X-Planeの有償機体B767-300ERはかなり詳しく作り込んであります。
今日はこの機体で上空引き返しと緊急着陸をやってみます。
現在当機はトルコのイスタンブール国際空港(LTBA)から米国のニューヨークにあるJFK国際空港(KJFK)に向けて離陸したところです。燃料を61.5トン満載して最大離陸重量にほぼ近い186.7トンでRWY05から離陸し、北西方向へ上昇旋回しているところです。さすがに重くて機の動きが鈍いです。PFDの速度計を見ても現在の速度のすぐ下に黄色や赤色の帯が出てきています。また上のほうはフラップの制限速度の赤色で、非常に限られた範囲で速度を制御する必要があります。既にオートパイロット、オートスロットルを入れてあります。
眼下にイスタンブールの街が広がります。後方にはボスボラス海峡があります。
離陸したイスタンブール国際空港が見えます。
フラップ・スラットを全部上げましたがその時の下限の速度が250ノットを超えているので、260ノットで上昇していきます。
今日は最初、FL320で巡航します。
トルコはトランジション高度が10000フィートです。高度計を2992に直して加速します。
RIMBOでFL130以下という高度制限があります。
シートベルトサインをオフ。
黒海沿岸を順調に上昇していきます。
このようなコースを飛んでいきます。
ルート上の最低高度は常にわかっていないと緊急降下などのときにどこまで降りてよいかがわからず、危険です。ネットのSkyvector.comのVFRチャートにはその区域の最高の標高が出ています。さっと調べるにはこれが最も便利です。一方PFPXなどで本格的にフライトプランを作れば自動的にその区間の最低高度が表示されます。
離陸後17分、巡航に入りました。
では767のメニューから故障を選び、エンジンのところ、第1エンジン火災を選びます。すぐに発生するようにします。
画面に戻るといきなりサイレンが鳴りだし、火災警報で第1エンジンに火災が発生したことがわかりました。当機では火災が発生したエンジンのスロットルは自動的にアイドルまで戻ります。オートパイロットは切れません。自動的に水平直進飛行を続けてくれます。見るとラダートリムは動いておらず、エルロンが動いて機体を傾けて水平直進飛行をしています。
上側ECASにはさまざまなメッセージが出ています。火災の場合には上空でエンジンを再始動することはできませんから、表示された再始動可能速度もあまり意味がありません。オートパイロットは入ったままです。離陸後17分。
まずシートベルトサインをオン。
機内でイレギュラーなことが起きた場合などに見るマニュアルがQuick Reference Handbook、通称QRHです。B767-300ERについてもネット上に出ています。もちろん実際には運航会社やオプションの違いなどで内容に差があるわけですが、だいたいはこれで間に合います。これがその表紙です。直ちに対処が必要な項目は表紙に目次が出ています。今回はENGINE FIREですのでページ8.2です。
エンジン火災については以前にも紹介したことがあります。B757です。また火災ではないですが離陸滑走中に片側のエンジンが止まってしまって、上空で燃料投棄して戻ってくるお話がこちらです。
今回のB767-300ERのエンジン火災はこのマニュアルで対処します。今のところ何が原因でエンジン火災が起きたかはわかっていません。ただ異常な揺れや音は今のところありません。エンジンが落下して機体が傾いたということもありません。
そうすると対処は次のようになります。
オートスロットルをオフ > 火災が起きた側のスロットルレバーをアイドル、確認 > そちら側の燃料コントロールスイッチをカットオフ、確認 > エンジン火災スイッチを引く、確認 > もし火災警報が点灯していれば消火スイッチを倒して1秒間押さえる > 30秒経ってまだ火災警報が点灯していれば消火スイッチを反対側に倒して1秒間押さえる
もし機体の激しい振動が起きたり、エンジンを止めても続いていれば遅滞なく減速し、振動が収まる安全な高度まで降下。もし再び振動が増え、これ以上の減速や降下が現実的でない場合、速度を上げると振動が収まることがある。
APUを使えればAPUを起動 > 対地接近警報装置のフラップオーバーライドをオーバーライド > トランスポンダをTAオンリーに > 十分な設備と条件が整った最も近くの空港に着陸することを計画
もし防氷装置を使うときは、エンジンを止めた側の空調スイッチをオフ > 隔離バルブをオン > 防氷装置が不要になったら左右の隔離バルブをオフ
着陸はフラップ20度、進入速度はフラップ20度に対応する速度で > ゴーアラウンドはフラップ5度で > QRHでこの場合の着陸に必要な滑走路の長さをチェック
以下のチェックリストは実行しないこと。エンジンボトル、エンジンシャットダウン、空調オフ。
これで当座の対処は終わりです。
では降下・進入・着陸の時の操作です。
・降下チェックリスト
与圧・着陸地の標高を与圧パネルに入力 > リコールボタンを押して内容をチェック > 自動ブレーキをセット > 着陸データ・フラップ20度の時の進入速度、ミニマム > アプローチブリーフィングを完了
・進入チェックリスト
QNHをセット
・着陸チェックリスト
スピードブレーキをARM
ギアダウン > フラップ20度
以上です。
基本的に機体が壊れていないかどうか振動などで確かめます。そして適切な空港にすぐに着陸。フラップは20度で、ということです。フラップ20度で着陸ですから進入速度は通常より早くなります。フラップを25度以上に出さないのでフラップ警報は切っておきます。またトランスポンダでRAが作動するようになっていると突然機体が上下して失速の危険がありますからTAだけにします。
では、やっていきましょう。オートスロットルを切ります。オートスロットルはエンジン1基では作動しないようです。B777では1基でも作動しますが。
火災を起こしたエンジンを確かめて燃料コントロールスイッチをカットオフ。
最初に消化ハンドルを引き上げます。これで火災警報が止まるか確かめます。
止まりません。ではハンドルをヨコに倒します。これで消火剤がまかれます。
消火剤のボトルは2つあって、ひとつ30秒で噴射します。30秒経ってまだ火災が消えなければ2つ目のボトルを噴射します。そのため、噴射を始めたらストップウォッチをスタートさせます。下の写真の左上にあるCLOCKというボタンを押すと、時計のストップウオッチが動き始めます。速度が既に落ち始めています。片側のエンジンが止まっていますので。
するとほどなく火災警報は消えました。やれやれです。
ストップウォッチは13秒回りました。
片側のエンジンが止まったため、左右の燃料タンクの残存量に差ができて機体が傾く可能性があります。そこで左右の燃料タンクをつなぐXFEEDをオン。ただし、現在は中央タンクから燃料を供給していますので左右のタンクからは使っていません。
火災の理由がわからないのでとりあえず280ノットに減速し、1基のエンジンだと現在の高度を維持できないのでFL260まで降下します。FLCHを押します。すると280ノットを維持するように自動的にピッチがコントロールされてFL260まで降りていきます。
本当はFMSのCRZページにあるENG OUTを選択すると1発不作動の時の最適高度が出てくるのですが、このソフトではこの機能が使えなくなっていました。残念!
それから推力は片側エンジンだけを使うので、設定を連続定格出力CONにします。上側ECAS右側のCONというボタンを押します。そして推力はマニュアルで操作していきますが、この数値を超えないようにします。
280ノットで降下中です。降下率が1000フィートになるように推力を動かしています。
ときどきCANCEL、RECALLを押して新たな警告が出ていないか確かめます。
推力の目標はEPRで1.70とあります。現在の推力は1.40です。止めたエンジン1は特に振動は出ていません。そして燃料供給量は0.0。もしこの数字が0.0でなければ燃料が漏れているということです。それは大変なことです。エンジンオイルの量も減っていませんからオイルパイプも無事なのでしょう。
外から見たところです。左右でエンジンの見え方が違います。向かって右側、1番エンジンは風車状態で回っています。
設備と条件が整った最も近くの空港に着陸する必要がありますから、今回は出発地のイスタンブール国際空港に戻ります。管制と打ち合わせ、まずTURKOポイントまで行きます。INTREFボタンを押してTURKOと入力し、EXECボタンを押します。
今日は最大離陸重量で離陸してまだ燃料が大量に積まれていて、このままで着陸すると最大着陸重量をオーバーしてしまいます。そのため燃料投棄をします。
TURKOは157度の方向、95マイルです。180度近いターンになります。
LNAVで左旋回。まだFL260に向けて降下中です。速度は280ノット。
さて、ここでもう一つトラブルです。減圧です。減圧には急激な減圧とゆっくりした減圧の2つの故障が用意されています。急激な減圧は選択してもうまく動かなかったのでゆっくりした減圧を選びます。さて、どうなりますか。
画面が戻ってしばらくすると上側ECASに客室高度の警報が出てサイレンが鳴りだしました。
これが鳴ったら直ちに酸素マスクをつけて乗員間のコミュニケーションの確保を行います。以後しばらく酸素マスクをつけての操縦になります。
まだ火災の対処を続けているところでした。トランスポンダをTA/RAからTAに。緊急事態を宣言します。スクウォーク7700にします。
すぐに与圧計を見ます。内外気圧差はどんどん小さくなり、客室高度は10000フィートぐらいです。しかし気圧の昇降計は下がっています。ということは客室高度が下がっているということです。降下の速度が大きくて客室高度が大きく下がってきているのでしょうか。理由はわかりませんがこれは与圧が抜けています。
客室酸素をオン。
客室高度の警報に対処するQRHを調べます。
酸素マスクを装着 > 乗員のコミュニケーションを確保 > 客室高度と上昇率をチェック > もし客室高度が制御できていなければ客室酸素スイッチを1秒押さえる > 遅滞なく1万フィートあるいは安全高度のどちらか高いほうまで降下 > スロットルをアイドルに > スピードブレーキを展開 > もし機体が壊れていることが疑われるときは速度に注意。また機体に高い負荷がかかる操作は避ける > 最大運用限界速度で降下
では操作を続けます。下側ECASにSTATを表示します。酸素の量が出ています。次第に減っています。酸素は出ています。
緊急降下をしますから機内アナウンスをします。
緊急降下はオートパイロットを使って行います。先ほど見たようにこのあたりの標高の最高はせいぜい5千フィート台です。ですから10000フィートまで降ります。速度は引き続き280ノットです。
写真を取り忘れましたがスピードブレーキはフルに展開します。するとものすごい降下率で降下が始まります。ちょうどTURKOに向けて旋回中でしたから引き続き自動でバンク角15度の旋回が続いています。
火災の対処がまだ残っています。APUをスタートさせます。
APUブリードが機内に流れるようにします。
対地接近警報装置のうちフラップ警報をオーバーライド。こうしておかないとフラップ20度で着陸しようとすると警報が鳴ります。
スクウォーク7700。緊急事態を宣言しています。
あっという間に10000フィートまで降りてきました。スピードブレーキを戻し、動いている右側のスロットルを動かして速度が280ノットになるようにします。トルコではQNHへの切り替えがFL100です。QNHをこれから変えます。ここまで離陸後26分。まだ最初の火災発生から9分です。
連続定格推力が1.57になっています。これを超えないようにします。依然として客室高度の警報が出ています。そのほかには異常な警告はありません。
スピードブレーキは全部戻します。
酸素の量は引き続き減っていきます。油圧は正常です。また止めた側のエンジンに燃料は流れていません。APUも正常に動いているようです。
10000フィートで水平飛行をしています。与圧の抜けはスローですから一気に調整されません。そのため10000フィートに向けて客室高度はゆっくりと下がっていきます。今は逆に内外気圧差は最大まで大きくなっています。これは安全バルブが開いているのでしょうか。
機体を外から見るとこういう感じです。エルロンと右側のスピードブレーキが動いて機体はやや右に傾いています。
このような形で上空引き返しになりました。
着陸灯をオン。
QNHを3021に合わせ、260ノットに減速します。フラップ・スラット展開速度以上で飛ぶようにします。エンジン1基で機体が重いときに不用意にフラップを出したり減速したりするとそれっきり加速ができなくて急激に降下して速度を上げるか失速するかしかなくなります。エンジン1基の時は出来るだけ減速しないようにすることです。
さて、ここでギアが下りてしまった状況を作ります。ギアダウンです。現在の速度は260ノット。ギアダウンの上限速度は270ノットですからギアもギアドアも機体も壊れないはずです。
ダウン3グリーン。ギアは正常に出てロックされました。
さてギアが降りると抵抗が大きく増えます。そのため推力を上げないと速度が維持できません。ここでは推力が連続定格推力をEPRで0.01上回っています。
ちょっとスロットルを戻し、1.57、連続定格推力ぴったりにします。N1は103.6も回っています。
速度はまた上下に挟まれました。ギアが出ているので270ノット以上は出せません。またフラップ・スラットを出していませんからすぐ下にフラップなしの下限速度があります。スロットルを動かして260ノットを丁寧にキープします。
左右のエルロンが今までより大きく動いています。ギアが出て抵抗が大きくなりました。
外から見るとこんな感じです。右側はスピードブレーキがだいぶ上がっているのがわかります。
気圧も落ち着いてきたので酸素マスクを外します。
ではFMSにTURKOでの待機を入力します。今日はこのまま海に出てから燃料投棄を開始し、TURKOで待機中に引き続き燃料投棄をします。TURKOで右回りインバウンド30度、レグ1.5分のコースです。待機時間は燃料投棄が終わるまでとします。
LEGSページに右回りの待機が書き込まれています。
QNHをセットしたので高度がずれました。改めて10000フィートまで降下します。
現在の機体重量は181.8トンあります。最大着陸重量は145トンですから37トンぐらいオーバーしています。
しかしこの機体では燃料投棄できるのはセンタータンクの燃料だけです。センタータンクには現在20.2トンの燃料が入っています。ですからあと20.2トンしか軽くできません。もちろんこれに加えて飛行時間分の燃料は減るのですが。旋回中に燃料投棄をしてセンタータンクをカラにして、火災の影響でできるだけ早く着陸しなければならないので、このまま進入着陸に向かいます。オーバーウエイトでの着陸もありです。
APU発電機からの電気が供給されています。ただし、ユーティリティーバスは左右ともオフになっています。機内サービス用の装置は動いていないはずです。
このように引き返してきました。いよいよ海に出ますので燃料投棄を始めます。
待機地点のTURKOまであと20マイル弱。風はヨコから吹いています。
燃料投棄のスイッチをオンにし、左右のノズルをオンにします。
センタータンクの燃料が減り始めました。燃料投棄が行われています。
機体重量も180.0トンに減ってきました。
新たなスクウォークが指示されたのでそれをトランスポンダにセットします。引き続きTAのみです。
ではここでさらに悪条件として防氷装置をオンにします。先ほど見たようにエンジンを止めた側の空調をオフ。
防氷装置をオン。
そのまま飛び続けてTURKOまで来ました。風向きが大きく変わるので速度が落ちすぎないように目標速度を265ノットにしてあります。
(つづく)
昭和天皇もご搭乗されているJAL123便が不時着し、全員 問題なく生存していたので救助を待っていたところ、日本の埼玉県警の警察官らを中心とした一団が襲いかかり、乗客乗員天皇陛下を虐殺した点が遺憾な状況と言えます。
木にくくりつけて焼き殺すなど、埼玉県警察らしい残忍な犯行で、大変いたましい事態が おすたか にて発生したのでした。
日航ジャンボ123を御巣鷹に不時着させるとともに日本人を中心とした乗客乗員天皇陛下の救援に最大限の尽力を行ったのは米国のみであります