Noriko-McLane Movie Blog

自分の見た映画の感想を気ままに綴っています。
ネタバレの可能性もあるので、まだ見てない方はご注意下さい。

沈まぬ太陽

2011-08-28 | Weblog
沈まぬ太陽
(金曜ロードショー録画)

原作は、言うまでもなく山崎豊子の小説「沈まぬ太陽」である。
素晴らしい作品だと思って再度見た。社会派の作品としても評価は高いものだし、それだけでなく個々の心情、ケニアの壮大な風景など…素晴らしい文学作品を見事に映画化している。
日航ジャンボ墜落事故の後始末の映画としてだけ知っていたので、クライマーズハイを思い出して見るの気が重いなぁ!と思っていた。でも、この作品は面白い引き込まれるように見てしまう。

今、日本では東北で大震災がおこり、原発のことや被災者の人達のこと政府は真剣に考えてるんだろうか?という思いがこの作品と重なった。この時期だけに見るべき映画だと思った。(去年じゃなくて今年のアカデミーショー作品賞だったらよかったのにな。)

最初の場面は、事故を起こす123便にみんなが乗り込んでいくところ。そして事故に。

それから、時が20年以上さかのぼり国民航空の労働組合が会社と団体交渉をしているシーン。恩地元(渡辺謙)を委員長、副委員長は行天四郎(三浦友和)。組合員の八木和夫(香川照之)もがんばっている。彼らは労働条件の改善をしなければ空の安全はありえないことを訴えているのだ。パイロットの異常な激務、点検費用の削減・・・このようなことで空の安全はありえないことを〜
恩地たちは要求が通らないとストへ。会社側は、要求を飲むよりほかに手立てはなくはほとほと困っている。(・・・と、言っても、もともと無理なことをやらせてるのは会社側

また、123便事故後の安置所の場面に戻る。ここでは一つ一つの遺族の心境が語られている。

そして、再び1964年の冬。
事故当時から組合でがんばっていた頃からのふたつの時の流れが交互に出てくるのが良い効果。見ていて退屈しない。)
会社は恩地にこれ以上組合でがんばられたのでは不都合と考えパキスタンのカラチへ左遷。会社は「身から出た錆」とか言ってるが、それはないと思う。上の人たちがこんなにも自分の利益だけ考えて会社自身のことは考えてないなんて恐ろしい!なんと副委員長だった行天は会社側に付くことになる。組合はバラバラにさせられて、それでもがんばろうとする組合員にはまともな仕事を与えてもらえない。ここで特にひどかったのが八木への仕打ち。彼には全く仕事が与えられず支店の客の前で座ってるだけ。少しでも座り方がいい加減だと客の前で注意を受ける。まるで見せ物。(この八木の役、香川照之すごくよかったです。彼だからこそ出来た役!)

飛行機の中で皆平気で煙草吸ってるところ、時代を感じてしまいました。それからスチュワーデスの制服も懐かし素敵!特にミキ役(行天の彼女?愛人?)の松雪泰子スチュワーデスの制服がとっても似合ってました。

恩地はカラチに妻子も呼び寄せて、2年経ったら日本へ返すという約束を信じてなんとかがんばった。しかし、次はテヘランへという辞令が・・・・・
ここで恩地が、「ここで、会社をやめるわけにはいかない。それでは俺の矜恃が許さない。」と言ったのが印象的。彼なりのプライドと意地があったということだろう。この作品の中では恩地の気持ちはよくわかる。でも、今の時代としたら少し理解しにくいかもしれない。

1969年からはケニアへ。海外へき地たらい回しである。家族は日本へ帰ってしまうし、ケニアの支店は彼一人。原野で車を乗り回して、現地の言葉で原住民としゃべりケニアに国民航空を乗り入れできるように努力するが・・・(ここのところは、カラチ、テヘランと違ってワイルドでいい感じだった。動物が自然の中を悠々と歩いてる姿とか見てると、ケニアに行きたいた思うほど〜ここはさすが映像の世界映画バンザ〜イ
でも、娘から手紙が来て、自分が会社で悪いことをして左遷されたように言われ娘はクラスではのけ者扱いに、息子は全然しゃべらないし、妻はいつもイライラしていると〜その上、ケニア政府と国民航空tの交渉も打ち切りとなり、もうどうしていいかわからない恩地。しかし、このとき、ケニアの大きな大地、自然、太陽が彼を支えていた

再び、事故後遺族の世話係をする恩地の場面に。
国民航空の次期会長に抜擢されたのは関西紡績の会長、国見。(石坂浩二 へぇちゃんの関西弁なかなか!)国見は一度は断るが、「総理大臣からの頼みだからお国のためだと思って引き受けて欲しい。」という嫌な頼み方をしてくる。戦争中の話を持ち出して頼んでるのか命令してるのか?ここのところ、すごく嫌だった。

政府は最低だが、国見はすごい。まず、組合を統合して恩地を重要ポストにつかせようとするが・・・。恩地は、「自分はアフリカのサバンナの夢をよく見る。この会社は何も答えてくれない。自分がそのようなポストのついてはかえって会長に迷惑がかかります。」と弱腰。しかし、「組合をひとつにして絶対の安全を御巣鷹山に誓ってきた。」という会長の言葉に恩地もやろう!という気になる。
国見はすばらしい人だ。石坂浩二、適役でした。

国見が、会社のドルの為替予約・ホテルの買収が何かおかしいことを嗅ぎつけて、恩地がニューヨークまで調べに行くところ。
ニューヨークでの動物園のシーン印象的だった。恩地が動物園に行くと、スチュワーデスのミキもやってくる。「付けてきた・・・・・行天に恩地の行動を見張るように言われた。」と言うミキ。
恩地と行天が共に組合でがんばってたずっと前、行天は恩地のようにズバズバ行動できない控えめなタイプだった。そんな行天にミキは惹かれる。そして、行天の彼女(愛人兼スパイと自分自身言ってるが・・・)となる。でも、今は恩地と行天は敵同士のようなもの。恩地の方が真っ直ぐな道を歩いてることはミキも初めからわかってる。行天は、ミキに「事故の遺族者の名簿を手に入れろ!」と言っている。ホテルでこのことを頼む(命令?)時、ミキが恩地のことを良く言うと行天はミキを突き飛ばす。この行動許せない。恩地が、最後ナイロビに行く前に行天に「淋しい男になったな。」と言うが、本当にそうです。この言葉にたいして、行天は、「負けたのはお前だ。」と言うのが又情けない。
ミキは、123便の事故の日に行天とデートしたかったので、123便に乗るはずだったけど京子に代わってもらったのだ。それで、京子は帰らぬ人となった・・・・・・・いろんな思いをミキはこのニューヨークの動物園で恩地に打ち明けている。もう、今となってしまっては最悪の人間となってしまった行天のことをそれでも心配して捨てきれないミキの気持ちもよく伝わってきた。

この映画での影のヒーローは八木(香川照之)。実は、行天は航空チケットを横流ししてる。八木に命じて航空チケットを格安チケットショップに売りに行かせて現金に替えて、接待費をして使っているのだ。ここまで来たら漫画のよう。八木は従っているように見えるが、このことを検察に告発して自殺する。八木が自殺するので東尋坊へ行く前、恩地をわざわざ呼び出して組合で頑張っていた頃の写真を見せて「この頃の恩地さん輝いてました僕も少し輝いていた」というところ印象的。

この後、もちろん行天は捕まる。
しかし、国見が国民航空を一つ一つ正しい方向に修正しようとしていくことを国民航空だけじゃなくて政府関係者も煙たくなってきた。(恐ろしい!政治ってなんなんですか?)それで、今度は続けると言っている国見を無理やりに辞めさせる。
あ〜ぁ、これからまた会社はどうなっていくんでしょう・・・・(ー_ー)!!
そして、恩地はまたケニアに飛ばされる。でも、彼はこの時はむしろ大自然の営みの中に喜んで行くくらいの気持ちだろうと思う。

恩地と息子のやりとりが何度か出てくる。息子は小さい頃は海外僻地暮らしで友達もなくて嫌だったし、父がケニア単身赴任のときは家族の気持ちがバラバラに。しかし、大人になってから父の気持ちを理解して「もう、会社辞めたら?」と父がやめるはずないと分かっていて冗談を言ったりしていい奴。それから、娘の結納のシーンでの恩地はすごくよかった。実は、このシーンの恩地に一番惚れた

最後は、恩地がケニアから遺族の人に宛てた手紙で終わっている。この作品も中では遺族のことについても印象に残る箇所はたくさんあったが、これについては他の作品や実際のニュースなどでも誰もが多く目にしていることなので省くことにした。

渡辺謙、香川照之、松雪泰子、石坂浩二、三浦友和の他にも鈴木京香(恩地の奥さん)、西村雅彦(国航商事の名でニューヨークなどのホテルの支配人をやってる嫌な奴、八馬。結局、国見に辞めさせられる。この役ぴったりでした。)宇津井健(遺族)など、豪華メンバーの俳優さんたちの素晴らしい演技が見どころであったことは言うまでもない。

点数を付けるとしたら 99.7点