オトコはつらいよ!? ~CNS 坂コーの独り言~

急性・重症患者看護専門看護師である坂コーの手探りなブログです。

このブログについて

はじめまして。 都内某大学病院ICUで働く専門看護師の坂コーです♪ 心にうつりゆく医療や看護に関する事をそこはかとなく書いていくブログです。 2019年4月からこちらにお引越し↓↓↓↓↓↓

高濃度酸素投与の弊害(~_~;)2

2017-02-19 21:34:08 | 倫理
2012年に自分が書いた記事で 高濃度酸素投与の弊害(~_~;)というのがありました。
あれから早5年。
この前、ICUの抄読会で ICU患者に対する酸素投与についての発表があったので、ここで紹介しますね。

論文はJAMAの2016年10月に発表されたものです。
Effect of Conservative vs Conventional Oxygen Therapy on Mortality Among Patients in an Intensive Care Unit: The Oxygen-ICU Randomized Clinical Trial.

目的は、
“ICU患者において、控えめな酸素投与(SpO2:94~98%)は従来の酸素投与(PaO2≦150mmHgまたはSp2:97%~100%)と比較して、予後を改善するのか”
を明らかにすることです。

介入は

SpO2とPaO2を指標にして、酸素投与を控えめ群と標準群それぞれで調整することです。
RCTで行われています。

結果は、控えめな酸素療法を行った群が生存率を有意に改善するといった内容です。


とても面白い結果だなぁと思いました。
この研究を根拠に必要以上の酸素投与は弊害があることを言ったら説得力はありそうです。
しかし、Editorialにあるように手放しに控えめな酸素療法がいいというわけにもいかないと思います。


そして、The ANZICS Clinical Trial GroupからのPilot studyでは、控えめな酸素療法に関して、本研究と異なる結果が示されています。
Conservative versus Liberal Oxygenation Targets for Mechanically Ventilated Patients. A Pilot Multicenter Randomized Controlled Trial.
人工呼吸器管理を必要とする患者で、制限のない酸素療法と比較して控えめな酸素療法の実現可能性を検討することを目的に多施設RCTを行っています。
方法は、控えめな酸素療法(SpO2:88~92%)群と制限のない酸素療法(SpO2:96%以上)群での比較です。

そして結果は、

控えめな酸素療法は生存率に改善効果はありませんでした。

この二つの研究では、有意差があった最初の研究はPaO2が控えめと従来群で(87 vs 102 mmHg)に対して、有意差がなかった後の研究は(70 vs 92 mmHg)という違いはありますが、この結果を踏まえると一概に“控えめな酸素療法を行った群が生存率を有意に改善する”と言い切るのは危険な気もします。

個人的に思うこととしては、酸素は過剰でも不足でも良くなさそうなので、ベットサイドの看護師には細やかな観察と、患者に適した酸素を提案していくことが求められるのではないかと思います。

先月、後輩の看護師が呼吸療法認定士 に受かりましたと嬉しい報告をしてくれました。

この本は本当に1日で面白く読める本なのでオススメですよー
受かった後輩も絶賛しておりました(^-^)

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ECMOの回路をクランプするときは脱血側?送血側?

2017-02-14 15:03:16 | 倫理
ICUには「人工肺とポンプを用いた体外循環回路による治療」を行うことができるECMO(エクモ)という装置があります。

ちょうど今日、ECMO装着中の患者さんを受け持つトレーニングを始めた後輩看護師からこんな質問を受けました。

「ECMOの回路をクランプするときは脱血側ですか?それとも送血側ですか?」

疑問をそのまま放置しないことはとてもいいことだと思います。
聞いてもらえる存在であることは嬉しいですね!

答えを伝えつつ、考え方や問題解決の方法を一緒に考えてみました。

まず、脱血管と送血管内の圧力がどうなっているか考えると答えは導き出されそうです。
ECMOは遠心ポンプによる揚程で動脈圧に負けない圧力を作り出します。
揚程とはポンプが駆出できる圧力の事です。
人工心肺の業界ではポンプの吐出圧≒揚程と考えて良いそうです。

ECMOをウィーニングしていくときに、回転数を落としていく際は、遠心ポンプの揚程が動脈圧に負けないようにすることは大切なポイントです。
じゃないと、動脈圧に負けてしまいます。
回路内は逆流を防止する弁などはないので、遠心ポンプが止まってしまった場合は、逆流が起きシャントとなってしまうので、鉗子で遮断しないといけないわけです。

話を戻します。


脱血管は陰圧、送血管は陽圧です。

脱血管で注意すべきことは、回路内に空気が混入しないようにすることです


陰圧である脱血管がキンク(折れ)やクランプするとキャビテーションによる空気が発生します。
キャビテーション とは、「液体の流れの中で圧力差により短時間に泡の発生と消滅が起きる物理現象(By ウィキペディア先生)」です。


逆に送血側は強い陽圧となっているので、出血に注意です。


ということで、最初の後輩の質問です。
「ECMOの回路をクランプするときは脱血側ですか?それとも送血側ですか?」

答えは『送血側』ですね。

ウィーニングの際に鉗子を使う際は間違っても脱血側をクランプしないようにしましょうね。

今回のスライドはうちのスパーCEが勉強会で使ったものを一部紹介しました。
ネットでも観れるので興味がある方はそちらをご覧ください。

オススメの本も載せておきます。


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コミュニケーションについて真剣に考えてみる

2017-02-05 23:50:52 | 倫理
この本は、以前に紹介したクリティカルケア領域で働く看護師の入門書であり、道に迷った時の拠り所にもなる大変オススメの本です。


この本のサブタイトルに『“声にならない訴え”を理解する』とあります。
本文を一部抜粋すると、
”クリティカルケア領域において、多くの患者は意識障害、鎮静下にあり、適切に自身の症状の変化を訴えることができません。私たちはその訴えを、声ではなく、様々なモニター、生理学的変化から察知しなければなりません。耳を傾けるのではなく、積極的に訴えを察知するのです。この訴えを察知する能力こそ、クリティカルケア領域の看護師に必要な、特徴のある能力だと思います。”(クリティカルケア看護入門P28)

つまり私なりの意訳をさせていただくと、ICUの看護師は見聞色の覇気を身につけるべきだということになります。

ONE PIECE 61 (ジャンプコミックス)
見聞色の覇気とは、週刊少年ジャンプで連載中のONE PIECEという世界一売れている漫画に出てくる能力のことです。
海賊王ゴール・D・ロジャーは万物の声を聞くことができたそうです。
ぜひうちのICUに来ていただき、ご教授していただきたいところです。

しかし、覇気を身につけるのはなかなか難しいわけで…。

そこで、ICUでのコミュニケーションについての論文を読む機会があったので紹介します。

ICUでのコミュニケーションの大半は、Yes/Noシグナルが一番多いようです。
いろんなツールがありますが、あまり使われていないようです。

今回、Critical Careの Communicating with conscious and mechanically ventilated critically ill patients: a systematic reviewという論文でこのようなアルゴリズムが紹介されていました。

確かに、ペンと紙があれば書ける患者に対し、Yes/Noや口パクで対応している光景はよく見ます。
このアルゴリズムだと、うちのICUでは設備として持っていないことが多いので、コミュニケーションツールとしての引き出しを増やしていく取り組もはしていった方が良さそうだと感じます。
とりあえず、ICUで電気式人工喉頭(EL)は簡単に試せそうなのでトライしてみます。

今回紹介したアルゴリズムの論文を 抄読会で紹介したので、興味がある方は是非見ていただいてご意見いただければ幸いです。

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