ロシア日記

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アンナ・カレーニナ

2017年04月19日 | 日記
 アンナ・カレーニナのバレエを観に行きました。
そもそもアンナ・カレーニナがバレエであることも知らなかったので、演目を見てこの文字を見つけた時には驚き、即座に観劇を決めました。しかし、一か月以上前にチケットを買った時には、他の頼まれた券も合わせて買ったので、昨日、会場に着き、自分の席が正真正銘の一番前のセンター席だと知ったときにはさらに驚きました。ちなみにお値段は、4300ルーブルなので今の換算で9000円ぐらいです。
ふだんバレエは全体を見渡せるためにもバルコニー席から見るのが好きなのですが、昨日のアンナカレーニナに限っては真正面から一部始終を見通せてよかったと思いました。アンナ・カレーニナは、白鳥の湖やくるみ割り人形などの他のバレエと比べ、初演が1972年と割と現代に近く、さらに2種類の振付があるらしく現代音楽を使ったラトマンスキー版にいたっては2004年が初演らしいです。昨日見たのもこの現代音楽版のラトマンスキーヴァージョンで終始不穏な音楽が流れます。チャイコフスキーの可憐な音楽ではなく、アンナと愛人のヴロンスキー、そして夫の3人の苦悩の心に沿ったものです。事前にネットで一部を見ていたときは、こんな心をえぐるような嵐の前の音楽ばかりで不安にさせられたのですが、実際にすべてを舞台で見ると鬼気迫る演出に夢中になりました。

 見終わったあとに、もしかしたら今まで一番好きだった白鳥の湖よりも夢中になったかもと思い返して、その理由は何だろうと考えてみると、なんてことはない、おとぎ話とそうじゃない話の違いかなと思いました。いわゆる古典の王道と言われるようなバレエは真に可憐で美しく白鳥の湖の白鳥の動きなんかは見事で見惚れるほどで心底優雅な気持ちにさせられるのですが、今回のアンナカレーニナは鬼気迫る登場人物の心の表現に引き込まれたのです。
主演の3人の大人の踊りにはそこには一点の明るさなんかなくてひたすら哀しく美しかったです。アンナを一心に愛するヴロンスキー役のアンドレイ・エルマーコフの鍛え抜かれた立派な体躯が素敵で原作通りのちょっと禿げそうな実際の髪も役に合っていてよかったです。アンナの年老いた旦那役も当たり前ながらスタイル抜群で素敵でここだけに焦点を絞って見るとこの旦那様の元を去る必要ないのにと思わせられるほどでした。けれど、やはりもう一方にはイケメンのヴロンスキーが全情熱をかけて愛してくれているのですから去る理由があったのだと思います。このヴロンスキーはアンナに会う前は適当に良家の娘を引っかけているようなプレイボーイだったのですが、アンナに会ってからガラッと変わってしまい、人妻と恋に落ちたことで将来の将校出世の道も断ち、その叶わぬ恋路から自殺未遂までしたり、夫カレーニンの肩で泣いてしまったりとすごく繊細で人間臭い男なのですね。私はアンナカレーニナの物語が大好きで、いつかは言語で原作を読めるようになることが目標です。ロシア版、ハリウッド版の映画も見たのですが、今までどこにも私の中のイメージにピッタリのヴロンスキーがいなかたのですが、その中で昨日のバレエのヴロンスキーが一番近いです。これも嬉しかったことのひとつです。あと、ヴロンスキーの同僚、青年将校たちが10人くらいたびたび登場するのですが、彼の疾駆する姿とダイナミックな踊りにも魅せられます。バレエは、ふつうどうしても女の人が主役で男性ダンサーは脇役という感じがしているのですが、アンナカレーニナの将校たちは体で馬を表現していたり見ていて非常に面白かったです。次回はぜひ、もう一つのプリセツカヤ・バージョンも観てみたいです。

写真はマリンスキー劇場

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