西京極 紫の館

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独白するユニバーサル横メルカトル 平山夢明/著 光文社

2019年07月30日 22時16分57秒 | 西京極の本棚
【紹介文】
タクシー運転手である主人に長年仕えた一冊の道路地図帖。彼が語る、主人とその息子のおぞましい所行を端正な文体で綴り、日本推理作家協会賞を受賞した表題作。学校でいじめられ、家庭では義父の暴力に晒される少女が、絶望の果てに連続殺人鬼に救いを求める「無垢の祈り」。限りなく残酷でいて、静謐な美しさを湛える、ホラー小説史に燦然と輝く奇跡の作品集。

【総合評価】 ☆☆☆☆★(満点は☆5つ)
 ドラマ性 ☆☆☆☆★
  独創性 ☆☆☆☆☆
 読み易さ ☆☆☆☆★

【西京極の読後感想】
以前映画『無垢の祈り』を観て衝撃を受けた事もあり、原作も読んでみたくなって購入、読了。『無垢の祈り』を含む8篇の短編が収録されていますが、いずれも吐き気を催すような嫌悪感と残酷描写に満ち満ちております。それなのにどことなく純文学の匂いも漂わせているという不思議さ。読み手を選ぶとは思いますが、僕は面白く読ませてもらいました。以下は各短編毎のショートレビューです。

10142(ニコチン)と少年:ブラック・ジョーク溢れた寓話。ロクな終わり方しないだろうと思ったら、その通りに…。タイトルのニコチンの意味は…www
Ωの晩餐:グロとインテリジェンスが共存する不思議なテイストの一篇。まさに平山夢明らしいお話。
無垢の祈り:虐待を受ける少女が救いを求めて連続殺人の現場を巡る話。映画は原作に巧く厚みをつけて創られたのがよく判る。
オペラントの肖像:平山版「1984」或いは「華氏451」。芸術に触れる事が違法となったデストピア物ですが、ラストには著者らしいツイストが用意されています。
卵男(エッグマン)天才的な頭脳を持つシリアルキラーと女性捜査官という組み合わせは「羊たちの沈黙」を想起させるが、ラストは想像の斜め上をいく展開に…。
すまじき熱帯:こちらは未開の熱帯地域で王国を築いた男を殺しに行こうとする男たちの物語。明らかに「地獄の黙示録」のオマージュなのだが、こちらもラストはかなり違っていてある意味笑えます。
独白するユニバーサル横メルカトル:表題作ですが、そのタイトルのまんま。地図が意識を持って持ち主の行動を考察するという変わった内容。その持ち主というのが…っとコレはネタバレになるので言わないでおきましょう。
怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男:微に入り細に入った拷問描写が溢れるお話。ですが、ラストは何とビックリ…格調高い純文学。

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