コア・シェル構造とは、粒子A(コア)の周りを粒子B(シェル)が取り囲んでいる構造をいう。ナノ粒子のコア・シェル構造にはいろいろな使い道がある。ドラッグデリバリー(4/10参照)の際、標的に付着するたんぱく質でコートするのもその一例である。また、メディカルイメージングには量子ドットが用いられるが(9/28参照)、酸化などを防ぐためにコートする必要がある。バイオセンサー(3/14参照)や触媒(10/12参照)にもコア・シェル構造を用いたものが多くある。
蛍光灯ランプは、気体を放電することによって発する光を蛍光体に当て、蛍光体から発する光を照明に利用している。この際、蛍光体から発せられる光の波長は、蛍光体を受ける光の波長より長い。それは、蛍光体に与えた光エネルギーの一部が熱エネルギーになって失われるからである。蛍光体が受けた光より短い波長の光を放出する現象をアップコンバージョンと呼ぶ。放出される光のエネルギーを高く出来る理由は、光のエネルギー(光子,11/18,19参照)を吸って到達した中間状態から再び光のエネルギーを吸ってさらに高い状態へ励起されるからである。
アップコンバージョンが観測される蛍光体は、不純物にEr, Tm, Hoなど、あまり聞き慣れない原子を含むものに限られていた。その理由は、これらの不純物以外の原子では、光のエネルギーを2回吸って励起されても、そのエネルギーが有効に光エネルギーとして放出されないからである。シンガポール、中国などの国際研究グループは、コア・シェル構造を用いてこの問題を解決した。すなわち、コアに光エネルギーを吸収する蛍光体ナノ粒子を、シェルに光を放出する蛍光体ナノ粒子を用い、コアからシェルへエネルギーが有効に伝わるよう工夫した。
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アップコンバージョンは、固体レーザー、光メモリー、太陽光発電、メディカルイメージングなど用途が多い。この研究がブレークスルーとなり、入射する光および放出される光の波長の選択範囲が広くなった。その意義は大きい。