西京極 紫の館

サッカー観戦、映画や音楽鑑賞、読書などなど、
日々のなんやらかんやらを書いてみようかな、と♪

涅槃(上・下巻)  垣根涼介 / 著  角川書店

2025年02月12日 21時08分11秒 | 西京極の本棚
     
【紹介文】
天文年間、小土豪が群雄割拠する中国地方で没落した宇喜多家の嫡男・八郎は、その器量を見込まれ、豪商・阿部善定のもとで父母とともに居候していた。やがて成長した八郎は、直家と名乗り宇喜多家を再興、近隣の浦上家や三村家と鍔迫り合いをしながら備前一国に覇を唱える。武芸よりも商人としての感覚が勝る異色の武将は、いかにして成り上がったのか? 『光秀の定理』で歴史小説に革命を起こした著者が描く、歴史超大作!

【総合評価】 ☆☆☆☆☆(満点は☆5つ)
 ドラマ性 ☆☆☆☆☆
  独創性 ☆☆☆☆☆
 読み易さ ☆☆☆☆★

【西京極の読後感想】
タイトルである“涅槃”とは言うまでもなく仏教用語の悟りを開いた状態を意味する。本作は八郎ことのちの宇喜多直家がその波乱に満ちた末期に悟りの境地に至るまでを描いた力作である。宇喜多直家と言えば、斎藤道三・松永久秀と並び戦国期三梟雄と呼ばれたクセ者武将。他家に対しては暗殺・謀略の限りを尽くし無手から備前美作四十万石の太守まで成り上がった一方、家中や領民に対しては生涯誠心篤実な主君であったという。その二面性が直家の成長の過程において如何にして形成されていったかを著者独特の分析と表現力で描いている。一部、性的描写が生過ぎて辟易する点を除けば、宇喜多直家という謎多き武将を知るための良いテキストになると思う。

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なぜ秀吉は  門井慶喜 / 著  毎日新聞出版

2025年01月03日 16時04分00秒 | 西京極の本棚
【紹介文】
16世紀末、二度にわたって繰り広げられた文禄・慶長の役。なにゆえに、天下人・秀吉は晩年に朝鮮を目指したのか。いまだ諸説粉々、日本史上最大級ともいえるこの謎を俯瞰の視点で解き明かす!この戦のために造成され、わずか6年半で役割を終えた都・名護屋の姿と秀吉に巻き込まれていく人々の内面を鮮やかに描いた歴史長編。

【総合評価】 ☆☆☆★★(満点は☆5つ)
 ドラマ性 ☆☆★★★
  独創性 ☆☆☆☆★
 読み易さ ☆☆☆☆☆

【西京極の読後感想】
後世に文禄・慶長の役と呼ばれる謎多き秀吉の朝鮮出兵。登場人物のそれぞれがその動機について考察するのだが、秀吉実弟の秀長の言う“報土不足解消の為”でもなく、博多の商人・神谷宗湛の唱えた“勘合貿易復活の為”でもなく、家康の推理した“新たな敵を創出する事によるナショナリズム高揚の為”でもない。実は秀吉の真意は…と語ってくれるのだが、結論が穿ち過ぎで僕的には「そんな訳ねぇだろ!?」としか思えなかった。ちょっと司馬遼太郎っぽい文法も鼻につく。『家康、江戸を建てる』の頃はこんなんじゃなかった気がするんだけどな。

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穢れた聖地巡礼について  背筋/著  KADOKAWA

2024年12月21日 19時18分32秒 | 西京極の本棚
【紹介文】
げんきなあなたがうまれます
フリー編集者の小林が出版社に持ち込んだのは、心霊スポット突撃系YouTuberチャンイケこと池田の『オカルトヤンキーch』のファンブック企画だった。しかし、書籍化企画を通すには『オカルトヤンキーch』のチャンネル登録者数は心許ない。企画内容で勝負するべく、過去に動画で取り上げた心霊スポットの追加取材を行うことに。池田と小林はネットなどで集めた情報をもとに、読者が喜びそうな考察をでっちあげていく  

【総合評価】 ☆☆★★★(満点は☆5つ)
 ドラマ性 ☆★★★★
  独創性 ☆☆☆★★
 読み易さ ☆☆☆☆☆

【西京極の読後感想】
ベストセラーで映画化も発表された『近畿地方のある場所について』の背筋さんの最新作。前作は曖昧なラストを“新しさ”として評価したのですが、本作は曖昧…というよりオチがない感じ。途中までは面白かったのにすごくフラストレーションが残る。伏線も未回収(と感じてしまった)だし、霊の存在を信じない心霊系ユーチューバーと編集者に霊を見られる女性ライターが加わって…という展開自体は魅力があっただけに勿体ない。でも次回作が発売されたら…やっぱまた買うかもな~w

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塞王の楯(上・下)  今村翔吾/著  集英社

2024年12月11日 19時07分56秒 | 西京極の本棚
     
【紹介文】
時は戦国。炎に包まれた一乗谷で、幼き匡介は家族を喪い、運命の師と出逢う。石垣職人"穴太衆"の頂点に君臨する塞王・飛田源斎。彼のように鉄壁の石垣を造れたら、いつか世の戦は途絶える。匡介はそう信じて、石工として腕を磨く。一方、鉄砲職人"国友衆"の若き鬼才・国友彦九郎は、誰もが恐れる脅威の鉄砲で戦なき世を目指す。相反する二つの信念。対決の時が迫る  。第166回直木賞受賞作。

【総合評価】 ☆☆☆☆☆(満点は☆5つ)
 ドラマ性 ☆☆☆☆☆
  独創性 ☆☆☆☆★
 読み易さ ☆☆☆☆☆

【西京極の読後感想】
京都人の著者にとっては身近な場所・琵琶湖畔に存在した大津城の攻防戦を通して、穴太衆の石垣という最強の“楯”と、国友衆の鉄砲という最強の“矛”の対比を描いた力作。まるで棋士が双方の手を読み合うような丁々発止の攻防戦は読みごたえ抜群でした。主人公である穴太衆の若き頭領・匡介とライバル国友衆の彦九郎が魅力的なのはもちろん、大津城主の京極高次や攻め手の将・立花宗茂の人物造形も素晴らしい。いつか映画化されそうな小説ですが、まずは小説でお読みください。今年イチバンのおすすめ小説です!

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コロラド・キッド スティーヴン・キング/著 文藝春秋

2024年10月31日 20時58分24秒 | 西京極の本棚
【紹介文】
海辺に出現した死体の謎をめぐる「コロラド・キッド」、恐怖と幻想の直球ホラー「ライディング・ザ・ブレッド」という長らく入手困難だった“幻の名作“2篇を収録!体重が減りつづける怪現象に悩まされる男を描く、本邦初訳の中篇「浮かびゆく男」を加えた、日本オリジナル中篇集。ファン必携の逸品!

【総合評価】 ☆☆☆☆★(満点は☆5つ)
 ドラマ性 ☆☆☆☆★
  独創性 ☆☆☆★★
 読み易さ ☆☆☆☆★

【西京極の読後感想】
キング作品の中でも一風変わった味わいのある3つの中篇が収録されている。いずれも従来のスーパーナチュラルなホラーではない。ネタバレしない範囲でそれぞれに一言レビューしておこう。

浮かびゆく男:似た題材で『痩せゆく男』という話をキング(別名義R.バックマン)が書いているがそれは純然たるホラー。こちらは設定こそ似ているがホラーではなくヒューマンドラマ。どんどん体重が減っていく男の迎えるラストはちょっと切なくも清々しい。
コロラド・キッド:過去に移動不可能な場所で発見された死体の謎を追う2人の老記者とその2人から事件の話を聞く新米女性記者。3人の会話形式で話は進みやがてラストを迎えるのだが…このオチに納得出来るか否かで評価が分かれそう。僕はOKでしたw
ライディング・ザ・ブレッド:この作品はこのブログで過去にレビューしているのでそちらをご覧ください。

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