ちゅう年マンデーフライデー

ライク・ア・ローリングストーンなブログマガジン「マンフラ」

晴れた日にバスに乗って「南蛮の夢」を観にいく。

2008年05月15日 | 絵画
 連休中に、府中市美術館で「南蛮の夢、紅毛のまぼろし」展を観た。天気のよい気持ちのいい午後。バスに揺られて府中の森公園へ。市の美術館としてはこざっぱりとして、なかなかよい美術館だ。テーマは、明治、大正期の人々が描いた南蛮幻想というところか。

 鎖国があけて明治維新以降、西洋の文化が流入する中で、人々は、鎖国前に日本がポルトガルやスペインなどと貿易があり、さまざまな文化交流があったこと、それらが南蛮屏風などに残されていること、あるいはキリシタン禁教令のあとも、キリシタン信仰があり、信徒の虐殺があったことなどを知るようになる。脱亜入欧の気風の中で、同じように海外に眼を向けていた日本人がいたことへの共感、紅毛や南蛮の人が闊歩する日本の風景への憧憬、これらを南蛮への憧れという視点で、明治、大正の画家たちが描いた南蛮・紅毛の表象を再編集してみせた企画。

 副題に「安土桃山の名品から夢二まで」とあるように、六曲一双の「南蛮人来朝之図」屏風から慶長遣欧使節の支倉常長の肖像や持ち帰った十字架とメダイ(国宝)、竹久夢二の「邪宗渡来」まで多彩な展示で楽しめた。とくに日本画家たちが、南蛮のテーマを扱っていることが興味深く、踏み絵に向かう芸妓の緊張と戸惑いの姿を描いた鏑木清方「ためさるる日」、松本華羊「伴天連お春」、天正少年使節を大胆な構図で描いた守屋多々士「キオストロの少年使節」(これは唯一最近の作品)など、こういう切り口でなくては、なかなか見られない作品に出会えたことに満足、の一日であった。

 さて、南蛮といえば、一般的にはポルトガルとか南欧をイメージする。時代劇でおなじみ、不良旗本と悪徳商人が南蛮渡来の毒薬とか媚薬を悪用する場面とか、カピタン風の鼻の大きい外人、ギヤマン、時計、地球儀、ぶどう酒などが定番。だが、蕎麦屋になぜ、鴨南蛮があるのか不思議だった。鴨南蛮といえば、鴨肉にねぎのそば。南蛮漬けというと唐揚げを甘辛いタレでからめたもの。大阪の難波がネギの産地だったことから、もともと鴨難波だったものが南蛮になったとか。分かったようで分からない説だが、以前は、鴨南蛮と称して鶏肉を使っていて、偽装が問題となって最近は本当に鴨肉を使う店が多いようだ。

 僕の中で南蛮は、安土桃山の南蛮屏風の豪奢であると同時にキリシタン迫害や望郷のイメージが重なって「悲しさ」がつきまとう。この企画で展示されていた絵画も、皆悲しさが主調音のように思われたのだった。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする