【時事(爺)放論】岳道茶房

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資源価格高騰への備えはあるか

2010年04月17日 | 新聞案内人
資源価格高騰への備えはあるか

 原油や金、鉄や銅、あるいはニッケルなどの希少金属。こうした資源の国際価格が目立って上昇してきた。 リーマン不況で一時は大幅に下げていたが、新興国の景気回復に続いて先進国の経済も上向き。加えて投機資金が再び活発に動き始めたためである。

 ニューヨーク市場の原油価格は2008年7月に1バレル=147ドル台の史上最高値を記録。そこから09年4月には40ドル前後にまで急落した。ところが現在は86ドルに上昇、100ドルを目指す勢いを見せている。

 原油と並んで投機の対象になりやすい金。ニューヨーク市場の先物相場は昨年12月に1トロイオンス=1220ドルの史上最高値をつけたあと反落していたが、ここへきて1160ドルまで戻している。円安の影響もあって、東京の小売り価格は27年ぶりの高値となった。

 鉄鉱石や石炭の輸入価格も大幅に値上がりした。鉄鉱石の輸入価格は08年がトン当たり77ドル、09年は55ドルに下がったが、この4-6月期は106ドルに跳ね上がった。石炭の輸入価格も前年比55%の上昇である。

○新興国の需要拡大

 鉄鉱石や石炭の値上がりは、新興国の需要増大によるところが大きい。たとえば中国の09年の粗鋼生産は5億6700万トン。日本の約6倍になった。鉄鉱石の輸入は前年比で40%増えている。

 このほかリーマン不況時の安値に比べると、銅やニッケルの国際価格は2-3倍に。アルミも85%上昇。希少金属のインジウムやアンチモニーも、ここ3か月のうちに20%以上の値上がりとなった。

 資源価格の高騰は、日本経済に深刻な打撃を与える。専門家の試算によると、輸入量が増えなくても原油・鉄鉱石・石炭の3つだけで年間3兆3000億円の負担増になるという。

 このコストをだれが負担するのか。大手鉄鋼メーカーは流通業者向けの鋼材を値上げしたが、自動車や家電メーカーとの値上げ交渉は進んでいない。

 だが控え目にみても消費税の3%分に相当するコストの増加分を、どこかで吸収しなければならない。その過程で最も苦しむのは、交渉力の弱い中小企業だろう。

 やや長い目でみると、結局は末端の消費者が負担をかぶる公算が大きい。そのときまでに景気が回復し、家計の収入が増えている状態になっていれば、まだいい。しかし雇用が増大せず、家計の所得が伸びない状態だと大変だ。

○デフレ対応だけでいいのか

 新興国を中心に世界の景気は、今後も回復を続けるだろう。資源に対する需要は衰えそうにない。先進主要国の金融緩和政策も持続するから、カネ余りで投機パワーもさらに強まりそうだ。

 政府も日銀も、財政・金融を締めれば景気の下降を招くから、物価を抑えるための手段は発動できない。いまは「デフレ」を問題にしているが、資源価格の上昇をみていると、全く違った視点が必要になるような気がしてならない。

2010年04月12日 新聞案内人
池内 正人 元日本経済新聞経済部長・テレビ東京副社長


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