11回表からマウンドに上がったこの日の西村の球にはキレがあった。
12回表の先頭打者・菊池に投じたストレートも149キロ、150キロとノビのある球がいっていた。
打たれたのは高めに浮いたフォークボール。丸には148キロの初球のストレートを狙い打たれた。
ここでベンチから原監督が出て、ピッチャーを田原誠にスイッチした。
「代えますかぁ」 この日の解説、堀内氏が残念がった気持ちもわかる。
それくらいこの日の西村は球が走っていたし、スライダーもシュートもいいコースに決まっていた。
7月に入りようやく一軍に復帰してからも、制球に苦労する場面は何度かあった。
そんな中での、あの名古屋の悪夢だった。連続死球からの押し出し、そしてタイムリー2ベース。
その後の2試合の登板では、まずまずの内容が続いていたから、
この試合でもきっちり2回を投げきって次につなげたかった。
延長12回、もう後のない状況だったから、交代は仕方がない。
その西村が招いた無死一、二塁のピンチを田原誠が救った。
エルドレッドを高めのストレートで三振に仕留めたシーンでは強気に攻める姿勢が前面に出ていたが、
さらにその次のバッター、キラに死球を与えて一死満塁という追い込まれた状況下になっても、
田原誠はマウンドの上で躍動感を失うことはなかった。
「(死球は)与えてはダメですが、内角を攻め切れている証拠」。
本人の試合後のコメントからも気持ちの強さを感じる。
社会人からプロ入りした3年目だが、まだ24歳。
投手では菅野が同い年の同級生にあたる。
田原誠というとルーキーイヤーの12年が印象深い。
一軍で先発も経験し、その後、中継ぎに定着すると、すぐさまプロ初勝利を挙げた。
さらにその初勝利を挙げた翌日の試合でも中継ぎで登板し、勝利を手にする。
ルーキーイヤーに2日続けて白星を手にするのは何十年かぶりの快挙だった。
最終的に勝利数はその2勝に留まったが、その後もシーズン通して安定感のある投球を披露した。
中継ぎで立て続けに勝ち星を挙げるさまは、勝ち星の数にこそ差はあるものの、
ブレイクしたときの山口鉄也を彷彿させて期待が膨らんだ。
昨シーズンはケガに苦しんで思うような成績が残せなかった。
だが、今季は一軍に上がるまの間、ファームでもしっかり成績を残してきた。
得意のスライダーやシンカーにも今季はキレがある。
ストレートにも力強さを感じるが、
そのストレートにさらに磨きがかかるようなら右の山口鉄也も夢ではない。
ブルペンに右のサイドスローが加わると、バリエーションが増えて厚みを感じる。
今季ジャイアンツの投手陣は全体に威圧感が薄い。
とくに中継ぎ陣は例年に比べ心細い状態のまま、どうにかここまで来ている。
後半に向け、その投手陣の起爆剤・第一弾を田原誠が飾る。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます