起業会計

公認会計士による仙台TEOの起業支援活動、会計トピック、監査トピックの解説

PCの中古販売店が固定資産のPCを売ったら?

2005-10-05 00:40:50 | 会計
PCは今やなくてはならない事務用機器の一つになっています。それどころか、一人に一台は当たり前になってきつつあります。
PCをリニューアルする頻度も3,4年ごとぐらいが一般的でしょうか。理想的には2年ごとに新しい機種を使えればストレスなく使えるでしょう。

PCを購入した場合、固定資産に計上しますが(20万円または10万円以下なら消耗品として費用処理することも可能です)、リニューアルするときには中古PCとして販売業者に売却するケースが多いようです。
もちろん、最近は個人情報保護法という法律があるため、セキュリティに気をつける必要があります。


それでは、PCの中古販売業者が自社で利用しているPCを自社のショップで販売した場合は、会計処理はどうすればよいでしょうか?

考え方は2つあります。
①固定資産を商品に振替え、売上を計上する方法
②固定資産の売却として、固定資産売却損益を計上する方法
会社の営業活動が何かを重視すれば、①の方法が合理的といえます。
しかし、PCの購入当初の方針(事務での利用目的)を重視すれば、利用価値がなくなっての売却という臨時的な出来事なので、②の方法にも合理性がありそうです。
このケースの場合は本業が中古PCの販売なのですから、自社で利用し、使わなくなったらショップで売ろうと当初から考えていたでしょう。

したがって、①の売上を計上する方法が実態に合っているといえるでしょう。
ちなみに、売上原価の内訳を表示する際には、「他勘定受入高」という科目を使います。


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税効果会計って必要なの?

2005-09-21 00:50:47 | 会計
今回は、「税効果会計」を解説してみたいと思います。

税効果会計とは、企業会計上の利益又は費用と課税所得計算上の益金又は損金の認識時点の相違等により、企業会計上の資産又は負債の額と課税所得計算上の資産又は負債の額に相違がある場合において、税金の額を適切に期間配分することを目的とする手続きのことです。

通常このように解説されることが多いのですが、何だか意味が分からないことが多いので、簡単にいえば次のようになります。

税効果会計とは、「企業会計上の損益」と「税金計算上の所得」の違いがある場合に、
「税金費用」を発生した期に配分する手続のことです。


税金計算上「賞与引当金」や「退職給付引当金」などは、損金算入が認められていないか一部制限があります。
しかし、企業会計上、引当金の計上は必ず行う必要があるので、「企業会計上の損益」と「税金計算上の所得」に違いが生じることになります。
つまり、「費用計上」と「損金計上」の時期に違いが生じているのです。

費用計上・・・発生時(たとえば、2005年3月)
損金計上・・・支払時(たとえば、2005年6月)
(費用計上のほうが損金計上よりも早い)

したがって、当期に税金をがまんして払って、損金算入ができる翌期に税金は安くなることになります。
しかし、税金を現金主義(というか確定主義)ではなく発生主義で考えると(あんまりこんな説明の仕方はしませんが)、税金費用のマイナスは翌期ではなく当期に計上するべきです。
というわけで、翌期に安くなる税金分を当期に取り込んでおくという発想が生まれるわけです。

また、税金費用が翌期に安くなることが確実なら、安くなる税金分だけ資産性があるともいえます。そこで、「繰延税金資産」を計上するという発想にもつながってきます。

「繰延税金資産」はいわばディスカウントチケット(居酒屋で配っている500円値引券)のようなもので、翌期の税金が安くなる権利のようなものです。
したがって、国によっては(ドイツなど)「繰延税金負債」は認めるものの「繰延税金資産」を認めていません。
また、将来税金を払う見込がない場合には、税金が将来安くなる見込などありませんから、日本も「繰延税金資産」の計上には一定の要件が課せられています。


よくよく考えてみると、居酒屋でもらった「次回来店の際の1000円割引チケット」を資産計上する会社はないと思います。
また同じ居酒屋に行くとは限りませんからね。


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買戻条件付売買 その後どうなる?

2005-09-15 23:17:38 | 会計
買戻条件付売買という契約があります。

たとえば、賃貸マンションの一室を1,000万円で販売し、5年経過後いつでも1,000万円で買戻してもらえるというものです。
買戻すまでの間は、賃貸に使用し、賃料として毎年100万円を受取れるというものです。

<販売者のメリット>
①賃貸マンションの価値がもともと1,000万円に満たない場合(たとえば600万円の価値しかない場合)、売却時に売却益が計上できます。
②売却後、賃貸マンションの価値が値上がりした場合、買戻時に買戻益が発生します。

<購入者のメリット>
①10%という高利回りの金融商品です。
②資金が必要なときには買戻権を行使して投資資金を回収でます。


<問題点>
購入者側にとっては、販売者の信用力に問題がなければ(倒産しない限り)、デメリットはほとんどありません。
したがって、販売者側の問題点を検討してみたいと思います。

根本的な問題として、この取引を考えてみたいと思います。
形式的には、マンションを売却していますが、この取引は売却ではないと考えられます。
この取引は売却と考えず、マンションを担保にした資金の借入れと考えるべきです。

売却とした場合、売却時に売却益が発生しますが、もしマンションが値下がりした場合、損失が発生します。
現在の不動産市況から考えると、マンションの値上がり益は望めないと考えられるため、買戻をしたときに大きな損失が発生してしまいます。
もっとも、建物は減価償却をしますので、少なくともその分ぐらいは値下がりして当然です。

また、売却処理としてしまうと、売却から買戻の間、減価償却が認識されないので、買戻時まで減価償却相当額を先送り(損失の先送り)してしまうことになってしまい、とても妥当な処理とはいえません。
買戻権が行使されるまで巨額の含み損を抱えてしまう結果にもなります。

このような取引で一時的に利益を上げたとしても、取引の実態にそぐわない会計処理を行うと、その後身動きが取れなくなってしまいます。
取引の実態をよく考えて、取引の実態をあらわす会計処理を行うことが必要です。




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株主資本等変動計算書

2005-09-08 08:47:54 | 会計
株主持分変動計算書の名称が「株主資本等変動計算書」となるようです。

ASBJ公開草案を公表しました。

記載内容は、株主資本に限られず、その他の純資産項目も対象となるようです。
つまり、「評価差額」や「繰延ヘッジ損益」「新株予約権」「少数株主持分」も記載の対象です。

「繰延ヘッジ損益」や「新株予約権」もついに「その他の純資産項目」となるのでしょうか?


公開草案後の動きが気になります。


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リース会計基準の改正?

2005-09-07 00:09:49 | 会計
2005年9月6日の日経新聞に  リース会計、「例外」廃止へ  という記事が載りました。


リースの会計処理は、以前にこちらのブログでご紹介したように区分され、会計処理されます。

つまり、所有権移転外のリース取引は割賦販売と経済的実態は変わらないことから、原則売買処理、例外賃貸処理という事になっていました。
会社も原則となっている売買処理を選択すると煩雑になること、総資産が増えてROAなどが悪化してしまうことから、賃貸処理をする場合がほとんどでした。

しかし、国際的には、日本で認められている賃貸処理は認められていません。
この日本独自のリースの会計処理があることにより、日本の会計処理が国際的に通用しないと言われる原因のひとつでした。

日本ではリース業界の猛反対でこのような国際的に認められない会計処理を帰ることができなかったわけですが、ようやく国際的な会計処理にあわせることができるようになりそうです。

日本の会計処理もそれなりの理屈があるようですが、あまり説得力があるとはいえません。
早く国際基準に合わせた会計処理に修正した方が、日本企業のためでもあります。


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ショッピングセンターの会計処理

2005-08-18 23:42:04 | 会計
今回は、製造業とか商業とは異なるちょっと変わった業界の会計処理を考えてみたいと思います。

今回は、ショッピングセンターです。

ショッピングセンターやショッピングモールは、テナントに売り場を貸し、テナント料を受取るという営業を行っています。
テナント料は、テナントの側から言えば、家賃ということになります。

ショッピングセンターが設定するテナント料は、固定の賃料ではなく、変動賃料であることが多いです。
通常テナント料は、売上高に応じて決められます。
例えば、売上高の1%というようにです。


ショッピングセンターは、テナント料を決定するためにテナントの売上高を把握する必要があります。
そのため、テナントは、ショッピングセンターが用意するPOSレジを使用し、売上金をショッピングセンターに一時的に預けます。
また、G-CATと呼ばれるクレジットカードの端末もショッピングセンターが用意したものを使用させます。

このようにして、ショッピングセンターは、テナントの売上金を把握します。
なお、預った売上金は半月ごとのサイクルで、テナント料と相殺して返還されることが多いようです。
また、ショッピングセンターが受取るカード会社からの入金は、末締翌15日払い、15日締末払というケース(月2回)が多いようです。



この一連の会計処理を考えて見ます。

①テナントが現金売上を行った場合
ショッピングセンターは、現金を預かっているだけですから、仕訳は以下のようになります。
現預金 XXX / 預り金 XXX

売上はあくまでテナントが計上することに注意が必要です。


②テナントがカード売上を行った場合
現金売上と同様です。
未収入金 XXX / 預り金 XXX


③カード会社から入金があった場合
現預金 XXX / 未収入金 XXX


④売上金をテナント料相殺後に変換する場合
預り金 XXX / 売上テナント料 XXX
         / 現預金     XXX
売上テナント料は、受取テナント料とか売上高などで表示されることもあります。


⑤期末決算時(月次決算時)
決算時には、未収のテナント料を計上する必要があります。
未収入金 XXX / 売上テナント料 XXX

④で計上される売上高は、
末日返還分は、1~15日の売上に対応し、
15日返還分は、16~末日の売上に対応する分になるからです。

つまり、半月分未収計上する必要があるのです。


以上です。




デモ機の会計処理

2005-08-06 14:43:10 | 会計
研究開発型のメーカーで製作される展示会用のデモ機の会計処理について、考えてみたいと思います。



デモ機は何年かにわたって、展示会でデモに使われると仮定します。
何年かにわたって使う予定ですが、通常は客先の要望に応じて販売されることが多いと仮定します。



まず考えてみたいのが、このデモ機の性格(性質)です。

このデモ機は、展示会で客先からの引合→商談→販売のための広告宣伝に役に立っていると考えられます。
したがって、デモとして利用するために保有している資産です。
固定資産とは、利用するために長期に保有している資産のことですから、デモ機は固定資産にあたると考えられます。

ただし、当初から、最終的には販売しようと(あわよくば売ってしまおうと)考えているわけですから、一方で棚卸資産の性質も持っていると考えられます。


それでは、デモ機の販売時の考え方を見てみたいと思います。

デモ機を固定資産ととらえると、このデモ機が売れてしまったことは、固定資産の売却に当たります。
したがって、取得価額と売却価額との差額が、固定資産売却損益となります。

一方、棚卸資産ととらえると、このデモ機が売れてしまったことは、売上が実現することになります。
当初から販売することが多いことが分かっているわけですから、この考え方にも一理あります。


しかし、売れるまでは展示会用のデモ機として広告宣伝に利用しているわけですから、
棚卸資産の性格ではなく、固定資産の性格を持っているわけです。
また、展示会で利用する期間にわたって減価償却をする考え方が、他の固定資産の会計処理とも整合しています。


これが、高価な機械でなければ、サンプル品として、客先に配ってしまうところです。
客先に配るようなものは、見本費として計上することが多いと考えられます。
また、サンプル品としてもらったものをわざわざ購入することはありません。



考え方はいくつかあると思いますが、以下の会計処理が実態にあっているのではないでしょうか?
①売れるまでは、固定資産として計上し、利用期間にわたって減価償却を行う。
②売れた時点で、固定資産から棚卸資産に振替えて、売上計上する。


問題点は、固定資産から棚卸資産に振替えることが認められるかです。
証取法におけるP/L上も固定資産からの振替金額は、「棚卸資産受入高」として表示されることになると考えられます。
この表示に問題はないかちょっと気になるところです。






商品と製品の違い

2005-08-05 23:57:34 | 会計
似たような勘定科目なんですが、誤解して使っている会社が多いものの一つに、商品と製品があります。

商品は、加工はしないで販売するもの。
製品は、加工して販売するものです。


また、仕掛品と半製品も誤解されやすい点で同じです。

仕掛品は、加工の途中で販売できないもの。
半製品は、加工の途中なんですが、販売できるものです。



パチンコ店の売上

2005-08-03 23:58:50 | 会計
ちょっと変わったところで、今回はパチンコ店の売上を見てみたいと思います。


パチンコ店の売上の把握は難しいといわれることがあります。
昔マルサの女という映画で脱税をするパチンコ店のエピソードが出てきていることからそのようなイメージがありますが、実際のところはそうでもありません。



パチンコの売上は、お客さんが玉を借りて「使用した時点」で計上されます。

なお、パチンコの玉を借りる方法は通常二つあります。
①プリペードカードを購入し、そのカードを使って玉を借りる方法
②現金を玉貸機に入れて玉を借りる方法

①で使うパチンコ台のことをCR機といいます。
②で使うパチンコ台のことをCashMachineといいます。


①の場合は、プリペイドカードを購入するだけでは売上になりません。
玉を借りて使用した時点で売上が計上されるのです。
したがって、未使用のプリペイドカードの分は「預り金」勘定で処理されることになります。
ただし、未使用のプリペイドカードは店が買取ることが多いので、通常は「預り金」の金額はさほど多額にはなりません。


なお、現在は、プリペイドカードを発行している日本レジャーカードシステムは、通信回線を使って
プリペイドカードの「購入」、「使用」度数をリアルタイムで把握しているので、
異常な使われ方(購入よりも使用の方が異常に多いなど)をするとすぐに分かってしまいます。

②の場合は、このように厳格に使用度数が分かってしまうので、売上を操作することは難しいのです。

①の場合は、管理用のPCを通常は使用していて、購入・使用の状況をリアルタイムに把握していて、
通常はシステムをいじることは難しいので、PCのシステムレビューをすれば、売上の信憑性を比較的容易に検証することができるのです。

関連当事者の注記

2005-07-27 01:34:01 | 会計
関連当事者の注記について、企業会計基準委員会で検討が行われているようです。

現在は、親会社と関連当事者との取引のみが開示の対象となっています。
つまり、連結財務諸表の注記となっているにもかかわらず、単体ベースでの開示となっているのです。

昔からおかしいと批判されていましたが、関連当事者の範囲を子会社の関連当事者まで含めてしまうと実務上把握が困難(そんなの把握できないよ、という声)として、長年この問題が放置されてきました。

しかし、IAS24やFAS57との整合性を考えると、そういっていられなくなってきたようです。
来年度には、子会社との関連当事者の取引を開示対象とするかどうか検討するようです。

たな卸資産の低価法の問題点!? 最終仕入原価とのからみ

2005-07-26 01:47:40 | 会計
たな卸資産の評価については、将来低価法が強制される方向に議論が進んでいると、以前レポートしました。

低価法を採用している会社の中には、期末の時価を調査することが難しいので、最終仕入価格を期末の時価と考えているところもあると思います。
つまり、「最終仕入単価」と「帳簿単価」のうち低い単価を採用することで、評価損を計上している会社もあると思います。


この方法における問題点をちょっと検討してみたいと思います。

問題は、期中に仕入値引(割戻しも含むこととします)があった場合に起こります。
通常の値引の場合ならいいのですが、販売価格が下落しているがメーカーの販売価格は変えずに後で値引をして帳尻を合わせる方法をとっていた場合は厄介です。(このような値引の形態はよくあると考えられます。*1)

次のような仕入を考えます(在庫は長期滞留しないものとします)。
① @100 10個
② @100 10個(累計で20個販売すると@5 値引される)
③ @100 10個(累計で30個販売すると@25値引される)


会計方針で総平均法を採用しているとすると、帳簿単価は90円になります。
最終仕入単価は、75円になります。
したがって、低価法で採用する単価は、75円になります。


ここで、すべて売れていれば問題ありませんが、在庫があった場合、問題です。
在庫の数が多ければ多いほど、低価法評価損が多くなります。
この評価損の計上は、翌期の売上原価の減少を通じて利益の増大をもたらします。
つまり、損失の先取りのような形になってしまうのです。

特に仕切り単価の修正(@100で販売していた製品の単価を過去に遡って修正する意図行う値引)の場合、後からの値引は値引率も高くなります。
しかし、この値引(上記の例でいえば@25の値引)は、当初@100の金額を訂正するつもりで行ったものである場合もあります。
この場合、@75は実際の市場価格よりもかなり安い単価となっている可能性があります。
したがって、単純に最終仕入単価と帳簿価格のうち、低いほうを採用して低価法とする計算の方法は、正しく損益が計算できない可能性があるのです。


*1
メーカーは売上単価を変えずに販売したいのですが、ライフサイクルの短い製品の場合、短期間に販売単価が下落してしまいます。
ただし、価格の改定を行う手間(その他営業マンのインセンティブの関係上も)を考えると、後で値引きして対応したほうが手間が省けます。
そこで、高い販売単価のまま販売し、後で値引対応することがしばしば行われます。



「のれん」の会計処理

2005-07-21 01:02:20 | 会計
「のれん」の会計処理を現在企業会計基準委員会で検討しています。


「のれん」は、「営業権」ともいいます。通常、財務諸表には「営業権」と表示されます。

のれんとは、合併等の企業結合を行う際に、買収価額が純資産時価よりも高い場合に発生する差額のことです。
逆に、低い場合に発生する差額を「逆のれん」とか「負ののれん」ということもあります。
ただし、通常の企業結合では「負ののれん」ではなく「のれん」が発生する場合が多いと考えられます。

それでは、純資産よりも高い値段で買収等を行うのはなぜでしょう。
純資産よりはるかに高い値段で会社を買収することが往々にしてあります。
これを経済合理性にしたがって分析すると、次のようなことが考えられます。

・相乗効果
相手の会社が単独で事業を行うよりも、一緒に事業を行う場合の方が高い効果を生み出すことが期待できるため。
つまり、企業価値は互いに1しか無くても、両社が一緒に事業を行うことによる効果がその他に1あり、1+1=3 となる可能性があるということです。
この場合、純資産時価が1でも2までお金をだすことができます。


現在、企業会計基準委員会で検討しているのは「のれんの償却」です。
のれんは、日本の会計基準では取得後5年以内に毎期均等額以上の償却しなければならないことになっています。
中には即時(1年で)償却する会社もあります。

現状では即時償却が即会計基準違反となることはありませんが、企業の状況を正しく示しているか疑問があるところです。

①「のれん」が発生するということは、相手先の純資産時価よりも高い価値を認めて対価の支払を行っているにも関わらず、その「のれん」を即時償却するということはその価値の減少を認識していることになる。
②償却期間(のれんの効果の発現期間)の見積もりが困難であることを理由に即時償却を行うべきという考え方もあるが、それは有形固定資産の耐用年数の見積もりも同様であるから、のれんのみ即時償却を認めることは、他との整合性がとれない。
③のれんを即時償却することにより、取得による収入は売上に計上されるものの、償却額を特別損失に計上した場合、その後の投資額が低く評価され、結果として即時償却後の営業費用が低く計上されることになり、営業損益が投資の成果を反映しない。

特に、即時償却した費用を特別損益に計上することは、問題が大きいと考えられています。
のれんを即時に償却するということは、取得時の収益は1年しか反映されないということですから、取得時の収益と反映させるため、償却費は営業費用とするべきと考えられます。


現在、のれんの償却については審議中ですが、即時償却・特別損失処理、非償却資産としての取扱については認められないことになりそうです。





棚卸資産の会計基準の見直し

2005-07-14 08:12:33 | 会計
現在、棚卸資産の会計基準が議論されています。
棚卸資産とは、販売目的に短期的に保有する商品や製品のことをいいます。

日本の会計基準と米国基準(USGAAP)、国際財務報告基準(IFRS)で相違があるので、現在その調整を検討しているのです。

以下、会計基準の相違と見直しの内容です。

<低価法>

日本基準
 原価法と低価法の選択が認められている。

USGAAP、IFRS
 低価法が強制される。


<資産の範囲>

日本基準
 連続意見書第四
 販売活動及び一般管理活動を目的とする物品(ex.チラシなどの貯蔵品)を棚卸資産の範囲に含めている。

USGAAP、IFRS
 ARB43号、IAS11号
 消耗品・貯蔵品は製造目的の物品に限定している。


日本基準
 未成工事支出金を棚卸資産としている。

USGAAP、IFRS
 ARB45号、IAS11号
 未成工事支出金を債権としている。


日本基準
 販売用不動産を棚卸資産としている。

USGAAP
 ARB43号
 不動産は棚卸資産に含めない。


<金融投資と考えられる棚卸資産の時価評価>

 トレーディング目的の商品(金地金などのコモディティ)を棚卸資産としている。
 時価評価はできない。


<P/L上の表示区分>

日本基準
 企業会計原則注解10に詳細に規定

USGAAP
 通常は売上原価とする。

IFRS
 規定はない。


<後入先出法>

日本基準
 後入先出法を認めている。

USGAAP
 後入先出法を採用する場合、原則として切放法を採用しなければならない。

IFRS
 後入先出法は禁止されている。
 

四半期決算

2005-06-15 07:55:50 | 会計
日経新聞によれば、2008年度から四半期決算が法律上義務付けられるようです。

今までは、取引所のルールで四半期決算を開示してましたが、これからは法律で強制されるようです。
法律上強制されるのであれば、監査が必要になってくるでしょう。

ただ、年に4回も監査(いわゆるフルオーディット)をするのは、時間的にも経済的にも無理でしょうから、レビュー(監査ほど厳密には保証をしない手続)を行うことになるでしょう。

日本には今まで、中間監査という独自の監査(若干監査よりも保証水準は下がる)がありましたが、中間もレビューになるかは不明です。
(海外では、中間もレビューということになっています。)

中間監査と四半期レビュー、期末監査と業務が増えていったら、会社も会計士もますます大変になっていくのですが、どうにかならないですかね。

純資産の部

2005-06-09 23:18:44 | 会計
企業会計基準委員会によれば、貸借対照表の表示の「資本の部」を「純資産の部」に変更することを話し合っているようです(こちら参照)。

「資本の部」を「純資産の部」に変更し、
純資産の部には、「新株予約権」、「少数株主持分」、「繰延ヘッジ損益」などを記載することとなりそうです。

以前、「新株予約権は負債か資本か」でも書きましたが、とりあえず貸借対照表に中間区分を設けるという思い切った会計処理(表示)は見送られるようです。


ここ数年ころころ会計処理、会計に絡む法律が改正されて大変なんですよね。
一体いつまで続くんでしょう。