うんどうエッセイ「猫なべの定点観測」

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アジアの英雄パッキャオ、驚愕の2回KO勝利!

2009年05月03日 | ボクシング
プロボクシングでアジア人初の4階級制覇を果たしたマニー・パッキャオ(30)=フィリピン=と、国際ボクシング機構(IBO)スーパーライト級王者のリッキー・ハットン(30)=英国=によるタイトルマッチが2日、米ネバダ州ラスベガスで行われ、パッキャオが3度のダウンを奪って圧倒、2回2分59秒でKO勝ちした。
 世界6階級制覇を果たしたオスカー・デラホーヤ(米国)に昨年12月のノンタイトル戦でTKO勝ちしたパッキャオは、1回に右フックとコンビネーションから2度のダウンを奪うと、2回に強烈な左フックで倒して試合を決めた。
 ファイトマネー1200万ドル(約11億9000万円)を得たパッキャオは「驚いている。こんな簡単な試合になるとは」と余裕の笑顔だった。戦績はパッキャオが49勝(37KO)3敗2分け、ハットンは45勝(32KO)2敗となった。

〔2009年5月2日の時事通信の記事より〕


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正直言って、今回ばかりは苦戦するのかな・・・と思いました。なにせ相手はSライト級でも評価の高いリッキー・ハットンですから。前回マニー・パッキャオと対戦したオスカー・デラホーヤは、近年プロモーター業が本職になりつつあったので、試合勘が鈍って体調に疑問符があったし、現役選手としては下り坂でもありました。パッキャオはダウンこそ奪えなかったものの、デラホーヤに対してスピードで圧倒してTKO勝利を収めました。ただ、ナチュラルのウェイトの選手に対してそのパワーが通用するのか、もしくは相手のパワーに持ちこたえられるのか、疑問符はまだ付いてました。だからこそ、今日のパッキャオは階級を上げた真価を問われてましたので、非常に興味深く見守りました。

だけど、そんなの完全に杞憂でしたね。というより、パッキャオにはボクシングの常識は、もう通用しないような別次元の世界に突入したんじゃないのかと思いました。だって、元フライ級の世界チャンピオンが、あれほど鮮やかに頑強なSライト級の選手を倒せると誰が思いますか?しかもあのタフで強打のハットンだよ。それどころかパッキャオは元はフライ級の1階級下のライトフライ級からスタートしているので、Sライト級は実に8階級も上のクラスに上げて戦っているんですから。単純に考えて14.5kgも体重を増量してます。だけど決して衰えないスピード。しかも見事なタイミングでの芸術的なワンパンチKO。階級を上げても身体能力だけでなく、巧さも身に付けている証拠です。もはや21世紀のボクシングを語る上では絶対に欠かすことが出来ない、偉大な神の領域に達しようとしてます。

それにしても、凄まじいKO劇でした。パッキャオは相手が誰であろうと小細工無しに、鋭いステップインから攻勢を掛ける、旺盛なファイタースタイル。ただゴングが鳴ったときは両者の体格差を見て、今回はさすがにヤバいんじゃないのかとも思いました。序盤は前へガンガン攻める頑強なハットンがパッキャオをロープに押し込むシーンがあり、それに対してパッキャオは下がりながらも右のフックなどでカウンターを狙う展開。そしてハットンの左のロングフックをかわして狙いすました右フックで最初のダウン。ダメージは画面からは、それほど感じなかったけど精神的にショックを受けてたのはありありでした。そして畳み掛けるように右を狙い続けて、ラウンド終盤には連打からの左ストレートで2度目のダウン。ゴングで救われたけど、これは明らかに効いてました。

ただ、ハットンも粘り強くパッキャオの強打を耐え忍んで体力を回復させて、長丁場の戦いに持ち込めば、体格や体力差に勝って優位に立てると判断できたので、たぶんこの2回が勝負所ではないのかと、私は予想しました。実際に結果はその通りになり、早めの決着をつけたいパッキャオは徹頭徹尾攻め続け、右を警戒していたハットンは逆に左フックをまともに食らって芸術的な失神KO。あの瞬間、WOWOWが選定する今年の年間最高試合は、絶対にこれだ!って思いましたね(まだ5月なんだけど(笑))。それくらいこの試合は、パッキャオにとってのベストファイトだと思いました。

かつてフライ級王者の頃は、日本の挑戦者が標的にしていたが、今じゃ戦う事自体が夢だと思いますね。獲得したタイトルそのものは、権威の無い団体なのでベルト自体は、ハッキリ言ってどうでもいいのですが、英国の英雄であるハットン相手に鮮やかに倒して勝ったことに意味があります。それに現在は統括団体のモラルが皆無で、王座を粗製乱造して、自ら価値を下落させ、自分の首を自分で絞めてます。なので今の世は、信憑性に疑問符が付くチャンピオンベルトよりも、対戦相手の名前と質で自分の価値が決まってくる時代なのかもしれません。パッキャオはそのビッグファイトの時代の申し子なのでしょう。

もうこうなったら。パッキャオにはフロイド・メイウェザーとやってもらうしかないでしょう。それにしても、今日の試合を見てボクシングの素晴らしさや美しさを改めて実感しました。ただパッキャオは、僅か6分弱で約11億9000万円稼ぐなんて、時給に換算しても凄い額ですね(笑)。


☆戦慄のKOシーンです

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