デヴィッド・ロウリー監督「グリーン・ナイト」はミゾグチの「雨月物語」や「雪夫人絵図」の一場面を彷彿とさせる。とりわけ旅の途中で出会う、泉のなかの自分の首をひろってきてくれという女の幽霊と小屋から泉へ下っていく横移動のシーンなどはミゾグチそのものではないか。
それにしても途中から旅の水先案内人になるキツネの動きが素晴らしくて、これは本物なのかCGなのかと考えるのも面白い。丘の向こうの霧のようななかをゆっくりと動く女人の巨人も素晴らしい。冒頭、娼館で目覚めてからアーサー王の宴席に列席し、グリーンナイトが登場するまでのテンポの良いカメラワークが一気にファンタジーの世界へ観るものを引きずり込んでいく。あまり評判にならないが、シネコンで観られる最良の作品と思う。