ロシア日記

~ペルミより愛を込めて~
日本語教師と雪のダローガと足跡

~サンクトペテルブルグ~
雪の上の足跡

オーロラ号

2017年06月04日 | 日記
  年末のある日、まだ夜みたいに暗い朝の9時に学校に着くと教室は鍵がかかったままで先生はもとより他の生徒は誰もくる気配がありませんでした。一人でポツンと教室の前で待っているとしばらくしてクラスメートのビンビンがやってきました。ビンビンは中国名で「斌斌」と書き一文字の中に文武両道の意が含まれているとてもいい名前です。それに発音もビンビンと呼び易く可愛らしく、ビンビン自体も穏やかなとてもいい青年です。二人でしばらく待っていたのですが、今日は休講ということを教えられました。携帯へのメッセージを見ずに来てしまったおっちょこちょい組です。


  ビンビンとはそれまであまり話したことはなかったのですが彼が銀行に用があるというので暇な私もついて行きました。外は12月の外気とまだ朝日の出る前の薄暗いさです。そのままなんとなく船のオーロラ号を見に行こうということになって1時間半くらいの長い道中を二人で歩きました。


  オーロラ号は日露戦争時、対馬海峡沖で実際に日本と戦った船で今はサンクトペテルブルグのペテログラツキー島に常駐され内部は博物館になっています。ビンビン曰く2年前は展示品もなく船もボロいままで入場料も取らなかったらしいのですが、今は改装後なので学生は200ルーブル取られました。


  司馬遼太郎の『坂の上の雲』を思い出しながら見ました。ロシアのバルチック艦隊を率いるロジェンスキーや東郷平八郎の写真、風刺画などを見物し、ビンビンに「本日、天気晴朗ナレドモ波高シ」の説明をしたりしてビンビンも興味深く聞いてくれました。



クオリティの高い博物館でした。二人でかなり興味深くいろいろ見て満喫した後、本島のアゼルバイジャンの料理屋さんへ行きました。そこでシャシュリクの肉料理を食べながら中国の歴代王朝の皇帝の話や中国のお正月のことを教えてもらったりして、結局その日は朝の9時から夜の7時くらいまで一緒に過ごしました。

  ビンビンは物腰柔らかな優しい青年で二人で話が通じ合わなかったりすると逆に笑っちゃったりして理解し合えるまで根気強く言葉を探し話し合いました。
  その後、クラスが分かれ毎日顔を合わせることもなくなり、たまに廊下で会ったりすると10分くらい立ち話をしてまた今度ご飯を食べようねと言い合うのですが、あの日以来ついぞお互い誘わず仕舞いで、だけどあの日のことを思い出すとちょっと不思議なきっかけのいい時間を過ごせた大切な思い出です。

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