ナノテクノロジーニュース

ナノテクノロジーは日進月歩である。その全貌がわかるよう、日々飛びこんでくるニュースを中心に説明する。

再び"透明マント"

2012-10-20 | 報道/ニュース

これまで"透明マント"という表題の記事を2回掲載したが(5/9,10/17/12参照)、電磁波(光)に関する説明が欠けていたので、改めて紹介しよう。

目に見えなくすることはinvisibilityまたはcloaking effectと呼ばれている。cloakingとはマントの様なもので覆うことであるので"透明マント"と訳してしまったが、実際はもちろんマントとは程遠い。

さてcloakingには二つの方法が提案されている。一つは前回(5/9参照)述べた方式で、電磁波をナノ粒子の周辺を通過させ、通過した後は全くナノ粒子が存在しなかったかのように電磁波が進行する(下図参照)。このようなことを可能にするためには、ナノ粒子の周りを人工材料で囲み電磁波に特別な性質を持たせる必要がある。またナノ粒子の半径は電磁波の波長より小さいことが必要である。この手法は現在のところマイクロ波領域でのみ達成されている。

もう一つの方法はナノ粒子に被覆物を付着させナノ粒子による反射係数を小さくする方法である。例えば2009年のNanowerkのニュースによると、ナノ粒子をシリコン板で覆うことによってナノ粒子を赤外線領域の波長の光で見えなくすることが出来るという。このほか金属にプラズマ振動を誘起させcloakingを起こさせるなど種々の試みがなされている。
http://www.nanowerk.com/news/newsid=10407.php

これらの課題については、特に波長より短い距離での電磁波の挙動を理解する目的で実に多くの研究がなされている。また、センサーをcloakした場合もセンサーの感度が低下しないがセンサーによって光が散乱されなくなるという

J B Pendy et al 2006 Science 312 1780