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寿司8

2014-02-17 00:12:41 | グルメ
和食が優れているといえる決定的なものがある。

ー それは "時間" を使っていることである。
およそ人間のあらゆる技術の中で時間を巧く使ったものに優るものはない。
巧く ー とは "待つ" ことと "機" を掴むこと。

それは教育も医術も農業も芸術も、あるいは勝負事の世界においてさえ、同じである。拙速、インスタントは全てにおいて良い結果を生まない。

では和食の技術における "時間" とはなにか?

「発酵」である。

"神与の調味料" といわれる "塩" 以外のあらゆる調味料を日本人は発酵食品でまかなってきた。

醤油、味噌、味醂、酢、酒、、、。

これらが和食独特のうま味やコクや香りや甘みを創り出す。

そしてその発酵を実行しているものは何者か?

その正体は "米麹" 。

学名アスペルギルス・オリゼという黴の一種である。



何故かこのオリゼ、世界で日本にしか棲息していないのだという。

日本という文化圏の面白さはこのオリゼを代々数百年、守り続けてきた種麹屋が今もなおいるということである。

まるでおとぎ話のような話だが、彼らは日本人の味の総元締めの様な存在でそれは世界最古のバイオビジネスとさえいえる。

我々が米麹による食品を口にするとき、そこにはオリゼという千年近く続く "いのち" が宿っていることを思うと、より味わい深いではないか。

和食は彼らと、彼らが守ってきたオリゼという特殊なカビとそして "時間" という神の力 (そこには四季の豊かさという意味も内包する) が協力し合うことで初めて生まれる料理なのだ。

発酵食品は世界各地にあれど、その発酵との付き合い方という意味でも和食は独自性を有している。

こうしてみてくると「寿司」とはその本質は発酵食であった。
つまり "時間" に頼った食品であった。
その "時間" を人の "技術" によって極度に圧縮する。

拙速による安易な "短縮" ではなく、人の技による "圧縮" である。それは "待つこと" そして "機" を得ることではじめてなし得る技術である。

そこには強烈な密度がある。

これは三十一文字を十七文字に圧縮した芭蕉の偉業や、神速を以て瞬間を圧縮し空間を制す "居合い" を生んだ林崎甚助のそれと似てさえいる。





握り寿司とはまさに "時間の芸術" であるといっていいだろう。




願わくば! 我々庶民でも気軽に行けてそれでいて完成度の高い寿司屋が増えて欲しいものである。

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