オトコはつらいよ!? ~CNS 坂コーの独り言~

急性・重症患者看護専門看護師である坂コーの手探りなブログです。

このブログについて

はじめまして。 都内某大学病院ICUで働く専門看護師の坂コーです♪ 心にうつりゆく医療や看護に関する事をそこはかとなく書いていくブログです。 2019年4月からこちらにお引越し↓↓↓↓↓↓

ニード論(ヴァージニア・ヘンダーソン)

2014-06-22 22:09:30 | 循環
前回はマズローのニード理論についてまとめましたが、今回はヘンダーソンのニード理論です。
看護の領域ではニード理論というとこっちの方を思い浮かべる人の方が多いのではないでしょうか。

ヴァージニアヘンダーソンは1897年に米国ミズーリ州のカンザスシティ生まれ98歳で他界しました。
8人兄弟の5番目で17歳のときに第一次世界大戦が始まって、兵士の役に立ちたいと看護への道を志し、1918年に陸軍看護学校へ入学したらしいです。
訪問看護師や教員を経験し、1960年『看護の基本となるもの』を出版しました。

この本の7ページに「あらゆる種類のヘルスワーカーの男女構成がもっと等分になる日を歓迎する。」と書いてあります。
ナイチンゲールの『看護覚え書き』から100年経っているだけあって、男性看護師にかなり好意的でいい感じです。
しかも、この本はとても薄くて、最後に要約もついています。
とても読みやすいので、学生時代にサボって読まなかった人はぜひ読んでみてください。
私はちゃんと読んだのは今回が初めてでした(笑)

この本が出た当時は、医療技術の進歩に伴い、多くの医療職者が誕生してチーム医療が展開されつつある時代でした。
看護師はヘルスケアチームの一員として自分たちの独自の機能がどこにあるのか、それを見出しにくい状況におかれ苦しんでいたようです。
そんな状況の中、国際看護師協会(ICN)からの依頼で『看護の基本となるもの』を出版して、看護の定義を世界に向けて発信しました。
これによりたくさんの看護師が自信と勇気をもらったようです。

ヘンダーソンの人間、健康、環境、看護についての概念はこのようなものです。

そして、これが人間の持つ14の基本的ニードです。

基本的ニードは14つで共通ですが、これには考慮しなくてはならないものがあります。
それがニードに影響を及ぼす常在条件とニードを変容させる病理的状態です。

看護はこれらを考慮してニードの充足を図っていくので、対象となる個人の条件に応じて多様に変化させ、工夫して提供されなければなりません。

マズローの欲求階層論ともいわれるニード論と、ヘンダーソンの14の基本的ニードを対比させると、順序性が理解しやすくなります。

ヘンダーソンのニード理論をまとめると、まず14の基本的ニードの充足状況をみます。
健康な方であれば、体力、意思力、知識があるから大丈夫です。
しかし、患者さんはこれらの能力が不足しニードが満たせない状況にあります。
そしてこれには常在条件と病理的状態が影響を与えます。
この未充足なニードをできるだけ早く自立できるように充足することが看護であるといっています。


このような看護を行うにあたり看護師の姿勢としては患者さんの「皮膚の内側に入り込む」必要性があるとヘンダーソンは言っています。
皮膚の内側に入り込むとはすごい表現で、最初はついつい大好きな漫画のこの場面を思い浮かべてしまいましたが、こういうことではありません。



ヘンダーソンはこう言っています。
「看護婦は、他者の欲求を評価する自分の能力には限りがあるという事実を認めねばならない。たとえ非常に緊密な二人の間においても互いを完全に理解するのは不可能である。しかしそうはいうものの、自分が看護している人との間に一体感を感じることが出来るのは、優れた看護婦の特性である。患者の“皮膚の内側に入り込む”看護婦は、傾聴する耳を持っているにちがいない。言葉によらないコミュニケーションを敏感に感じ、また患者が自分の感じていることを色々の方法で表現するのを励ましているにちがいない。患者の言葉、沈黙、表情、動作、こうしたものの意味するところを絶えず分析しているのである。この分析を謙虚に行い、したがって自然で建設的な看護婦=患者関係の形成を妨げないようにするのはひとつの芸術(art)である。」

B’z風に言うと
「たとえばどうにかして君の中に入って行って、その目から僕をのぞいたらいろんなことちょっとはわかるかも。」
今夜月の見える丘に

2回にわたってニード論についてまとめてみました。
実際臨床で使えるかどうかは、それぞれで判断すればいいと思います。
理論を学ぶことは自分の枠を広げ、いろいろな角度から対象がみれるようになる点において有用だと思っています。

50年も前に出た本からも学ぶことがたくさんある。
人間ってすごいですね!

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ニード理論(マズロー)

2014-06-18 23:51:12 | 理論
今日は、先日学校で発表したニード理論について簡単にまとめてみたいと思います。

まず、ニードとは何ぞやという話ですが、ニードは日本語でいうと欲求のことです。
日常的に使う欲求は「あーバックが欲しい。」とか「あー、彼女欲しい。」というような“何かをほしがり求めること”という意味で使っていますが、心理学でいうニードは“人間を行動にかりたてる内的な動機のこと”をいいます。
つまり、ニード理論とは簡単にいうと“人間の行動をニード(つまり内的欲求)によって説明しようとする理論”のことです。
ニードに焦点を当てた基礎理論は、ヘンリー・マレーやアブラハム・マズローによって提唱された心理的アプローチです。
このニード理論を看護に当てはめて考えたのがヘンダーソンたちです。
この表は各理論家がどのようにニード理論を展開したかの要点がまとまっていて、とても分かりやすい表です。

「よくわかる中範囲理論」という本の301ページに書いてあります。ぜひ見てみてください。


マズローは1954年に人間性の心理学という本でニード論を発表しました。

マズローは、人間は生まれながらに、より成長しよう、力を発揮しようとする自己実現の動機を持っているものであるとして研究しました。
そこで「自己実現者」を調査するにあたり、300人の健康な大学生から面接調査で被験者を選ぼうとしました。ですが、満足できる人は1人しかいなかったようです。
研究にはリンカーンやアインシュタインなど、歴史上の人物もサンプリングに加えました。
そして研究を通して、人間の欲求には、5段階の階層があって、底辺から始まって、1段階目の欲求が満たされると、1段階上の欲求を志すというものです。
この理論の特徴は、ニードを具体的、網羅的に羅列するのではなく、さまざまな表現形態の根底にある普遍的要因で分類して5つのニードとして列挙している点。
さらに、それらニードは強さ・現れる順が階層になって配列されているという、ニードの関係性にまで言及している点です。
毎日やっと食べていける程度の生活であれば、食べ物をどうやって手に入れるかが関心の中心になって、自己実現することはむずかしそうです。
生理的ニードは人間にとって最も強いニードで、生命を維持していくために必要なものです。
飢えや渇きを癒すこと、性や睡眠の欲求です。これらの欲求が満たされないと他の欲求は存在しなくなるか、背後に押しやられてしまうわけです。

生理的ニードがある程度満たされると、次は安全の欲求です。自己や災害や犯罪などの危害を受けず、安全に生きていくことへの欲求です。
次は愛情と所属の欲求です。愛し愛されたい、所属感を得たいという欲求です。
これが満たされてない人は、思い切って独自の個性を表現したり、本心から出た意見を主張することが難しくなるといわれています。それは、自己主張することが人間関係を断絶させてしまうかもしれないと恐れてしまうからです。この欲求が十分に満たされている人は、自由に個性を表出し、主体的に生きることが可能になります。
尊重のニードは自分を他の人より高い位置におこうとする願望です。
尊敬されたい、人より優れたい、支配したい、地位を得たい、自由になりたいなどなど多様です。
これが満たされないと劣等感や無力感に苦しんだり、地位や名誉に執着しやすくなります。
満たされると充実感と自信を持って、他人にも寛容になれて自分の行動を信じることができるようになると言います。
これらのニードがある程度満たされてくると自己実現の欲求がでてきます。
自己実現とは、人間がその可能性、潜在能力を開発し、自己の持つ能力や人間性を最高に実現しようとすることです。人は欠乏動機を満たすためのみに生きるのではなく、それがある程度満たされることで真の成長動機である自己実現のニードが現れるとしました。
これらは完全に満たされないと次の階層にいけないのではなく、大体生理的欲求では85%、安全欲求では70%、愛の欲求では50%、自尊心の欲求では40%くらい充足されると次の階層に移行できます。
また、1段、1段あがっていくだけじゃなく、時にジャンプすることもあるし、下位の優先欲求が脅かされると急に逆戻りすることももちろんあります。

患者さんは病気でいろんな欲求を満たすことが難しい状況にあるので、自己を高め、尊厳的に生きることを支えることは重要なケアといえます。


今回はマズローのニードで、どちらかというと心理学の理論でしたが、次回は看護のヘンダーソンのニード理論について考えたいと思います♪

大学を卒業してからすっかりご無沙汰だった、理論的なことについて最近勉強しています。
当時は理論なんてよくわからなかったけど、臨床での事例を通して学ぶことで、とても有用性を感じる今日この頃です。

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