう原因に対し対策をとる。ここまでが前回の復習。
補足。私のICUはあまり外傷が来ないから救急の同期からの話を元に知識だけ。
外傷のショックは9割が循環血液量減少性(出血性)ショックである。
骨折は意外と出血が伴う。簡単に出血量を予測する早見表はこちら。
今日は心原性ショック(Cardiogenic Shock)について整理する
心原性ショックはその名の通り心臓のポンプとしての機能がおかしくなって心拍出量が低下して起こる。
まずは心臓のおさらい。
心臓は両サイドを肺、前は胸骨、後ろは胸椎、下は横隔膜に囲まれた縦隔の中にある。
ざっくりいうと左斜め下、左斜め前を向いている。
2つの心房と2つの心室に4つの弁がある。
全身から還ってきた血液は上・下大静脈から右心房→(三尖弁)→右心室→(肺動脈弁)→左右肺動脈→肺→左右肺静脈→左心房→(僧帽弁)→左心室→(大動脈弁)→全身と流れる。
なので右心系は肺循環(小循環)、左心系を体循環(大循環)という。全身に血液を送り出すのは左心室なので当然一番でかい。
略語でよく言われて混乱することも多いので軽くまとめると
心室はV(ventricle)、心房はA(atrium)、右はR(right)、左はL(left)
大動脈Ao(aorta)、肺動脈PA(pulmonary artery)、肺静脈PV(pulmonary vein)、上大静脈SVC(superior vena cava)、下大静脈IVC(inferior vena cava)
三尖弁 T弁(tricuspid valve)、肺動脈弁 P弁(pulmonary valve)、僧帽弁 M弁(mitral valve)、大動脈弁 A弁(aortic valve)
慣れるまでは何で略語使うんだよ、わかりズライじゃん、と思ってたがなれると略語の方が話しやすい。お互いが共通認識してるかが大事。
話は戻って
心臓は1分間に60~100回拍動し一回約70ml、1分間に約5Lの血液を送り出す(安静時)
心臓の筋肉には筋肉の収縮・拡張により血液を送る固有心筋と、固有心筋を動かすための電気刺激の発生と伝導を行っている特殊心筋がある。
特殊心筋で形成する刺激伝導系が正常に機能することにより心臓は最大の機能を発揮する。
刺激伝導系
洞結節(sinus node)→房室結節→ヒス束→右脚・左脚→プルキンエ繊維
これが正常に機能しない(不整脈)とポンプとしての機能が損なわれてしまう。
心臓というポンプは全身に血液を送らなきゃならないし休むことは許されないので、酸素や栄養をたくさん必要とする。
これを心臓におくる血管が冠動脈である。
これが詰まる病気が狭心症や心筋梗塞である。
冠動脈は大動脈の基始部(根本のところ)から2本でてて右冠動脈(RCA:right coronary artery)と左冠動脈(LCA:left coronary artery)に分かれる。
左冠動脈はさらに左前下行枝(LAD:left anterior descending coronary artery)と左回旋枝(LCX:left circumflex coronary artery)に分かれる。分かれる前の部分を左冠動脈主幹部(LMT:left main trunk)という。
冠動脈には番号が付けられていて番号で大体どの辺の話か分かる。
まず最初に覚えるのは番号は全部で15番まであるということ。
それで#1~#4は右冠動脈の番号。番号の若い方が中枢側(根本の方)。
つまり4番が詰まるよりも1番が詰まった方がヤバイっとこと。
#5~#15は左冠動脈の番号で#5が左冠動脈主幹部(LMT)。
#5が詰まると左側全滅だから完全閉塞では突然死ってことになる。
#6~#10が前下行枝で、#11~#15が回旋枝。
それぞれの中で番号が若いところが詰まるほどヤバイ。
冠動脈が詰まると、酸素や栄養がこない心臓は働けなくなってポンプとしての働きが損なわれる。
前置きが大変長くなったけど心原性ショックは虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)や心筋炎による心機能の低下、弁膜症や心室中隔欠損による機械的・構造的欠陥、不整脈などのために心臓のポンプ機能不全が生じ、心拍出量の低下により起こる。
心拍出量は低下、脈拍は回数で補うため上昇(不整脈が原因であれば低下することももちろんある)、心臓から前に血液を送れないから後ろにたまるので動脈圧はやたら低いのに静脈圧はすごく高い(血圧低下、PAWP上昇→肺うっ血、CVP上昇、頸動脈の怒張)ということになる。
治療は心筋機能の改善で血管が詰まってるならカテーテルで広げたり薬で溶かすとか、不整脈なら薬使ったりペースメーカー入れたりということになる。
心不全の治療に関してはフォレスターの分類が参考になる。肺動脈楔入圧(PAWP:pulmonary artery wedge pressure)は正常値が6~12mmHgで肺動脈圧(PAP)の拡張期圧と近似する。
PAWPの上昇は左心不全、減少は循環血液量の減少を示唆する。
(フォレスターの分類)
今日はここまで。何か話がどんどん広がって広く浅くになっちゃうから困る。
不整脈とか虚血性心疾患とかまた詳しく整理してアップしていきたいな。
残るショックは閉塞性ショックと血液分布不均等性ショック。
がんばります。
よろしくお願いします♪
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血が減ってるから一回拍出量も減っちゃう。心臓は回数で一回拍出量を維持しようとして心拍数を上げる。戻ってくる血も少ないから中心静脈圧(CVP)は下がる。末梢では大事な臓器に血液送るために血管しめるから末梢血管抵抗は上がる。皮膚表面は血が少なくなるからひんやりする。
これに対して輸液や輸血で循環血液量を確保しつつ、循環血液量が減っちゃう原因に対し対策をとる。ここまでが前回の復習。
補足。私のICUはあまり外傷が来ないから救急の同期からの話を元に知識だけ。
外傷のショックは9割が循環血液量減少性(出血性)ショックである。
骨折は意外と出血が伴う。簡単に出血量を予測する早見表はこちら。
今日は心原性ショック(Cardiogenic Shock)について整理する
心原性ショックはその名の通り心臓のポンプとしての機能がおかしくなって心拍出量が低下して起こる。
まずは心臓のおさらい。
心臓は両サイドを肺、前は胸骨、後ろは胸椎、下は横隔膜に囲まれた縦隔の中にある。
ざっくりいうと左斜め下、左斜め前を向いている。
2つの心房と2つの心室に4つの弁がある。
全身から還ってきた血液は上・下大静脈から右心房→(三尖弁)→右心室→(肺動脈弁)→左右肺動脈→肺→左右肺静脈→左心房→(僧帽弁)→左心室→(大動脈弁)→全身と流れる。
なので右心系は肺循環(小循環)、左心系を体循環(大循環)という。全身に血液を送り出すのは左心室なので当然一番でかい。
略語でよく言われて混乱することも多いので軽くまとめると
心室はV(ventricle)、心房はA(atrium)、右はR(right)、左はL(left)
大動脈Ao(aorta)、肺動脈PA(pulmonary artery)、肺静脈PV(pulmonary vein)、上大静脈SVC(superior vena cava)、下大静脈IVC(inferior vena cava)
三尖弁 T弁(tricuspid valve)、肺動脈弁 P弁(pulmonary valve)、僧帽弁 M弁(mitral valve)、大動脈弁 A弁(aortic valve)
慣れるまでは何で略語使うんだよ、わかりズライじゃん、と思ってたがなれると略語の方が話しやすい。お互いが共通認識してるかが大事。
話は戻って
心臓は1分間に60~100回拍動し一回約70ml、1分間に約5Lの血液を送り出す(安静時)
心臓の筋肉には筋肉の収縮・拡張により血液を送る固有心筋と、固有心筋を動かすための電気刺激の発生と伝導を行っている特殊心筋がある。
特殊心筋で形成する刺激伝導系が正常に機能することにより心臓は最大の機能を発揮する。
刺激伝導系
洞結節(sinus node)→房室結節→ヒス束→右脚・左脚→プルキンエ繊維
これが正常に機能しない(不整脈)とポンプとしての機能が損なわれてしまう。
心臓というポンプは全身に血液を送らなきゃならないし休むことは許されないので、酸素や栄養をたくさん必要とする。
これを心臓におくる血管が冠動脈である。
これが詰まる病気が狭心症や心筋梗塞である。
冠動脈は大動脈の基始部(根本のところ)から2本でてて右冠動脈(RCA:right coronary artery)と左冠動脈(LCA:left coronary artery)に分かれる。
左冠動脈はさらに左前下行枝(LAD:left anterior descending coronary artery)と左回旋枝(LCX:left circumflex coronary artery)に分かれる。分かれる前の部分を左冠動脈主幹部(LMT:left main trunk)という。
冠動脈には番号が付けられていて番号で大体どの辺の話か分かる。
まず最初に覚えるのは番号は全部で15番まであるということ。
それで#1~#4は右冠動脈の番号。番号の若い方が中枢側(根本の方)。
つまり4番が詰まるよりも1番が詰まった方がヤバイっとこと。
#5~#15は左冠動脈の番号で#5が左冠動脈主幹部(LMT)。
#5が詰まると左側全滅だから完全閉塞では突然死ってことになる。
#6~#10が前下行枝で、#11~#15が回旋枝。
それぞれの中で番号が若いところが詰まるほどヤバイ。
冠動脈が詰まると、酸素や栄養がこない心臓は働けなくなってポンプとしての働きが損なわれる。
前置きが大変長くなったけど心原性ショックは虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)や心筋炎による心機能の低下、弁膜症や心室中隔欠損による機械的・構造的欠陥、不整脈などのために心臓のポンプ機能不全が生じ、心拍出量の低下により起こる。
心拍出量は低下、脈拍は回数で補うため上昇(不整脈が原因であれば低下することももちろんある)、心臓から前に血液を送れないから後ろにたまるので動脈圧はやたら低いのに静脈圧はすごく高い(血圧低下、PAWP上昇→肺うっ血、CVP上昇、頸動脈の怒張)ということになる。
治療は心筋機能の改善で血管が詰まってるならカテーテルで広げたり薬で溶かすとか、不整脈なら薬使ったりペースメーカー入れたりということになる。
心不全の治療に関してはフォレスターの分類が参考になる。肺動脈楔入圧(PAWP:pulmonary artery wedge pressure)は正常値が6~12mmHgで肺動脈圧(PAP)の拡張期圧と近似する。
PAWPの上昇は左心不全、減少は循環血液量の減少を示唆する。
(フォレスターの分類)
今日はここまで。何か話がどんどん広がって広く浅くになっちゃうから困る。
不整脈とか虚血性心疾患とかまた詳しく整理してアップしていきたいな。
残るショックは閉塞性ショックと血液分布不均等性ショック。
がんばります。
よろしくお願いします♪
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機序がわかりやすくて、覚えられそうです!ありがとうございます😊
ありがとうございました!!(^^)