ナノテクノロジーニュース

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紙幣偽造防止にナノテクノロジーが

2012-04-24 | 報道/ニュース

サウジアラビアの研究グループは、「紙幣用高性能強誘電性フラッシュメモリ」という論文を発表した。紙幣の偽造防止にはいろいろな試みがなされているが、なかなかうまくいかない。最近、REIDを紙幣識別に用いることが試みられているが、これも未だ成功していない。REID(radio frequency identification)とは、電波による個体識別法で、紙幣の中にID情報を埋め込んでおき、これを電波で検出する方法である。
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新しく提案されたのは、強誘電体(1/30参照)をフラッシュメモリとして用いる手法である。フラッシュメモリとは、電圧を除去しても消えない不揮発性メモリーのことである。強誘電体に電圧を加えると、比較的大きい電荷が蓄積され保存される。電荷が蓄積されているかいないかがメモリとして利用される(12/22参照)。

紙幣にフラッシュメモリを埋め込むには、まず高分子PDMSを付着させる。この高分子は、紙幣表面の凹凸を取り除き、またフラッシュメモリデバイスと紙幣との間の接着を良くする。フラッシュメモリデバイスとしては、50-150nmの厚さの強誘電性高分子P(VDF-TrFE)が用いられている。このようにして、読み出し書き込みが比較的容易で、かつ安定なメモリが得られるという。

この研究によって、強誘電性フラッシュメモリを紙幣の偽造防止に利用出来る見通しがついたという。しかしながら実現のためには、どれほど折曲げに耐え得るかやメモリデバイスの保護膜に何を用いるかなどまだまだ研究課題が残されているようである。この手法はまたセンサーやディスプレーなどに使用可能であるという。