原罪と救済、善と悪、理性的思考と信仰、エロスとアガペーなどの二項対立軸を幾重にも交叉させさせながらヨーロッパ文明をめぐって繰り広げられるコンパクトな対話劇、あるいはその戯画、もしくはトーマス・マンの『魔の山』の精神病院ヴァージョンといった趣。
舞台となるのは、もとは貴族の別荘か何かだろうか、木のぬくもりと白地に青い絵模様のタイルの冷ややかさが奇妙に同居した瀟洒な建物でドアの横に「精神を病んだ人々の家」とある。住人たちは自分を『聖書』やドストエフスキーの小説の登場人物と思い込んでいて、彼らはそれらのエピソードを生きる、というか、院内で再現していく。
. . . Read more