オトコはつらいよ!? ~CNS 坂コーの独り言~

急性・重症患者看護専門看護師である坂コーの手探りなブログです。

ショックの4つの病態-血液分布不均等性ショックー

2012-02-22 14:14:34 | ショック
『継続』
継続は力なり。凡なる力を変えられるのは継続だけである。
高校の野球部の部訓の一つ。私の苦手なこと。
凡人の私はこのブログを頑張って継続させていきたいと強く思ってる。

さて、今日は血液分布不均等性ショック(Distributive Shock)について整理する。
あまり聞き慣れない言葉かもしれないが、病態は末梢血管の緊張低下による血管拡張によるもの。
簡単に言うと血管がダラーンとする(血管抵抗が下がる)と血液がそこにプールされて心臓に戻って来にくくなる。
Distributionとは分配する、という意味。
血液量は減ってないんだけど血液の配分が変わってしまったショック。それが血液分布不均等性ショックと理解するといい。

あまり聞き慣れない血液分布不均等性ショックだけど、敗血症性ショック(Septic Shock)とかアナフィラキシーショックとか神経原性ショック(Neurogenic Shock)なんかはよく聞く名前かと思う。
これらはすべて血液分布不均等性ショックである。
今日はこの中でも臨床で遭遇する事の多い敗血症性ショックについて整理したいと思う。


敗血症の病態は感染に対するサイトカインや、細菌がつくる毒素によって血管が拡張することにより起こる。
血行動態の特徴は心拍出量が正常~増加、体血管抵抗が低下、心室充満圧が低下~正常。
循環血液量が不十分であれば心拍出量は低下する。十分な補液が行われていれば、血管拡張のために四肢は温かく、拡張期圧は低下し脈圧は増加する。ここは他のショックと異なる点である。

それではまずは言葉の整理から。

敗血症、重症敗血症、敗血症性ショック...。この言葉を混同して使ってることが多いと思うが実はそれぞれ使い分けがある。

○敗血症(sepsis):全身症状を伴う感染症のこと。つまり感染+SIRS(全身性炎症反応症候群)。2002年頃大流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)とは関係ないので混同しちゃダメ。

SIRS(systemic inflammatory response syndrom)の診断基準は以下の4つの診断基準のうち2つ以上を満たすものをいう
・体温:36℃以下 or 38℃以上
・脈拍:90/min以上
・呼吸数:20/min以上 or (PaCO2:32mmHg以下)
・白血球:12000/mm³以上 or 4000/mm³以下 (or 10%以上の幼若球出現)

SIRSの診断基準は軽い風邪の人とか手術後の人でも満たしてしまう。でも、それぞれの項目の基準値からの逸脱具合や経過からの正常化などで重症度や回復過程をとらえることができる。
とりあえず敗血症=感染+SIRS!これは大事。

○重症敗血症(severe sepsis):敗血症に臓器機能障害・循環不全(乳酸アシドーシス、乏尿、急性意識障害など)あるいは血圧低下(収縮期血圧<90mmHgまたは平時の収縮期血圧より40mmHg以上の血圧低下)を合併するもの。

○敗血症性ショック(septic shock):敗血症で適切な補液でも血圧低下(収縮期血圧<90mmHgまたは平時の収縮期血圧より40mmHg以上の血圧低下)が持続する。血管作動薬使用により血圧が維持されている場合でも、臓器機能障害・循環不全(乳酸アシドーシス、乏尿、急性意識障害など)がある。

このように敗血症、重症敗血症、敗血症性ショックは定義されているので覚えておく。


では敗血症性ショックに対しどう戦っていくか考える。
感染に対してやることは循環を維持しながら
・抗菌薬の投与
・感染源のコントロール
である。

抗菌薬の投与はまず適切な培養検体を取ってから行うのが理想。
①疑われる病原体、疑われる感染臓器、②感染源として疑われる臓器から得られた検体のグラム染色、③可能性のある薬剤耐性菌の評価、④患者の合併症、を元に適切な初期治療薬を選択する。
抗菌薬の投与はearly(ショックの1時間以内に!)かつbroadに行う。初期治療を外すと予後が悪くなってしまう。培養結果がでた後はその感受性に合わせて抗菌薬を調節する(de-escalation)

感染源のコントロールは創洗浄やデブリドマン、カテーテルの抜去などがある。


あとは重症敗血症のガイドライン、いわゆるSSCG(Surviving Sepsis Campaign guidelines)の敗血症における初期蘇生プロトコールであるEGDT(Early goal-directed therapy)は覚えておく必要がある。

・中心静脈圧(CVP):8-12mmHg
・平均動脈圧(MAP):65mmHg以上
・尿量:0.5ml/kg/hr以上
・ScvO2:70%以上
この4項目をゴールとしこれを6時間以内に達成する。

これにより敗血症性ショックの死亡率は減少するといわれている。

治療は医師が考えるものだから看護師はそこまで知らなくていい。
なんていう先輩がたまにいるがそれは非常に危険だ。どのような方向性で治療をしているか、これから何が起こりそうかなど予測することは知識がないとできない。
また知識がないと意図的に情報を拾うことができなく治療につなげることが難しいと思う。

色々勉強しなきゃダメだから看護師も大変だ(笑)

今日は敗血症性ショックを中心に血液分布不均等性ショックを整理した。
感染に関しては別の機会にもう少し深めて勉強したいと思う。

ショックはあと閉塞性ショックを残すのみ。

継続できるよう頑張ります。よろしくお願いします。

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