たしかこんなふうにゆってたよ。
たどたどしく、しかしはっきりとした記憶でもって少年は話す。
" ー この世界の仕組みは、我らの中にそっくり再現されている。この星空を見ているとそんな気がしてくる。
果たして我々が世界の雛型なのか、世界が我々の投影か。"

「たしかそういってた。僕はそのときは何だかよくわからなかったんだけれども… 」
「ばかな!何を言っている。普段あれ程、君の兄さんの影響はあまり受けてはいけないと我々が教えているのに。」
"知性" がつい割って入り、叫んだが、ずっと黙っていた "形" が素早く反応する。
「ま、ま、暫く暫く。今は少しあの子に好きにさせてあげて欲しい。普段あなた方にはあの子の教育をお願いしているが、今日は無礼講の酒の席。酒盛りの肴とでも思って大目に見てやってもらえまいか。」
「しかしですね、ー 」
まだ何か言いたげな "知性" であったが、対面にいる "影" がギョロリと睨みを効かせてきて、つい黙ってしまった。

"影" は視線を少年に移して優しげに言った。
「"感覚" よ。もっと、話せ ー 。」
その "名" で呼ばれ、そのことが大人として扱われた様に感じた少年は気分を良くしたのか、そこに普段小うるさい教師達が居るのも忘れて饒舌に語り出した。
「うん。兄さんはいつもは無口なんだけど、たまにポソっと何か言うんだ、それがいつも僕には印象的な事ばかりでね。
こないだはこう言ったよ。
身体と精神はどう考えても一つだ。
だがある地点にいくと急に "かいりせい" を生む。それはおそらく我々が精神もしくは心の中に、異なる要素を混在させて認識してしまっているからではないか ー 。
その時は "かいりせい" って何かよくわからなかったけれども、先生に教わったから今は "乖離性" って言葉も知ってるよ。
兄さんはきっと僕らが、"心" の範囲で認識している内容の中に別の存在がいて、それが身体と中々調和しないんだって、僕らがいつも矛盾を抱えてもやもやしてる原因もそこにあるんじゃないかって、そう言ってたんだと思うんだ ー 。」

そのとき、少しだけ琴の音が変調した。時を同じくして天には雲がかかり月光を閉ざした。
だが、柏の木の下だけがぼんやりと薄明かりで光っている…。
たどたどしく、しかしはっきりとした記憶でもって少年は話す。
" ー この世界の仕組みは、我らの中にそっくり再現されている。この星空を見ているとそんな気がしてくる。
果たして我々が世界の雛型なのか、世界が我々の投影か。"

「たしかそういってた。僕はそのときは何だかよくわからなかったんだけれども… 」
「ばかな!何を言っている。普段あれ程、君の兄さんの影響はあまり受けてはいけないと我々が教えているのに。」
"知性" がつい割って入り、叫んだが、ずっと黙っていた "形" が素早く反応する。
「ま、ま、暫く暫く。今は少しあの子に好きにさせてあげて欲しい。普段あなた方にはあの子の教育をお願いしているが、今日は無礼講の酒の席。酒盛りの肴とでも思って大目に見てやってもらえまいか。」
「しかしですね、ー 」
まだ何か言いたげな "知性" であったが、対面にいる "影" がギョロリと睨みを効かせてきて、つい黙ってしまった。

"影" は視線を少年に移して優しげに言った。
「"感覚" よ。もっと、話せ ー 。」
その "名" で呼ばれ、そのことが大人として扱われた様に感じた少年は気分を良くしたのか、そこに普段小うるさい教師達が居るのも忘れて饒舌に語り出した。
「うん。兄さんはいつもは無口なんだけど、たまにポソっと何か言うんだ、それがいつも僕には印象的な事ばかりでね。
こないだはこう言ったよ。
身体と精神はどう考えても一つだ。
だがある地点にいくと急に "かいりせい" を生む。それはおそらく我々が精神もしくは心の中に、異なる要素を混在させて認識してしまっているからではないか ー 。
その時は "かいりせい" って何かよくわからなかったけれども、先生に教わったから今は "乖離性" って言葉も知ってるよ。
兄さんはきっと僕らが、"心" の範囲で認識している内容の中に別の存在がいて、それが身体と中々調和しないんだって、僕らがいつも矛盾を抱えてもやもやしてる原因もそこにあるんじゃないかって、そう言ってたんだと思うんだ ー 。」

そのとき、少しだけ琴の音が変調した。時を同じくして天には雲がかかり月光を閉ざした。
だが、柏の木の下だけがぼんやりと薄明かりで光っている…。