「チェーザレ7巻」を読んだせいか、タイトルが気になって買ってしまったのが「メディチ家の暗号」(マイケル・ホワイト著)。ハヤカワ文庫400ページ余りのミステリー。読んでいないが、たぶん「ダ・ヴィンチ・コード」などと同じプロットを用いているのではないかと推測される。
メディチ家礼拝堂のコジモ・ディ・メディチと思われるミイラから発見された金属板に書かれた暗号を発端に、マケドニアの修道院に封印されたメディチ家の秘密をめぐって古病理学者やら歴史学者らと「死の商人」と思しき組織が奮闘するミステリー活劇。舞台はフィレンツェ、ヴェネツィア、マケドニアをめぐり、コジモをはじめ秘密の鍵を握る人物としてジョルダーノ・ブルーノやらアントニオ・ヴィヴァルディなども登場するが、にぎやかしの域を出ない。謎の暗号が隠されたヴェネツィアは観光名所をちりばめ読者の興味を喚起させるが、いずれにしろ全体にかなり雑なつくり。読み始めたので読み終えたが、40%くらいは読み飛ばしてもよい小説だ。おまけに、暗号を解いて探し当てた「秘密」が、現存しない架空の物質というのは興ざめだ。映画化もされるらしいが出来映えは想像がつく。原作には登場しないが悪女を出せば、少しはおもしろくなるかも。
アマゾンでポーリン・ケイル著「明かりが消えて映画が始まる」を購入。定価は2900円(税別)だったが、質のいい古本で1500円。これはあたりだ。注文して4日目に届いた。ケイルは「ニューヨーカー」の辛口映画批評家で2001年に亡くなった人。この評論集でとりあげられている映画は、「ディア・ハンター」など70年代末の映画が中心でほとんど当時見ている作品ばかり。とても得した気分になる、読むのが楽しみな1冊なのだった。読みたいと思う本でも3000円近くすると購入は躊躇する。そんなとき質がよく安い古本があればありがたい。
古本といえば、10年くらい前の「芸術新潮」を古書店のワゴンセールで購入。1冊420円。贋作特集と大正日本画特集の2冊。この頃の「芸術新潮」の特集は実に面白いテーマばかりで、しかも雑誌の状態もきれいなので、よい買い物をしたと満足したのだった。