nekomitu日記

ポンコツ日記

感情表現

2015-11-17 04:06:02 | 日記

私は、職業柄でしょうか..自分の感情や相手の感情を「言語化」する事は特に苦痛なく出来てしまいます。
ですが、ここ最近その「感情の言語化」がとても苦手というか、どうしたらよいか分からないという人に出会うことがあります。

特徴としては、どことなく「情緒的ではない..」「感情がない..」「イライラしたり怒の感情には敏感であるが、全般的に喜怒哀楽が感じられない..」「共感的ではない..」「他人の感情には無頓着」と感じてしまう人たちです。そして最大の特徴は

「自分の感情を表現する言葉を見つけるのが難しい」人という事。

もちろん本人は、特に違和感を感じていないのですが、「心の通ったコミュニケーション」が、どうしても形式的、事務的なものになりがちで、
対人関係が円滑に維持できない傾向があるという事が悩みのように漠然とあるようです。

私は、比較的「喜怒哀楽」がはっきりしたタイプなので、当初このような傾向の方とは
心理的、感情的な意思の疎通が難しく極めて難解でしたが、

このような傾向は「アレキシサイミア」=(失感情症)という一つの性格傾向の概念で説明する事ができます。
感情はあるけど、その自分の感情に気付くことが苦手、又は何らかの感情の変化を感じてはいるけど、それをうまく表現できない…このような傾向が「アレキシサイミア」です。「感情を認識する」ことが不得意なため、「想像力」や「共感力」「内省力」が乏しいことも特徴ですが、不安や緊張を常に感じているのに、比較的人当たりも良くニコニコしている方も多いように感じます。

そして、この性格傾向を持った方に、以下の質問するとこんな回答が返ってきます。

「何か興味関心があることは?」→「得にない..」
「ストレスを感じることは?」→「別に…とか、特に感じない..」
「身体の調子はどこも悪くないですか?」→「別に悪くない..」

といった感じです。


ですから、「ストレスをストレスと感じない」=「自分の内面的な感情の変化には鈍感あるいは無関心」という事です。
私は、単純にそのような性格傾向として向き合うだけなく、何より懸念するのは、「アレキシサイミア」は、「心身症」を発症する要因と言われているというところです。

ストレスをストレスだと認識できないため、上手なストレス発散ができず、行動することで精神作業(考える事など)を回避する傾向にあるため「心身症」以外の精神疾患にもかかりやすいというリスクがあるという事なのです。

「喜怒哀楽」は、「情動」と呼ばれ、情動は、身体の変化と結びついて、自律神経系の変化や表情・声の変化といったからだの変化と一体となっています。
この情動の変化は、自分の気持ち=「感情」の変化とも結びついて、その感情に気づき、言葉で表現をする事を、私たちは何気なく行っていますが、
心身症の患者さん方は、そのような事が上手くできない事が多いのです。だから身体に何らかの疾患として不調が出てくる訳です。

私は、このような性格傾向の方に向き合うときは「ある時期、又はある出来事がきっかけで自分自身の心を凍らせた」のでは?
何らかの抑圧されたの感情が自分の中に蓄積して、「心動かされない」人に
なってしまったのではないかと、何とも言い難い「孤独」にも似た感情を感じてしまうのです。

だからできるだけ「今どんな気持ち?」「どんな感覚?」と質問して自分の心に目を向けてもらい、できる限り言葉で表現してもらえるよう配慮しています。(困難を極めますが….)
そして少しでも感情の動きが見えた時に、その感情に寄り添うようにしています。

いずれにしても、「自分の心と向き合う」という事は、誰でも一番難しいことなのかもしれませんね。

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参考(以下文献より抜粋引用)

アレキシサイミア(失感情症:alexithymia):
この疾患は、自分の感じた感情や言葉を表現することが困難となり、溜まった情動などが身体や行動に身体症状として現われる。
シフネオス(Sifneos, P.E.,1973)によって提唱された。この疾患は心身症の一つとして説明されている。
症状:
◇感情を認識すること、感情や情動が起きるときに出てくる身体の感覚を区別、理解することが困難
◇他の人の感情について説明するのが難しい
◇他の人に自分の感情を説明するのが難しい。
 ⇒自分の気持ちが分からないので、他人の気持ちにも共感することができない。それにより、機械的な対応が多く、治療者や面接者と話すのも難しい。
◇自分の内側(心)を理解するのが難しい
◇空想、想像が苦手
◇外の事、表面上の事実しか認知できない
⇒その結果、事実関係をダラダラと述べ、その内容に感情的なものが含まれない

周りから見た時の様子:
・生気が感じられない。ボーとしている
・話し方が変わっている(事実しか話さない、感情がない)

アレキシサイミアの問題点:
◇腹が立った、胸がドキドキした、涙がでるような思いがしたなどの事が理解できない
◇アレキシサイミアのせいで、知らず知らずの内にストレスを貯めてしまい、それが身体化することがある
◇嫌な感情や情動が生起したせいで、それを口に出さずに、過食や拒食、薬物乱用、倒錯した性行動などの強迫的行動に走りストレスを発散させがち
◇認知処理を通じて情動を緩和出来ない