国内最古の路面電車
阪堺電軌161形
古めかしいチンチン電車がガタガタと音を立てながらゆったりと進む。大阪市南部と堺市を南北に結ぶ阪堺電気軌道。1928年(昭和3年)に製造された161形車両は「通常営業している路面電車で国内最古」(同社総務課)といい、レトロ感覚が市民に親しまれている。
下町を80年近く快走
緑色の外観の車両に入ると昭和初期にタイムスリップした気分に。エメラルドグリーンの内装で、狭い窓に向き合う赤茶色の座席に腰掛けると、通路は1人歩くのがやっと。車両中央の座席がない空間はかつて車掌台があった名残という。
冷房はなく、入り口のステップは高さ38㌢だが「段差は大して気にならない。速度は遅いけど、のんびりしたいときにはぴったり」と話すのは50年間利用し続けているという大阪市西成区の無職寺田修さん(62)。
阪堺線の北の出発点、恵美須町駅(大阪市浪速区)は浪速のシンボルの通天閣や、くしカツ店などが軒を並べる繁華街・新世界の近く。
南へ向かうと、西成区の労働者の街・あいりん地区やボクシングの亀田3兄弟が育った天下茶屋周辺を通り、下町の風情が残る住吉区の住吉大社の前を抜ける。堺市に入ると、線路沿いに与謝野晶子ゆかりの地が点在する。
161形を運転していた同社の野口尚哉事務主任は「夏場に窓を全開にして走ると街の人のやりとりが聞こえてきて人情味がある」と振り返る。
経営面は厳しい。JRや私鉄が並行して走るようになり、乗客が減り続けているのが原因だ。中川恵司常務は「161形を積極的に残すというより、新車両を導入する資金がないのが現状」と打ち明ける。
だが、存続を望むファンの人気は根強い。161形に乗るため神奈川県小田原市から訪れた農業広井浮さん(54)は「内装が木造で温かく、博物館みたい。これからも走り続けてほしい」と一番前の席で写真を撮りながら話した。
◇阪堺電気軌道
1900年(明治33年)に大阪市南部で開通した「大阪馬車鉄道」が前身。現在は大阪市南部と堺市内の南北を結ぶ路面電車として、天王寺駅前」住吉公園の上町線約5㌔と恵美須町-浜寺駅前の阪堺線約14㌔の2区間で営業している。保有する車両38両のうち10両が161形。昨年度の年間輸送人員は約797万人。
新しい電車が買えないから古い電車がそのまま残ってるなんてちょっと絶句よね。でも路面電車って長持ちするんだね。全国の走ってる路面電車でも戦前に製造されたものなんか結構走ってるよね。地球環境に優しくて、市民の気軽な足になってる路面電車。これからも末永く走ってもらいたいですね。