ロシア日記

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~サンクトペテルブルグ~
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ロシア詩の歴史

2016年09月26日 | 日記
ロシア詩の歴史―古代からプーシキンにいたる 川崎 隆司著

ロシアの詩が歴史と絡められ、ロシア語と日本語訳で載っています。
こういう本は文学好きにはたまりません。
ロシア史と詩の成り立ちが絡められて書かれています。

私の一番好きなプーシキンの『冬の道』ももちろん載っています。
主人公の私は愛しいニーナに会うために、ひたすら広大な雪に覆われた草原の道をトロイカで飛ばして…
月の光がそれを照らして…

翻訳というのは、当たり前ながら言葉の選び方によって詩の印象が変わってくるもので、
こちらの本を編著された川崎先生は、終盤の主人公のニーナへの胸の内を

悲しいよ、寂しいよ、ニーナ

という優しい訳をされているのですが、
私の胸にある訳は、

おお、ニーナ、胸が塞がる!!
明日は、愛しいお前の胸の中で、一日暖炉の前に座って過ごそう

実際の原書を覚えてるわけではないのですが、
私の中での冬の道は、強い孤独と温かい生、その二つの対比です。

芸術はお金にならないし、文科系は理系と違って直接仕事に結びつかないなんていう意見もありますが、
この2つは生きていくうえで非常に大切な心の潤いを与えてくれるものです。

















猟人日記

2016年09月26日 | 日記
猟人日記 ツルゲーネフ (著), 工藤 精一郎 (翻訳)

「猟人」という響きが、日本語だと恐ろしく聞こえるのは私だけでしょうか。
荒々しい無精ひげの男がむさくるしく森で狩りをしながら書いた日記なのかという
勝手な想像だったのですが、それはまったくの検討外れで、
むしろ頭のいい紳士が品行方正に狩りをしながら、
そこで出会う村人に対して温かいまなざしを向けながら日々を綴った物語です。

ツルゲーネフはロシアの自然を盛り込んだ繊細な小説を書く作家ですが、
こちらもロシアの夏の薄い緑の自然がちりばめられていて、澄んだ湖や生き物、
普通の人々の日々の暮らしというものが織り込まれています。
こんな何気のない会話と日常を一つの物語にしてしまうのですから、
やはりツルゲーネフはすごい作家だったのですね。

私が一番好きだった逸話は、主人公である私と3人の村人が鴨を撃ちに行き、
夢中になっているうちに船が転覆するエピソードです。
なんてことないそれだけの出来事の中に、ツルゲーネフは、それぞれの人間模様と
心の内を表現してみせ、そこに暮れ行く空模様も相まって物語は繊細に進みます。

主人公である私は、貴族なのに偉ぶることもなく思慮深くかなりの紳士だったのではないかと
想像します。

合わせて「初恋」もお勧めです。



氷  ウラジーミル・ソローキン 著

2016年09月26日 | 日記
『氷』 氷三部作2  ウラジーミル・ソローキン 著  松下 隆志 訳

私はあまり、書き言葉にスラングを遣わないのですが、これは ヤバイ!!
この疾走感は半端ないです。
小説なのに、映画を見ているよう、とはまさにこのことです。
このような体験は初めてしました。

登場人物が幾人も出てきます。
すべて、金髪碧眼の男女。
文章が短い文体でバツバツ切れていくので、小説の中で起こってる出来事が

金髪碧眼の男女。
彼らは、人に「心」を求めるオカルト集団です。
人の絆を大事にしたい、人の「心」を信じる彼らは、一見すると純粋とも取れます。
ただし、やり方がちと粗い。
氷でバシバシ、心臓をたたくんです。

えーという、わけがわからないうちにどんどん進んでいく小説です。
そして最後までページを繰る手を止められません。

表題の『氷』は三部作の中の2作目。
ただしこれが最初に書かれ、1作目は2作目の次に書かれたそうです。
個人的には、なんといっても2作目の『氷』がオススメ。
私はこの作から読みました。





月日が経つ

2016年09月26日 | 日記
 月日が経つ、という言葉をもう易々つかえません。
なぜなら、こわいから。
小学校の6年間は、いろいろ新しいことがありすぎて、今でも長い時間に思えるのに、
大人になってからの時間は、びゅんびゅん過ぎます。
ときどき戸惑って、焦って、焦るのはやめにしよう、と決意して呼吸を整えるのです。

 今は、またロシア行きのビザを待っています。
この「待つ」という、時間は、ふと気づいてしまった瞬間から
ストレスのカウントダウンが始まっているのです。
大人になった今、「待つ」時間を活用するためにも、ロシア人作家の読書日記をつけていこうと思います。

まずは、『ソーネチカ』
リュドミラ ウリツカヤ (著), 沼野 恭子 (翻訳)

このリュドミラ ウリツカヤという女性作家は、今をときめく流行りの作家らしいです。
ごく平凡な物語のわき役みたいな女性を主役に、彼女を取り巻く脇役に天使のように
現実から浮遊したようなふわふわした女の子をもってきます。
全編、物語は現実の話からかい離しないのですが、非現実のような感覚を読者に与えます。
日本の作家でいうと、現代作家の吉本ばななや村上春樹の雰囲気を感じました。

私が一番感心したのは、沼野 恭子先生の日本語訳の美しさです。
物語全体に漂う柔らかな印象は、沼野先生の選ぶ日本語の優しさと美しさの表れなのではないかと
いう印象を抱きました。