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エレニの旅と緋牡丹お竜の愛と悲しみ

2008年01月18日 | 映画
「緋牡丹博徒 お竜参上」(加藤泰)なら有名な雪舞う橋上の別れ。白い雪の上を鮮やかなオレンジ色のみかんがころころと転がるシーンに2人の深くも叶わぬ愛の姿が鮮烈に映像化されていた。

 だが、テオ・アンゲロプロス監督「エレニの旅」のアメリカへ行くアレクシスとエレニの別れのシーンほど美しく悲しい映像があったろうか。赤い編みかけのセーターをエレニが渡すとアレクシスの手から毛糸がほつれ、一本の赤い糸となって、遠のく二人をつなぎあう。タグボートで沖の大型客船に向かうアレクシスの手からは一本の赤い毛糸が果てしなく伸びているのだが、やがてそれは、「エレニ!」というアレクシスの絶叫を残し、ぷつりと切れて海に落ちてしまう。長い2ショットで2人の深い愛とその行方が見事に暗示される。全ての映像が美しく悲しく力強い。そして、いわゆる映画音楽というものがいかに無用であるかということに気づかされる。だから、劇中で奏でられる音楽が美しい。サックス吹きが一人奏でる「アマポーラ」の悲しさよ。同時代にこの映画が観られることにただただ感謝だ。そして、J-POPのプロモのような、TVドラマのような昨今の凡百の日本映画に死を!

 残念ながらこの映画は劇場で観られなかった。だからDVDが出たときほしいと切に思った。でも6,300円は高い。去年の暮れに紀伊国屋が自社のDVD20%オフのセール、さらに全品10%オフ、おまけに図書カードが使える、3,400円で買えた。実は、これをもって息子へのクリスマスプレゼントにしたのだった。親父が見たいという下心はすぐ見透かされたが、結構喜んでいたっけ。

 アンゲロプロスの映画は、特別な企画でもなければなかなか劇場で見ることはできない。2番館、3番館の衰退によって、シネコンを中心に全国どこも同じ映画ばかりがかかっている現状はなんとかならないものか。「エレニ」は、ギリシャ現代史3部作の一作目だという。次回作は必ず劇場で見なくてはなるまい。それまでは、DVDとビデオで我慢しよう。

 そういえば東映の任侠映画シリーズも廉価版DVDが出ている。「緋牡丹博徒 お竜参上」(加藤泰)「昭和残侠伝 死んで貰います」(マキノ雅弘)は必見だろう。

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